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くるみを糖尿病の食事療法に活用 オメガ3脂肪酸などが豊富

 くるみはナッツ類で抗酸化値がもっとも高く、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、葉酸、マグネシウム、銅、亜鉛などのビタミンやミネラル、食物繊維など、健康維持・増進に必要な栄養素が豊富に含まれる。くるみは、バランス良く栄養素を補給するのに適した食材だ。

 くるみは、健康に良いと注目を浴びているオメガ3脂肪酸がナッツ類でもっとも多く含まれている。オメガ3脂肪酸は動脈硬化を防ぎ、コレステロール値、中性脂肪値を下げ、心臓病、がん、脳卒中、糖尿病、高血圧、肥満など、生活習慣病の予防・改善の効果があると報告されている。

 糖尿病の食事療法では、脂肪のコントロールが重要となる。くるみが脂肪の摂取を改善する上で特にメリットの多い食品であり、スマートな選択となることを示した研究を、オーストラリアのウーロンゴン大学の研究者が2件発表している。

悪玉コレステロールが低下、善玉のHDLコレステロール値が上昇
くるみ
 2型糖尿病患者がくるみを毎日食べると、コレステロールが改善し健康増進のメリットを得られるという研究が、米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「Diabetes Care」2004年12月号に発表された。

 この研究は、2型糖尿病と診断されてから1年以上が経過した35∼75歳の男女58人を対象に無作為対照比較試験として行われた。

 対象者を3群に分け、脂肪エネルギー比率を30%に調整した次の3タイプの食事をそれぞれ摂取してもらった。(1)低脂肪食の指導のみを受けた群、(2)調整済みの低脂肪食を摂取した群、(3)1日当たりの30gのくるみ(くるみ約8∼10個分)を含む低脂肪食を摂取した群。

 その結果、くるみを摂取した群では他の2つの群に比べ、悪玉のLDLコレステロールが10%低下し、善玉のHDLコレステロール値が上昇していた。

 くるみには、オメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪と抗酸化作用のあるポリフェノールなどが豊富に含まれる。「くるみを毎日食べることは、2型糖尿病などの慢性疾患をもった患者にとってとりわけ重要かもしれない」と研究者は述べている。

くるみにはオメガ3脂肪酸や抗酸化物質が豊富に含まれている
 もう1件の研究では、2型糖尿病患者がくるみを毎日の食事に取り入れると、良質の脂肪を摂取できるだけでなく、血糖コントロールも改善することがあきらかになった。この研究は臨床栄養の専門誌「European Journal of Clinical Nutrition」2009年4月号に発表された。

 インスリン治療を受けていない過体重の成人糖尿病患者50人(平均年齢54±8.7歳)に、体重維持を目標とした低脂肪食の指導を受けてもらい、1日30gのくるみを摂取する群(くるみ群)と摂取しない群(対照群)に無作為に分けた。両群ともに1日の摂取カロリーは2000kcalで、脂肪のエネルギー量比は30%とした。

 1年間にわたり食事療法を続けてもらったところ、両群とも飽和脂肪の摂取量は抑えられ、1∼2kgの体重減量を示したが、くるみ群では対照群と比べてオメガ3脂肪酸の摂取量が有意に多くなり、空腹時血糖値が有意に低下した。この効果は最初の3ヵ月で認められたという。

 研究を指導したウーロンゴン大学スマートフーズセンター所長のリンダ・タプセル教授は「くるみにはオメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪が豊富に含まれるだけでなく、食物繊維やビタミンEなどの抗酸化作用のある栄養素もとれる。くるみ群ではインスリン値の改善も示されたことは、くるみに良質の脂肪が含まれていたことによる可能性がある」と説明している。

[保健指導リソースガイド編集部]
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