ニュース

「運動」をすると脳でインスリンが効きやすくなる 脳機能の低下を予防 肥満やメタボで効果

 肥満や過体重、2型糖尿病があると、脳内でインスリン抵抗性が起こりやすくなる。そうした人でも運動をすることで、脳機能を向上できることが分かった。
 認知機能が低下しでいる人も、運動により脳機能を改善できることが明らかになっている。
脳のインスリン抵抗性があると記憶力や認知力などが低下
 運動をすると体内でブドウ糖がすぐに消費され、血糖値が下がる。運動を習慣として続けると、エネルギー摂取量と消費量のバランスが良くなり、血中のブドウ糖の量をコントロールするインスリンが効きやすい体質に変わっていく。

 他にも運動には、「血圧が下がる」「中性脂肪が減る」「肥満を解消できる」「腎臓病を予防・改善できる」など、さまざまな利点がある。

 2型糖尿病の原因のひとつである「インスリン抵抗性」は、肥満や運動不足などが原因でインスリンが効きにくくなり、ブドウ糖が細胞に十分取り込まれなくなった状態をさす。

 インスリン抵抗性があると、筋肉や肝臓、脂肪細胞でブドウ糖を吸収されにくくなり、血糖値が上がりやすくなる。すると血糖値を下げようと、膵臓はインスリンをさらに分泌しようとするが、やがて疲弊してインスリン分泌機能が弱くなってしまう。

 インスリン抵抗性は、身体だけでなく、脳にも作用する。インスリン抵抗性があると脳の記憶力や認知力などのパフォーマンスが急速に低下するおそれがあり、肥満や過体重のある人ではとくにその傾向が強いことが、最近の研究で分かってきた。

関連情報
運動により脳のインスリン抵抗性を改善できる
 ドイツのテュービンゲン大学の研究で、肥満や過体重のある人が運動を続けると、脳機能を向上できることが明らかになった。そうした人は脳内でインスリン抵抗性が起こりがちだが、運動により改善できるという。

 「運動による脳機能の改善のメカニズムを解明できたことは重要です。運動は、ドーパミンが関連する脳領域で、インスリン感受性の増加されます。さらには、気分障害や認知能力の改善にもつながります。運動療法は2型糖尿病を改善するために必須ですが、脳の健康にとってもなくてはならないものです」と、テュービンゲン大学医療心理学・行動神経学研究所の神経内科医であるステファニー クルマン氏は言う。

 研究チームは、インスリン抵抗性がみられる、体格指数(BMI)の平均が31の過体重あるいは肥満の成人22人を対象に、ウォーキングやサイクリングなどの運動に8週間取り組んでもらった。

 参加者の脳のインスリン感受性を調べるために、運動介入の前後に脳スキャンを行い、さらにインスリン鼻腔用スプレーを使用し、運動の前後の脳機能の変化を測定した。
運動が脳の実行機能を改善
 その結果、体重減少をわずかしか得られない場合でも、運動は脳機能を改善することが分かった。8週間の運動によって、運動制御や報酬プロセスで重要な働きをする脳の部位の血流が増加した。

 運動は、神経伝達物質であるドーパミンの分泌も活発にした。ドーパミンは、運動を新たに学習し能力を高め、神経活動を活発にし報酬学習を高める作用をする重要な神経伝達物質だ。

 脳のインスリン感受性に、大脳基底核を構成する線条体が関わっていることが知られている。運動トレーニングの後ではこの部位の働きが、肥満のない人と同じくらい活発になり、これがインスリン感受性の増強につながると考えられている。

 興味深いことに、運動介入による脳機能の改善が大きい人ほど、腹部の内臓脂肪を減らすのに成功しやすいことが分かった。さらには、気分や作業の切り替えをスムーズに行えるようになり、運動が脳の実行機能も改善することが示された。
認知症のある人でも運動は効果的
 シドニー大学の研究では、軽度認知障害(MCI)のある人が筋力トレーニングを行うことで、脳機能を改善できることが明らかになっている。

 MCIのある55~86歳の男女100人を対象とした研究で、筋力トレーニングを週に2回、6ヵ月間行うことで、認知能力は著しく改善した。MRIスキャンをしたところ、運動により脳の認知能力に関わる領域のサイズが増えていた。

 参加者の多くは運動をする習慣をもっていなかった。運動量を徐々に増やしていき、運動強度をピーク時の80%まで高めることを目標とした。

 「重要なことは、運動を週に2回以上、できるだけ長く続けることです。運動に慣れてきたら、強度を少しずつ上げていくことも重要です。運動はあなたの脳のために、多くの利益をもらたします」と、シドニー大学老年医学部のマリア ファイアローン シン教授は言う。

 参加者の多くは、認知能力の向上を実感し、運動をするのを12ヵ月間に延長することを希望したという。

 研究チームは、認知能力を高めるために、どのような運動が最適化を解明する研究に取りかかっている。

Exercise improves brain function in overweight and obese individuals(Society for the Study of Ingestive Behavior 2019年7月9日)
Exercise or physical activity and cognitive function in adults with type 2 diabetes, insulin resistance or impaired glucose tolerance: a systematic review(European Review of Aging and Physical Activity 2018年1月22日)
ncreasing muscle strength can improve brain function: study(シドニー大学 2016年10月25日)
[Terahata]

「記事の内容」に関するニュース

2019年08月20日
米を中心にした食事はメリットが多い 食べ過ぎると糖尿病リスクが上昇
2019年08月20日
「ワークライフバランス」の改善の効果 生活満足度は女性より男性で改善 34ヵ国を比較
2019年08月20日
高脂肪の肉が「乳がん」リスクを上昇 代わりに低脂肪の鶏肉を食べるとリスクは減少
2019年08月20日
金沢大学がAIを活用した糖尿病性腎症重症化予防の共同研究を開始 日本人に最適な予防法を開発
2019年08月20日
シロタ株を含む乳製品を摂取すると便秘リスクが低減 適度な運動が加わるとさらに効果的
2019年08月15日
働き方改革 「長時間労働」が脳卒中のリスクを上昇させる 産業医の7割が「改善を感じる」と回答
2019年08月14日
認知症を予防するための10の方法 健康的な生活スタイルを実行すれば脳の老化を抑えられる
2019年08月13日
たった12週間のウォーキングで自分は変えられる 運動は考えている以上に簡単
2019年08月09日
「乳がん」を早期発見 唾液をAIで高精度に検査 低コストな測定方法の開発へ
2019年08月07日
トマトのリコピンが肥満とメタボのリスクを低下 血管を健康にする抗酸化作用
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 8,441 人(2019年06月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶