オピニオン/保健指導あれこれ
健康運動看護師とは -看護職だからできる健康運動の実践指導-

No.4 地域でスポーツする人を支える健康スポーツナースの役割

宮崎大学医学部看護学科 地域・精神看護学講座教授
鶴田 来美
 健康志向の高まりとともに、全国各地で様々なスポーツイベントが開催されている。マラソンについては、市民参加型のマラソン大会はフルマラソンが200以上、ハーフマラソンが500以上開催され、人気は年々高まり出場が抽選になるものも多くある。

 2007年に開催された東京マラソンを契機に、マラソン大会やスポーツイベントにおける医療・救護活動の重要性が認識されるようになった。マスコミ等では積極的に報道されていないが、大会数の増加に伴い競技中の心停止、突然死の発生例も増加し、近年、関連学会ではマラソン大会の救護活動に関する報告が行われている。

 私の居住する宮崎市では、12月に3km、10km、フルマラソンの3つの種目で合計11,000人が出場する青島太平洋マラソンが開催されている。スポーツする人、見る人、支える人が一体となったスポーツイベントである。

 宮崎大学医学部と医学部附属病院からは医師、理学療法士、看護師等が救護活動に携わっている。救護所利用で多いのが、筋肉痛や靴擦れ、転倒による打撲や擦過傷である。次いで、低体温症や脱水症、熱中症であり、時には病院への救急搬送が必要となることもある。マラソンは、天候に左右されやすいスポーツで、当日の気温や湿度などの環境が救護活動に大きく影響する。

 自身の救護活動について述べると、トレイルランニング大会やウォーキング大会がある。トレイルランニングにはタイムや順位を競い合う競技も数多く存在し、距離も、20kmに満たないものから100km以上を数十時間かけて走るレースもあるなどさまざまである。また、出場者は一度山に入ったら下りてくるまではすべてが自己責任という環境の中で、自分の身を守る為、走るコースや距離、時間によって最低限の装備、食糧、水分などをランニング用の小型バックパックに入れて走る。

 トレイルとは登山道や林道などを意味し、場所の高低に関わらず、山などの自然の中を走るアウトドアスポーツである。木や草の根、岩場、落ち葉や苔、生い茂った山林などさまざまな表情の自然の中を走り抜ける為、熱中症や低体温症、捻挫、骨折の他、滑落、虫さされ(特に蜂)や頭部の外傷(木の枝による)など、整備された舗装道を走るマラソンとは異なる様相の救護活動がある。

 ウォーキング大会については、開催規模や目的が様々であり、マラソンやトレイルランニングに比べ、年齢層の幅が広い。我々はウォーキングクラブ会員を対象に調査を行ったことがある。年齢は60歳~70歳台が多く、高血圧症や糖尿病、心疾患といった生活習慣病を有する者が約6割、膝や腰に痛みがある者が約5割いた。そのため健康づくりや健康回復を意図して参加する者も多い。

 一般的にウォーキングは、いつでも誰にでも手軽にできる運動で、生活習慣病や介護予防に効果的であると言われている。しかし、生活習慣病関連疾患や運動器疾患等がある場合は、ウォーキングであっても安全に楽しんでもらうための体調管理が重要である。健康スポーツナースとしてウォーキング大会に参加する際は、参加者自身にその日の体調に合わせ、自分のペースで楽しむことを伝えている。

 このように、地域でスポーツを楽しむ人を支える健康スポーツナースには多種多様な役割がある。スポーツ愛好家は「ケガを恐れていてはスポーツなどできない。」と言う。しかし、ケガによりスポーツを楽しむことができなくなることも事実である。我々健康スポーツナースには「健康志向の運動」だけでなく「競技志向の運動」においても、傷害を予防するとともに、万が一のケガや事故において適切な処理を施す役割を担っていく必要がある。

 平成28年2月に開催した健康スポーツナース養成講座には、全国各地から32名の看護職の受講があった。今回の受講者は、スポーツをする人を支えることを目的としている者が多いことが特色であった。その中の一人の受講者の声を紹介する。

 娘3人が入っているラグビースクール!小学生ラガーマンたちは本当にひたむきで一生懸命練習しています。コーチ陣はみんなボランティア。ラグビーに熱い思いをもち、その共通した気持ちで皆さん指導してくださっています。女子が少ないこともあり、初めはとても萎縮していた娘たちでしたが、ラガーマンの熱い思いに刺激を受け、今ではとても生き生きと練習しています。しかし、サッカーや野球に比べるとまだまだ認知度が低いスポーツで、「ラグビー=危険・痛い・怖い」というマイナスイメージがあります。特に女の子の親は、自分の娘を男の人ばかりの中に入れ、"もしもケガをしたら"、"生理が始まったときはどうするの"など様々な不安があります。

 スクールには、てんかんや心臓病、発達障害など何らかの健康問題を抱えている子がいます。私の三女もその一人で、水腎症で左腎がありません。だから、私が常に練習の場にいて、何か問題が起こった時にはすぐに対応してあげられたらと思います。女の子の場合、男性のコーチに傷の手当てをしてもらうこと、絆創膏を貼ってもらうことに戸惑いを感じることもあるでしょう。看護師である私が待機していれば、何か困った時には相談に乗れるし、応急処置もできる、そういう安心感を子どもや保護者の方に抱いていただければと思いました。

 今はデイサービスにいますが、いずれはまた病院に戻りスポーツドクターの下でもっともっと知識と技術を身につけていきたいと思っています。

 今の認知症対応型のデイサービスの指導や機能訓練も、本当に奥が深く今回の講座での学びをもっと活かしたいという気持ちが沸いています。しかし、子育てや家事をしながら、自身のスポーツナースとしての役割を追及するとなると、ある程度極めていく範囲を絞らないとどれも中途半端になるかなと思います。まずは、ラグビースクールの中で、私がいることによる安心感、子どもの体力や健康づくり、熱中症対策などを課題に活動していきたいと思います。
(岡山県 S.Sさん)

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