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老化物質「AGE」が乳がんのリスクを増加する 糖質と脂肪の摂り過ぎに注意
2019年08月07日
最近の研究で、糖質や脂肪の摂り過ぎや運動不足により、体内で「最終糖化産物(AGE)」が増え、乳がんのリスクが増加することが分かってきた。AGEには抗がん薬を効きにくくする作用もある。
乳がんリスクの高い女性は、糖質や脂肪の多い加工食品を控えるなど、AGEが増え過ぎないよう生活スタイルを見直すことが勧められている。
乳がんリスクの高い女性は、糖質や脂肪の多い加工食品を控えるなど、AGEが増え過ぎないよう生活スタイルを見直すことが勧められている。
AGEが老化現象を引き起こす
不健康な食事や運動不足が、がんの発症に関連していることが、多くの研究で確かめられている。
最近の研究で、不健康な生活により体内で「最終糖化産物(AGE)」が増え、酸化ストレスによる細胞障害を加速し、がんが悪化することが分かってきた。
「老いたくない」「健康でありたい」と願う人は多いが、AGEは老化を引き起こす。
AGEは体内の糖質とタンパク質が結合してできる化合物だ。AGEが増えると、身体をつくるもととなるタンパク質が、本来の機能を失ってしまう。
AGEは、身体のあらゆる場所にあり、骨を弱らせたり、動脈硬化や糖尿病、慢性炎症、認知症、がんの発症をまねくなど、さまざまな老化現象を引き起こす。
AGEは酸化ストレスも引き起こす。これに肥満が重ねると、脂肪組織の酸化ストレスがなおも増加しやすくなり、肥満にともなう代謝異常が起こりやすくなる。
関連情報
糖質や脂肪の多い加工食品がAGEを増やす
糖質や脂肪の多い加工食品を食べ過ぎると、AGEのレベルが上昇しやすくなる。スナック菓子、清涼飲料水、インスタント食品などの加工食品は、AGEが増える原因になるので、食べ過ぎない方が良い。
「AGEは体内の糖質や脂肪が分解されることでできるので、年齢を重ねるにつれ増えていくのは、ある程度は避けられませんが、AGEレベルは糖質や脂肪を多く含む加工食品の摂取を減らすことで減らせます」と、サウスカロライナ医科大学ホリングスがんセンターのデビット ターナー氏は言う。
AGEは、脂肪の多い豚肉や鶏肉を油で揚げるなどの調理によっても増える。
AGEはタモキシフェンの働きを邪魔する
AGEレベルが高いと、エストロゲン受容体(ER)陽性の乳がん患者で「タモキシフェン」が効きにくくなることが、ホリングスがんセンターの研究で明らかになった。
女性ホルモンであるエストロゲンによって増殖する乳がん細胞には、エストロゲンを取り込む受容体がある。抗エストロゲン薬はその受容体とエストロゲンが結び付くのを妨げて、がん細胞の増殖を抑える。
「タモキシフェン」は代表的な抗エストロゲン薬で、エストロゲン受容体を塞ぐことでがん細胞への作用を妨げる。閉経前および閉経後の患者に使われる。
食事と運動でAGEレベルを下げられる
「乳がんの女性では、不健康な食事や運動不足によりAGEが増えると、乳がんの治療の効果を得られにくくなるおそれがあります。AGEを減らすよう、生活スタイルを見直すことをお勧めします。肥満の解消も効果的です」と、ターナー氏は言う。
研究チームはこれまでの研究で、エストロゲン受容体(ER)陽性の患者で、ER陰性の患者に比べ、AGEレベルが上昇しやすいことを確かめている。今回の研究で、AGEレベルの上昇ががん細胞の増殖を促進する経路を継続的に活性化をもたらすことを確かめた。
研究チームは、AGEがER陽性の乳がんのがん細胞シグナル伝達にどのように影響するのかを、動物実験で調べた。そして、AGEがエストロゲン受容体αと呼ばれるタンパク質のリン酸化を促すことを確かめた。がん細胞にタモキシフェンを添加するとがん細胞の増殖を抑えられるが、AGEレベルが高いとその反応は低下した。
研究チームはまた、食事療法や運動療法による生活スタイル介入が、ER陽性の乳がんがある肥満の女性で、全身のAGEレベルを低下させることも確かめた。
研究チームは、ER陽性の転移性乳がんの女性を対象に、AGEを軽減する治療を行うことで、がんの治療を改善できるかを調べる臨床試験を計画している。
Breaking Down AGEs: Insight into how lifestyle drives ER-positive breast cancer(サウスカロライナ医科大学 2018年12月28日)Advanced glycation end products are elevated in estrogen receptor-positive breast cancer patients, alter response to therapy, and can be targeted by lifestyle intervention(Breast Cancer Research and Treatment 2018年10月27日)
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