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要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年06月05日
将来の要介護認定のリスクと関連の深い健診6項目を、愛知県北名古屋市の65歳以上の市民3,718人を対象とした、特定健診・後期高齢者健診の8.5年間の追跡データから明らかにしたと、名古屋大学が発表した。
その健診6項目とは、▼肥満度(BMI)、▼収縮期血圧、▼HDLコレステロール、▼肝機能を調べるためのALT(GPT)・AST(GOT)・γ-GTP。
これらは、要介護認定のリスクとU字型の関係にあり、高過ぎても低過ぎてもリスクは上昇するという。
要介護認定情報と健診データを用いた後ろ向きコホート研究
要介護とは、身体機能だけでなく思考力や理解力も低下し、基本動作を自分で行うことができず、支援や介護を必要となった状態。 2019年に要介護認定を受けた人は全年齢で480万人(65歳以上が95%)になり、2000年の2.1倍に増加した。前もって要介護認定を受けるリスクの高い人を特定し、予防的な健康介入によって健康寿命を延ばすことが、日本の医療・財政の両面を支えるために必要とされている。 そのためには、将来に要介護認定を受けるリスクの高い人を特定できる、感度の高いリスクマーカーが必要となる。 そこで名古屋大学の研究グループは、愛知県北名古屋市から提供を受けた要介護認定情報と健康診断(特定健診と後期高齢者健診)の情報をもとに、65歳以上の3,718人を対象とした後ろ向きコホート研究(追跡期間8.5年間)を行い、将来の要介護認定のリスクマーカーを探索した。 研究は、愛知県北名古屋市住民対象に、要介護認定情報と健康診断情報をもとに、要介護認定のリスクマーカーの探索を行った後ろ向きコホート研究によるもの。 その結果、▼肥満度(BMI)、▼収縮期血圧、▼HDLコレステロール、▼肝機能を調べるためのALT(GPT)・AST(GOT)・γ-GTPが、それぞれ三次スプラインモデルで有意な結果を示した。これらの6項目は、値が高過ぎても低過ぎても、要介護認定のリスクが上昇することが明らかになった。 「従来の古典的な解析アプローチでは、検査値と要介護認定リスクは比例関係にある評価を行うことが多いのでが、今回の研究結果では、要介護認定リスクは比例関係ではなく、U字型の関係を考慮することが必要だと分かりました。今後、U字型の関係を考慮した要介護認定リスク予測方法を開発することが期待されます」と、研究グループでは述べている。 研究は、名古屋大学大学院医学系研究科実社会情報健康医療学の中杤昌弘准教授、同大医学部附属病院の水野正明教授、杉下明隆助教らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載された。
▼肥満度(BMI)、▼収縮期血圧、▼HDLコレステロール、▼肝機能を調べるためのALT(GPT)・AST(GOT)・γ-GTPが要介護認定リスクと関係していることが明らかに
要介護認定リスクは比例関係ではなく、U字型の関係にあり、値が高過ぎても低過ぎても、要介護認定のリスクは上昇する。
要介護認定リスクは比例関係ではなく、U字型の関係にあり、値が高過ぎても低過ぎても、要介護認定のリスクは上昇する。
出典:名古屋大学、2023年
高リスク者を特定できる感度の高いリスクマーカーが求められている
研究グループは今回、愛知県北名古屋市から提供を受けた要介護認定情報と健康診断(特定健診と後期高齢者健診)の情報をもとに、65歳以上の3,718人を対象とした後ろ向きコホート研究(追跡期間8.5年間)を行い、要介護認定のリスクマーカーを探索した。 世界で高齢化率は着実に上昇しており、今後数十年間はこの傾向が続くと考えられている。とくに日本では2020年には高齢者が3,619万人となり、総人口の28.8%近くを占め、超高齢社会となっている。 このような社会の進化に対応するため、日本政府は2000年に旧来の福祉制度に代わって介護保険制度を導入した。この新制度は、高齢者の自立を優先し、受給者のサービス選択の幅を広げる長期社会保険の一種だ。 これにより、在宅介護を必要とする高齢者が、生活の質を維持することが可能になった。 介護保険制度の受給者となるには、要介護認定を申請し、必要なサービスのレベルの評価を受ける必要がある。審査は、全国統一の要介護認定基準に従って行われ、要介護認定を受けた際には、申請者は、▼要支援(要支援1・2)、▼要介護(要介護1~5)に分類される。 2019年に要介護認定を受けた人は全年齢で480万人(65歳以上が95%)になり、2000年の2.1倍に増加した。 介護保険料の50%は公費で賄われ、残りは被保険者が支払う保険料で賄われているが、65歳以上の保険料は2000年から2021年にかけて倍増している。 高齢者の人口はさらに増加すると見込まれており、今後は新しい受益者に対して、医療・財政両面からより優れた政策が必要になる。 ひとつの解決策は、前もって要介護認定を受けるリスクの高い人を特定し、予防的な健康介入によって健康寿命を延ばすことだ。このためには、高リスク者を特定できる感度の高いリスクマーカーが必要とされている。健診データと要介護認定リスクの関係をU字型でも評価
研究グループは今回、2011年4月~2012年3月に特定健診または後期高齢者健診を受診した人のなかで、2012年4月時点で65歳以上、2012年3月までに要支援認定・要介護認定を受けず、転居・転出・死亡もしていない3,718人(男性:1,742人、女性:1,976人)に対して、2020年9月まで要介護認定情報を用いて追跡を行った。 追跡期間中に701人(男性:335人,26.2人/1,000人年、女性:366人,24.5人/1,000人年)が要介護認定(要介護1~5のいずれかの認定)を受けた。 要介護認定リスクと健診データの関係の評価を行うにあたり、追跡期間中に取得した健診データをすべて分析に利用すべく時間依存性共変量を考慮したCox回帰モデルを採用した。 従来は健診データと要介護認定のリスクを評価する際、比例関係(線形モデル)を前提にした評価が行われていたが、今回の研究では、健診データと要介護認定リスクの関係を比例関係ではなくU字型で評価することができるように、制限付き三次スプラインモデルを採用し、線形モデルとスプラインモデルで統計的にどちらが適切かを評価した。 名古屋大学大学院医学系研究科 実社会情報健康医療学名古屋大学医学部附属病院 先端医療開発部
U-shaped link of health checkup data and need for care using a time-dependent cox regression model with a restricted cubic spline (Scientific Reports 2023年5月22日)
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