ニュース

タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が

 タバコを吸う習慣のあった人は、認知症の発症リスクが高いことが、日本の約3万3,000人を調査した研究で明らかになった。

 タバコを吸っている人は、歯を失うリスクが高く、歯の喪失が認知症のリスク上昇につながっている可能性がある。

 禁煙に取り組むことで、歯の喪失を予防でき、さらには認知症などの予防にもつながる。

禁煙は認知症の予防にも役立つ

 5月には「世界禁煙デー」と「禁煙週間」が、6月には「歯と口の健康週間」がある。禁煙は、歯の寿命を延ばし、健康増進につながるだけでなく、認知症の予防にも役立つことが新しい研究で明らかになった。

 喫煙習慣のあった人は、認知症のリスクが1.18倍高いことが、日本の約3万3,000人の高齢者を対象とした9年間の調査で明らかになった。この関連の20%は喫煙により歯を失うことにより説明できるという。

 タバコを吸う人は禁煙に取り組むことで、歯の喪失を予防でき、さらには認知症などの予防にもつながる可能性がある。

歯の喪失は認知症リスクの上昇につながる

 歯数の少ない人は、認知症のリスクをはじめ、さまざまな全身疾患のリスクが高くなることが知られている。歯を失う主な原因はむし歯と歯周病であり、これらのリスクは、フッ化物を配合した歯磨剤を使った歯みがき、砂糖などの糖質をとりすぎないなどの習慣により低下できる。

 さらには、タバコを吸っている人は、吸わない人に比べて歯を失うリスクが高いことが分かっている。タバコに含まれるニコチンなどの毒素が、歯周病やむし歯が進行しやすい環境をつくるのが原因だ。禁煙により、喫煙によるそうしたダメージを減らすことができる。

 東北大学はこのほど、喫煙習慣による歯の喪失は、認知症のリスク上昇につながることを、長期追跡研究により明らかにした。研究グループは今回、約3万3,000人の65歳以上の高齢者を対象に、9年間の追跡調査を行った。

 その結果、喫煙習慣のあった人は、喫煙習慣のない人に比べて、認知症のリスクが1.18倍高いことを確かめた。さらに、この関連の20%は喫煙により歯を失うことにより説明できるという。

 「喫煙による歯の喪失は、認知症リスクの上昇につながるメカニズムが、長期の追跡調査により分かりました。歯科疾患予防としてのタバコ対策は、歯の喪失による全身疾患のリスク上昇を予防する上でも重要と考えられます」と、研究者は述べている。

タバコを吸っている人は歯を失うリスクが高い

 むし歯や歯周病のリスク要因に対処し、歯の喪失を予防すると、全身の健康状態も維持できると考えられているが、実際に特定のリスク要因への介入が、歯の喪失や全身疾患の予防につながることを、長期間調べた研究はこれまでなかった。

 そこで研究グループは今回、日本全国の高齢者20万人を対象とした大規模研究である「日本老年学的評価研究(JAGES)」に参加した65歳以上の高齢者を対象に、9年間追跡して調査した。

 2010年時点での喫煙状況と、2013年時点での歯数を調査し、2013~2019年の認知症の発症の有無との関連を調べた。

 その結果、認知症の発症率は、喫煙習慣のあった人・歯数の少ない人で高いことが明らかになった。因果媒介分析により分析した結果、喫煙習慣のあった人では認知症のリスクが1.18倍高かった。対象者3万2,986人での認知症の発症率は、100人年あたり2.1だった。

 喫煙と認知症の発症との関連について、約20%は[喫煙 → 歯の喪失 → 認知症発症]という経路で説明されることも分かった。

禁煙すれば自分の歯を守れて、認知症予防にも

 「本研究から、喫煙による歯の喪失は、認知症のリスク上昇につながるというメカニズムを、個人を長期追跡した調査研究により示しました」と、研究者は述べている。

 「歯周病をはじめとする歯科疾患の予防には、タバコ対策は有効です。本研究結果から、タバコ対策により、歯の喪失を予防することは、その後の全身疾患の予防にもつながる可能性が示唆されました」。

 「歯科医院での禁煙指導・禁煙治療を推進するような仕組み作りが、歯科疾患の予防・治療だけでなく、その後の全身疾患の予防にもつながる可能性があります」としている。

喫煙による歯の喪失は認知症のリスク上昇につながる
たばこ対策により歯の喪失を予防することが、その後の全身疾患の予防にもつながる可能性が示された

出典:東北大学、2024年

東北大学大学院歯学研究科
Tooth loss mediates the association between smoking and an increased risk of dementia among older adults: The JAGES prospective cohort study (2024年2月7日 Journal of Clinical Periodontology)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶