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令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇

 東京都は都民のがん予防に対する意識やがん検診の受診状況、都内事業所や健康保険組合における検診やがん予防の取り組みについて調査を実施している。

 このほど「令和4年度 東京都がん予防・検診等実態調査」として取りまとめた結果を公表した。
 このうち都内事業省や健康保険組合を対象とした調査結果では、職域におけるがん予防や検診等について詳しく調査している。
 東京都は平成30年3月に「東京都がん対策推進計画」を改定し、平成30年度から6年間にわたって取り組むがん対策の方向性を提示している。このことに関連し、目標の進ちょく状況把握や、施策を適切に展開するため実態調査を実施。

 今回の報告書は、都民を対象に実施した意識調査と、都内事業所および都内健康保険組合を対象とした、職域におけるがん予防・検診等に関する調査で構成されている。
都内事業所の定期事業者健康診断 正社員以外は「実施していない」が3割
 事業所を対象にした調査では、島しょ地域を除く都全域に所在地がある事業所から抽出した3,300事業所が対象。有効回答数は532事業所だった(有効回答率16.1%)。内訳は区部が79.7%、市町村部が18.0%。

 従業員数は「10人未満」(34.8%)、「10〜29人」(30.8%)、「30〜49人」(11.8%)の順に多い。主たる業種は「医療福祉」が最多で18.4%。次いで「卸売業、小売業」が16.2%、「サービス業」が14.3%。従業員構成比は正社員が54.4%、正社員以外が45.6%だった。事業所の健康保険の種類は「全国健康保険協会掌握健康保険(協会けんぽ、船員保険)」が最も高く54.7%、「組合健康保険(単一)」が14.5%、「同(総合)」が13.5%。

 事業所の「定期事業者健康診断」の実施状況を見ると、正社員においては「健康保険組合と共同で実施」が最も高く49.2%、「事業所単独で実施」が37.8%だった。

 一方、正社員以外では「実施していない」が最も高く29.9%、「事業所単独で実施」と「健康保険組合と共同で実施」がいずれも23.7%と、正社員に比べて実施率が低かった。

出典:「令和4年度 東京都がん予防・検診等実態調査報告書」(東京都福祉保健局)

 事業所でのがん検診の受診者を増やす取り組みについては、「実施している」が26.1%にとどまっている。従業員の規模別で「実施している」と回答したのは、従業員が「500人以上」の企業で47.8%、「50〜499人」の企業で41.2%だったのに対し、「50人未満」の企業が21.6%と低く格差が見られた。しかし、いずれの規模でも「実施している」は「実施していない」を下回っている。

 実施している取り組みは「がん検診受診費用の補助」(64.0%)、「がん検診受診時間を就労扱いとするなど、がん検診を受けやすい勤務環境づくり」(51.1%)などが多く、費用補助については最も効果的だと考えている事業所が半数近くを占めた。

出典:「令和4年度 東京都がん予防・検診等実態調査報告書」(東京都福祉保健局)

 一方、がん検診の受診者を増やす取り組みを実施していない理由については「従業員が少ないなど、がん検診受診中の従業員を支援する体制がない」が、従業員規模が小さくなるにつれて割合が高い。逆に「経営層が、がん検診受診の重要性や必要性を理解していない」は従業員規模が大きくなるにつれ割合が高かった。

 厚生労働省が平成30年に策定した「職域におけるがん検診に関するマニュアル」については、「知っていた」が5.6%、「聞いたことはあるが、内容までは知らなかった」が16.2%、「知らなかった」が74.2%と、認知度の低さが明らかになった。ただし従業員規模が500人以上の企業では「知っていた」「聞いたことはあるが、内容までは知らなかった」が半数近くを占めていた。
健康保険組合「がん検診の受診者を増やす取り組み」実施率は85%
 都内健康保険組合を対象とした調査では、島しょ地域を除く都全域に本部を有する健康保険組合100組合を対象に実施。有効回答数は39組合(有効回答率39%)だった。

 設立形態は「単一」が76.9%、「組合」が23.1%。健康保険組合の専門スタッフの配置状況(1人以上配置している割合)は、「保健師」が最も高く28.2%、「医師」と「看護師」が23.1%で続く。

 健康保険組合でのがん検診の受診者を増やす取り組みは「実施している」が84.6%に上った。これは前回、平成30年度調査の76.6%より向上している。実施している取り組みは「がん検診受診費用の補助」が84.8%と最多で、「広報誌やホームページ等を使った組合員全体へのがん検診の受診勧奨や情報提供」も63.6%と高い。

出典:「令和4年度 東京都がん予防・検診等実態調査報告書」(東京都福祉保健局)

 一方、がん検診の受診者を増やす取り組みを実施していない理由は、「がん検診に関する予算が不足している」と「衛生管理者など保健事業を担当するスタッフが不在(または少数)のため、組合員にがん検診の受診勧奨を行うことが困難」がいずれも33.3%を占めた。

 そのうえで、今後の取り組みの実施にあたって行政に期待することとしては「組合員に対する効果的ながん検診の受診勧奨・情報提供方法の事例紹介」(33.3%)、「経営層に向けた、がん検診受診の重要性などに関する講演会やセミナーの開催」と「がん検診に関する情報やデータの提供」(いずれも16.7%)などが挙げられていた。

出典:「令和4年度 東京都がん予防・検診等実態調査報告書」(東京都福祉保健局)

令和4年度 東京都がん予防・検診等実態調査(東京都福祉保健局)
職域におけるがん検診に関するマニュアル(厚生労働省/平成30年3月29日)

[yoshioka]
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