ニュース

「認知症予備群」を簡単な血液検査で判定 早期発見で「先制医療」を可能に

 認知症の前段階の「軽度認知障害」になっているかどうかを血液検査だけでおよそ80%の精度で判定できる方法を筑波大学などの研究グループが開発した。「すぐにでも健診で活用できる簡単で実用性のある検査法」としている。
認知症の症状が出る前に血液検査で早期発見
 日本の認知症有病者数は462万人、その予備群は400万人に上り、その7割がアルツハイマー型の認知症だ。要介護の原因疾患の2割が認知症であり、その社会コストは14.5兆円と推定されている。

 今後も患者数は増え続けると予測されており、認知症は大きな社会問題になっている。認知症は症状が進行してから治療を開始しても効果が見込みにくい。認知症の症状が出る前に、早期に発見して治療的介入を行う「先制医療」が求められている。

 検査をきっかけに早い段階で診断を受け、運動を取り入れたり食生活を改善するなどして生活習慣を改善すれば、認知症の予防につながる。

 筑波大学医学医療系の内田和彦准教授、朝田隆名誉教授らの研究グループは、脳内の「アミロイドβペプチド」と呼ばれる異常なタンパク質の排出などに働くタンパク質の血液中の変化が、認知機能低下のマーカーになることを明らかにした。
「軽度認知障害」を血液検査で判定 先制医療を可能に
 認知症の予備群の段階で発症するのが「軽度認知障害」(MCI)、さらにその前に「プレクリニカル期」という症状のない時期があると考えられている。

 病気の進行の目印になるマーカーがみつかれば、予備群のMCIやプレクリニカル期の段階で先制医療を行うことが可能になる。

 アルツハイマー病は、発症の20年くらい前から、「アミロイドβペプチド」の沈着(老人斑)という病理的病変が起こり発症する。アミロイドβペプチドは神経細胞毒性を示し、その産生と蓄積の異常がアルツハイマー病の発症に深く関わっている。

 研究グループは、病状が進むにつれ、患者の血液の中では、アミロイドβペプチドの排除や毒性防御などの働きをするタンパク質「シークエスタータンパク質」が減ることを明らかにした。

 シークエスタータンパク質について、「補体タンパク質」「アポリポタンパク質」「トランスサイレチン」の3つの血清タンパク質を組み合わせた解析により高い精度で、MCIやプレクリニカル期を判定できることが明らかにした。
すぐにでも健診で活用できる簡単で実用性のある検査法
 研究グループは、茨城県利根町で2001年に約2,000人を対象に開始されたコホート研究の成果をもとに、新たな検査法の精度を確かめた。

 研究では、3年ごとに認知機能検査、臨床診断と採血を行い、軽度認知障害からアルツハイマー型の認知症へと病状が進行していく過程を詳しく調べた。

 その結果、参加者を時間軸にそって、健常からMCIや認知症まで継続的に調査する「縦断研究」によって、新たな検査法の精度が80%に上ることを明らかにした。

 今回開発されたのは、一般的な血液検査で測定できる検査法で、今後の認知症の先制医療の実現につながる可能性がある。

 すぐにでも健診で活用できる簡単で実用性のある検査法で、すでに国内のおよそ500ヵ所の医療機関で検査が行える体制にあるという。

 「今後、検査の精度を上げるとともに、バイオマーカーによる早期発見と発症前の治療的介入が、認知機能の低下の進行を防ぎ、認知症の発症を予防することを、長期的なコホート研究によって確かめる必要がある」と、内田准教授は述べている。

筑波大学医学医療系
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶