オピニオン/保健指導あれこれ
女性のライフステージと、体と心の健康運動

No.3 中年期の健康運動の考え方 ~ありたい体と心を創る~

ブレインラボカマクラ 代表
パーソナルフィットネストレーナー(NESTA認定)
健康運動指導士(健康・体力づくり事業財団認定)
前田 有美
 平均寿命の延伸、医療技術の革新などに伴い、昨今、頻繁に「人生100年時代」と言われています。100年時代の人生戦略に関するビジネス書がベストセラーになっていますが、「人生100年」というキーワードは多くの世代の眼に止まる機会となっています。今の生き方や生活の現状を鑑み、そして、これからの生き方について考え、行動していこうという意思の表れかもしれません。

中年期、改めて考える「自身の健康」

 さて、人生100年として、中年期(40~64歳)にフォーカスを当ててみましょう。この期間は約25年ですが、まさしく、人生の折り返しに差し掛かる時期になります。折り返しを経て、自分の人生を「新たに」あるいは「改めて」デザインし(例:私は○○な毎日にしたい、私は○○(誰)と○○をして過ごしたい、私は○○すると時間を忘れて楽しむことができる、私は○○をして今まで以上に元気に幸せになりたい)、その実現に向けて、「ご自身の健康」を創り上げていく絶好の時期だと私は考えています。

 しかしながら、後にご紹介しますが、女性にとっての中年期は、心身および環境の変化が多くかつ激しい時期といっても過言ではありません。そこで、女性の中年期に生じるイベントを様々な観点から全体的に捉え、理解することが大切になります。なぜなら、中年期の25年間を自分自身が望む健康な姿や体と心の状態を創る備えをし、可能であれば、少しずつありたい姿で行動していく期間にして頂きたいからです。

 では、中年期に生じる種々の変化と対策のポイントについては、下記の図でご確認ください(本内容は一般的であり、個人差や個体差があることをあらかじめご理解ください)。

 くれぐれも間違いがないように、繰り返しお伝えしたいのですが、これらのライフイベントや体と心の変化を紹介することで、皆様に不安や心配、恐怖心を煽っている訳ではありません。個人差や個体差がありますが、これらのイベントや変化が起こった時、あるいは起こる前に、私はこれからどのような毎日を送れば、穏やかにあるいは楽しく過ごせる、また、体も気持ちも元気になるのかといった風に、あくまで、心身ともに「ポジティブな健康づくり」を目指して頂きたいです。

 一例ですが、「体の痛みや違和感を少しでも減らして、体が自由に動ける日を増やそう!」「仕事と趣味を楽しむアクティブな毎日を送りたいから、疲れが溜まらないように今の体力を底上げしてみよう!」といった感じです。痛みや違和感、だるさといった不調を減らし、本来ある体と心の状態にする(マイナスからゼロの状態へ)だけでなく、そこから自分はどうありたい!とポジティブな姿を是非とも考えて頂きたい(ゼロからプラスの状態へ)と思います。重要なポイントは、「より自分らしくあること!」です。もしかしたら、「自分らしさとは何?」と考え込んでしまう方もいらっしゃるかもしれません。自分なりの回答が見つからない場合は、数名の近しい方々に尋ねてみてはいかがでしょうか。

 最後に、過去に行った中年期の女性を対象にした減量を目的とした運動や身体活動に関する研究についてご紹介します。

 肥満中年女性27名(平均年齢:56.9歳, 平均体脂肪率:36.1%)を対象に、減量を目的にした10週間のトレーニング教室(筋力トレーニングと有酸素性トレーニングの両者を行う)を行いました。食事に関しては開始前に集団指導とトレーニング期間中1,800kcal/日を摂取することを目標に設定したのみです。トレーニング終了後に身体的要素では体重と体脂肪量が有意に減少し、太ももなどの筋横断面積については有意な増大、および血清脂質の有意な改善が認められました。

 また、精神的要素についても不安(STAI)と精神健康度(GHQ28)を調査しました。その結果、不安を構成する特性不安や状態不安、および精神健康度に含まれる項目のひとつである、社会的活動障害がトレーニング終了後、有意に改善しました。これらの結果から、肥満中年女性を対象にした複合トレーニングは、身体および精神の両要素に効果をもたらす可能性があります(※1)。

 健康な中年女性9名(平均年齢:49.3歳, 平均BMI:26.9kg/m2, 平均体脂肪率:38.0%)を対象にした減量プログラム(10回の食事および歩行、家事や移動などの日常生活の身体活動に関する講義とプログラム期間中の両者の実践)を実施しました。プログラム終了後には、体重:平均-5.3±2.9kg、体脂肪量:平均-4.9±2.9kg、腹囲(臍位):平均-7.1±3.3cmといった有意な減少効果がありました。

 また、更年期指数(SMI)を用いて調査したところ、開始前:平均35.2±20.4点から終了後:平均28.4±19.3点へと併記-6.8±7.7点の有意な減少がありました。食事と身体活動の組み合わせのプログラムになりますが、軽度の更年期症状の場合、程度が悪化せずに軽い症状のまま日常生活を送れる可能性があります(※2)。

 いずれの研究成果も、運動や身体活動(食事や栄養面での介入を含む)を実施することで、中年期、特に閉経以降に生じやすい肥満や高脂血症といった生活習慣病に関連する項目、また、精神健康度や更年期症状に関連する項目の改善をもたらしました。体と心の状態の改善には個人差がありますが、実施直後に効果を実感できるものもあれば、変化するのに数ヶ月程度を要するものもあります。自分の体力や生活状況に合った運動内容を選択し実践すれば、効果が得られ、継続が可能になります。そして、運動の継続には、同じ目的や志を持つ仲間、目的や志を理解し、応援してくれる指導者の存在が鍵になります。是非、約25年間の中年期に時間をかけながら健康運動を習慣化し、生活や人生を自分らしく変えながら、高齢期を幸せに元気に迎えて頂きたいと思います。

※1:「肥満中年女性における複合トレーニングの実施が身体的および精神的要素に及ぼす効果」, 前田 有美他, 女性心身医学, 12巻3号, pp.481-491.

※2:「肥満更年期女性の減量プログラムの実施が減量および更年期症状に及ぼす効果」, 前田 有美他, 第37回日本女性心身医学会 学術集会(2008年7月)にて発表

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