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うつ病や認知症の患者の運転を規制 「社会生活を損なう」と学会が声明
2017.01.11
 道路交通法が改正されるなど、うつ病や認知症などの精神疾患をもつ患者の運転を規制する動きが拡大している。日本精神神経学会などは「全ての患者に運転中止を求めると、患者の社会生活が損なわれる。現実に即していない」と、声明を発表した。
抗うつ薬の添付文書を改訂 車の運転を許容
 厚生労働省は、このほど、抗うつ薬のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)を服用している患者に対して、一定の条件付きで車の運転などを許容するよう、薬の添付文書「使用上の注意」の改訂を製薬企業に指示した。

 抗うつや薬睡眠薬などの向精神薬の副作用が社会問題になっており、向精神薬を服用中の患者の自動車運転に対する公衆衛生上の懸念は増大している。

 しかし、一部の大都市を除いて、車の運転なしには生活や仕事が成り立たないという現実もある。そのため、日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、日本うつ病学会などの関連学会は、向精神薬について添付文書の改訂を求め、厚生労働省などと意見交換を行ってきた。

 そして厚生労働省は11月25日、「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に関わる使用上の注意」に関する薬剤添付文書記載の改訂を発表した。

 対象となるのは、ミルナシプラン(商品名:トレドミン錠)、デュロキセチン(同サインバルタカプセル)、ベンラファキシン(同イフェクサーSRカプセル)の抗うつ薬3剤(いずれもセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬:SNRI)。
患者の社会生活を中心に据えた議論が結実
 今回の改訂により、「眠気、めまい等が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。また、患者に、これらの症状を自覚した場合は自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、指導すること」と変更された。

 改訂前は、「眠気、めまい等が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること」と記載されており、病状や服薬開始時期にかかわらず、服薬中の患者全てに運転中止を求めざるを得なかった。

 今回の改訂を受けて、日本精神神経学会などの関連4学会は、合同で声明を発表。添付文書の改訂について、「患者の社会生活を中心に据えた議論が結実した最初の一歩。現実に即した内容となっており、大いに評価できる」と述べた。
患者や医師は運転に留意する必要がある
 一方で、向精神薬が運転技能を低下させるという科学的根拠はないものの、「向精神薬がもたらす影響には個人差が存在することを忘れてはならない」と注意を促している。

 改訂後の薬剤添付文書記載も運転に影響しないことを無条件に保証しているわけではないので、これらの薬剤を処方する医師は、以下の諸点に留意する必要があるという。
1. 一般に眠気やめまい等を含む患者の状態に関して、取り分け処方開始時や増量時は、注意を払う。
2. 患者が服用中に運転する際は、眠気やめまい等が認められないことを確認する。
3. 患者に、眠気やめまいを含む体調不良等を感じた場合は、運転等を絶対に行わないよう指導することを徹底する。
4. 不適切な多剤併用処方は、運転等に与える薬剤の影響を予測することが困難になる可能性が高いので避ける。

改正道路交通法 75歳以上の高齢運転者への対策
 2017年3月に、改正道路交通法が施行される。改定項目には、75歳以上の高齢運転者への対策が含まれている。

 認知機能が低下したときに起こしやすいとされる違反行為を行った場合、ないし3年に1度の更新時、行われる認知機能検査で、第1分類(認知症の恐れあり)とされると、公安委員会は、臨時適性検査(公安委員会の指定する専門医による診断)を行うか、医師の診断書の提出を命じることができるという規定が新設される。

 しかし、日本精神神経学会によると、この規定には大きな問題があるという。

 そもそも認知症と危険な運転との因果関係は明らかではない。「認知症であっても運転能力が残存しているのであれば、それを奪うことは不当なことだ」と、同学会は述べている。

 高齢者の交通事故が多数報道されているが、若年運転者の事故も少なくない。報道されている事例だけでも認知症との関連が疑われているものは一部に過ぎない。

 「高齢になれば認知機能が低下することは事実であり、それに合わせた対策が必要だが、それを認知症であるか否かの診断に一括して解決できるとすることは誤りだ」と述べている。
高齢者の生活をサポート 安全性も必要
 特に地方では、運転を奪われることによって生活に困窮する高齢者が多数いる。重症な認知症を有する運転者の家族に対して具体的なサポートを提示するものでないと、困惑している家族は救われない。

 また、認知症の有無を診断する医師の確保がなされていない。こうした診断が必要とされるのは、「改正試案」の説明によっても2013年中で3万人以上に及んでおり、年間5万人、6万人といった試算も出ている。

 とうてい公安委員会の指定する専門医のみで対応できる数ではない。同学会は、かかりつけ医用の診断書様式の検討も含め警察庁と交渉を重ねているが、この診断に対応できる体制の整備について十分な対策はされていないという。

 また、地域の認知症医療を専門に掲げる医療機関は、殺到する診断書希望者の対応に追われ、ただでさえ患者数の爆発的な増大に直面している困窮をさらに深めることになり、地域の医療や保健・福祉の崩壊を招きかねない。

 日本老年精神医学会は「改正道路交通法施行に関する提言」を提出し、厚労省などの関係省庁、老年医学専門家、有識者などによる検討会を立ちあげ、交通安全と高齢者の生活に資する施策を採用するよう要望している。

日本精神神経学会
日本神経精神薬理学会
日本うつ病学会
日本臨床精神神経薬理学会
(Terahata)
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