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地域での看取り


(2016/02/29)
No.1 地域での「看取り」の現状と必要性
 1. はじめに
 日本は超高齢化社会になり、その対策に追われていますが、すでに次に訪れる「多死社会」が始まろうとしています。死に行く人とその家族にとって満足できる看取りは、今後の公衆衛生看護に不可欠な課題です。


特別養護老人ホームひらかた聖徳園
(大阪府枚方市)

 私は特別養護老人ホームの運営者として、多死社会という未来を少しでも明るくしたいと思い、高齢者の終末期を地域でどのように支えることが出来るのかを試行錯誤しています。

 そして将来的には、誰もが安心して人生の終焉を迎えるために、本人とその家族の生活に合わせた地域での看取りシステムを提案したいと考えています。

 本稿では、地域での看取りの現状、在宅や特別養護老人ホームでの看取りの実際、地域における理想的な看取り等を10回連載で紹介する予定です。今回は、日本における終末期の現状を紹介します。

 2. 日本の医療システム
 わが国は2010年をピークに人口が減少し、高齢者率は増加の一途を辿っています。

 そこで、厚生労働省は2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的に、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。

 地域包括ケアシステムでは、地域で最期まで暮らすことを求めていますが、一人暮らしや認知症の高齢者にとって在宅生活の継続は難しく、施設入所ニーズが高まっています。

 しかし、特別養護老人ホーム(以下、特養)の待機者は入所までに1年以上かかるうえ、待機中に体調が悪くなり入退院を繰り返すことは稀ではありません。

 高齢者がごえん性肺炎(食事や唾液を誤嚥して肺炎を起こす)で入院すると、まず絶食となり抗生物質の点滴が始まります。治療が完了して、さあ食事を開始しようとしても、1週間以上何も食べていない高齢者は認知症が進行し、食べることすら忘れてしまい、栄養が取れずそのまま亡くなってしまうということも経験します。

 3. 死に場所
 2009年の厚生労働省「人口動態調査」によると、死亡場所は病院が8割を占めています(下図)が、多死社会では病院がその役割を満たすことはできなくなります。また、積極的治療を必要としない、社会的入院は効率性に欠けると考えられています。

 一方で、60年前までは8割以上の死亡場所が自宅であり、特に老衰による自然死は自宅で家族に看取られながら亡くなるのが一般的な形でした。

 しかし近年では、高齢であろうとも最新の医療技術を利用して、できる限り長生きさせようとする医療至上主義が一般化しています。そのため、特養においても状態が悪くなれば病院に入院し、そのまま病院で慌しく亡くなるケースが多い状況です。

 医療制度改革は、高齢者切り捨ての改革だと思われがちですが、地域での看取りを国民一人一人が考える契機でもあると思います。

 4. エンド・オブ・ライフケア
 従来の「ターミナル・ケア」は病院内での医療や看護が中心ですが、地域での看取りは生活上の課題への対応やケアが中心となり、キュア(治癒)からケア(治療)への転換と、保健・医療・福祉の連携チームによる支援を行う「エンド・オブ・ライフケア」という考え方が広まりつつあります。

 最近では、このエンド・オブ・ライフケアの考え方が少しずつ浸透し、自然に命を全うすることで質の高い死を求める考えも広がりつつあります。死を忌み嫌う日本的死生観から、身近な家族の死を乗り越えることで、新たな死の受け止め方を学び、死を人生の完成と捉える価値観が普及し、病院で死ぬことを常識としない社会づくりが必要だと思います。

<参考文献>
1) 佐々木 隆志. エンド・オブ・ライフケアの概念構成と変遷に関する研究. 静岡県立大学短期大学部研究紀要第26号. 2012
2) 日野原重明. 延命の医学から命を与えるケアへ.医学書院.1983