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子どもの肥満予防を目的とした親への介入には効果なし

 親への介入を通して小児肥満を予防するという手法には効果が認められないとする論文が、「The Lancet」9月20日発行号に掲載された。
 シドニー大学(オーストラリア)のKylie Hunter氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、2歳時点のBMIのzスコアに介入の有無による有意差は認められないという。

 論文の筆頭著者であるHunter氏は、「肥満は個人では変えられない、環境や社会・経済的因子の影響が大きい。親は子どもの体重に重要な役割を果たすものの、われわれの研究は、親だけでは子どもの肥満を防ぐことは難しいことを示している。居住環境にかかわらず誰もが健康的に暮らせるように、社会全体で行動を起こす必要がある」と述べている。

 現在、世界中で約3700万人の5歳未満の子どもが、過体重または肥満に該当すると推計されている。幼少期からの肥満は、生涯にわたって健康へ悪影響を及ぼす可能性があり、対策が急がれている。
 小児肥満の予防対策の一つとして、親への介入を強化するという施策も行われている。具体的には、母乳育児、食事、身体活動、睡眠、スクリーンタイムなどへの働きかけを行い、子どもが健康的な習慣を身に付けられるように親をサポートするという取り組みだ。
 Hunter氏らは、そのような取り組みの報告を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を実施した。

 文献検索には、MEDLINE、Embase、CENTRAL、CINAHLなどを用い、それぞれのスタートから2024年9月30日までに収載された論文を検索対象とした。
 包括基準は、生後12カ月未満で親への介入が開始され、対照群(非介入や注意喚起のみなど)を置いて効果を検討したランダム化比較試験の報告とした。

 17件の研究(小児の合計数9,128人〔男児50%、女児48%、不明2%〕)がメタ解析の対象とされた。これらの研究は、米国、英国、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデン、ベラルーシ、ブラジルなどの国から報告されており、介入期間は最も短い研究が2日、最も長い研究が39カ月だった。
 主要評価項目である生後24カ月(±6)時点のBMIのzスコアは、介入群と対照群で有意差がなかった(平均差-0.01〔95%信頼区間-0.08~0.05〕)。

 この結果について、論文の上席著者であるロストック大学(ドイツ)のAnna Lene Seidler氏は、「小児肥満を予防するための親に対する介入に有効性が認められない理由は、いくつか考えられる。一つは、子どもが生まれたばかりの親は多忙でストレスが多く、行動変容に取り組む余裕がないのかもしれない。もう一つは、子どもが肥満になりやすい家庭の特徴として、社会経済的に恵まれていないことが挙げられるが、そのような家庭の親は、介入を受ける機会が限られている可能性がある」と考察している。

 またHunter氏は、「各国の政府は親に負担をかけてその効果に期待するよりも、過体重を助長するような社会的要因に取り組む方が良いのではないか。不健康な食品の広告を規制し、健康的な食品や緑地へのアクセスを改善するといった、協調的な政策が求められている」と語っている。

(HealthDay News 2025年 9月11日)

原文

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