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「心が健康な人」を増やす・支えていくことが産業保健師ならではのメンタルヘルス事業の心得【産保PC第3回レポート】

 産業保健プロフェッショナルカンファレンス(主催:保健指導リソースガイド)の第3回が、11月17日に東京都中央区のベルサール八重洲で開催されました。今回のテーマは「産業保健師ならではのメンタルヘルス事業の進め方」で、事業所、健康保険組合、健診機関に勤める20代の産業保健師20名が参加しました。

 ストレスチェック制度がはじまって以来、注目が集まっている「メンタルヘルス」。その中で、保健師がストレスチェックからメンタルヘルス事業までどのように関わっていけばいいのか? グループワークによって「産業保健師ならではのメンタルヘルス事業」を考えていきました。

「メンタルヘルス」 言葉の見方を変えると産業保健師のやることがわかる

 今回のグループワークも、これまで同じく村田陽子さん((有)ビーイングサポート・マナ代表、保健師)、亀ヶ谷律子さん(HSプランニング代表、保健師)、冨山紀代美さん(デパート健康保険組合、保健師)の3名にサポートいただきました。

 最初のグループワークでは、参加者同士の自己紹介後、2つの「連想ゲーム」を行いました。

 1つめの「連想ゲーム」は、1つめはメンタルヘルスと聞いて連想するものを3つあげること。各グループより「ストレスチェック、セルフケア、ラインケア、復職、うつ、カウンセリング、長時間労働」といった言葉が出てきました。「ストレスチェック」は全グループがあげていました。

 2つめの「連想ゲーム」は、"心"がつく漢字(りっしんべん含む)を12個考え、出てきた漢字を分類するものです。メンタルへスは日本語だと「心の健康」。メンタルヘルス事業は「心の健康」事業とも言えます。出てきた漢字は、「恋、恥、思、愛、悲、快、怖、忙」など、私たちの"心"に関係するものです。

 ここで1つめに考えた「メンタルヘルス」の連想ゲームで出てきた言葉と比べてみました。

 「メンタルヘルスは医療・病気観点から見ていませんか? 漢字から見た場合の方が広い観点から見ていて、感情や意志、状態を表していると思います。私たちがメンタルヘルスをやるときに、メンタルヘルスの何をするかではなくて、どういう人たちをつくっていきたいのか? どういう人たちになってほしいのか? という意味では『心の健康な人』になってほしいことにあります」(村田さん)

「心が健康な人」とは?

 では、みなさんが考えている「心が健康な人」とはどんな人でしょう?  普段、会話の中では、元気ではないことを、あの会社/あの人、病んでいるよね。心が健康な場合は、あの人元気だよね/ポジティブだよね、と表現します。「心が健康な人」について12個考えてみました。

 各グループが考えた主な回答は・・・
 ▶他の人を頼れる人 ▶喜怒哀楽を感じられる人 ▶心に余裕がある人
 ▶恋をしている人 ▶やりがいを持っている人

 「このような人を増やすのがメンタルヘルス事業の目的です。いつも心が元気とは限りません。喜怒哀楽、心は常に変動します。この変動を受け入れながら成長していく人を増やしていく、そんな元気な人をサポートするのが本来のメンタルへスだと思います」(村田さん)

 ストレスチェック、うつ予防はしなくてはいけませんが、これがメンタルヘルス事業の目的ではありません。「心が健康な人」を増やすことが大切です。「心が健康な人」を増やせば、会社は元気に。会社が元気だと社会が明るくなるはずです。

健康相談ロールプレイング 関わり方の違いを感じる

 WHOが示す健康の定義「心・体・社会」。この3つがまとまって健康(ヘルス)と言います。例えば、ストレスがかかると、心に反応する人や体に反応する人、人間関係に歪みが出る人など、人それぞれいます。メンタルヘルスをやろうとする場合、どれか1つをサポートするのではなく、その人が丸ごと健康になることをサポートすることが大事です。

 病気なり、何か問題点を探してなんとかしようというサポートと、人として丸ごと健康でいてほしいと思うサポート、何が違うのでしょうか? それは、日々の健康相談や健康教育の関わり方など、毎日の業務の中で実践できると言います。

 今回、(1)何か問題探しをする健康相談、(2)健康になってほしい、前向きに生きてほしいという想いを持ってする健康相談、2種類の関わり方がどんな風に違うか実演を見てもらいました。

健康相談ロールプレイング
 ▶保健師:村田さん
 ▶相談者:若山さん(保健指導リソースガイド 編集部)

 ▶設 定:長時間残業での相談
 ▶前半のアプローチ:病気はないだろうか?問題はないだろうか?
 ▶後半のアプローチ:前向きに仕事、健康に過ごしてほしいな

前半のアプローチ:病気はないだろうか?問題はないだろうか?

村田(以下、村):こんにちは。
若山(以下、若):こんにちは。
村:長時間残業ということで総務の方から言われ、来ていただきましたが、1週間でどれくらい働いていますか?
若:1日の残業は、平均で4~5時間です。
村:何時くらいまで会社にいますか?
若:大体22時くらいまでですね。
村:では通勤はどれくらいの時間かかっていますか?
若:約30分です。
村:ということは22時30分くらいに帰っている感じですか?
若:いや、帰っていないですね。
村:帰らないというと?
若:遅くまで空いているカフェで、仕事やビジネス関連の本を読んでいます。
村:そうすると睡眠時間はどれくらいですか?
若:4~5時間くらいですかね。
村:平均睡眠時間が5時間を切ると、心臓・血管系の病気になりやすいと言われているのですが、これはご存知ですか?
若:一応、知っていますけども、特に健診の数値もオールAなので問題ないかと。
村:今は若いですし、そう言うんですけど、結構、急に来たりするので、5時間切ると集中力も途切れるし、昼間眠くなったりしませんか?
若:ありますね。ただ、1週間のうち1日は子どもと一緒に早く寝ちゃうので、そこですっきりしているつもりです。
村:その時はどれくらい寝られています?
若:10時間くらいかな。
村:それにしても、少ないので、もう少し寝られたら良いなと思います。食事はどうですか?ちゃんと3食とっていますか?
若:食事は3食とっていますね。
村:土日は休んでいますか?
若:仕事で学会取材や、ビジネス関連のセミナー・勉強会に参加したりしているので、どちらかはつぶれています。
村:土日も働いて、睡眠時間も短いので、体調を崩すことはありますか?
若:大きく崩れたりはしないですが、日常的にお腹がゆるいかなと。
村:胃腸の方に若干あるかなという感じですかね。
若:そうですね。
村:朝の寝起きは良いですか?
若:良いですね。
村:今のところは健診の結果も良いところですが、やはりもうちょっと睡眠時間を。運動は?
若:週一回は、ランニングしています。
村:とはいえ、長時間労働となっているので、将来どうなるかわからないので、今後のことを考えて睡眠時間をもっととってください。
若:はい。。。

後半のアプローチ:前向きに仕事、健康に過ごしてほしいな

村:こんにちは。長時間残業ということで総務の方から言われ、来ていただきましたが、若山さん自身はどう感じています?
若:特に、長いとは感じていません。
村:今、何時くらいまで?
若:22時くらいまで、会社にいますね。
村:22時までいるけど、自分では長時間、仕事している感じではない?
若:夜の方が、仕事が捗る時間なので。就業時間以降は、音楽を聴きながら原稿書いたり、新しい企画を考えたりしています。
村:その時間、18~22時は、仕事が捗る楽しいゴールデンタイムなんですね。
若:そうですね。電話も鳴らないし、誰も邪魔しに来ないので、集中できて楽しい時間かなと。
村:そうすると、時間は長いと言われるけど、自分ではそんなに仕事しているという感じではないんですね。
若:そうですね。
村:朝は何時からですか?
若:9時半からです。
村:昼間は?
若:1日中いることもあれば、出たり入ったりしています。
村:一番楽しい仕事って何ですか?
若:新しいことを考えているとき、企画しているときですかね。これだったらどれくらい儲けられるかな?とか。お金の勘定も含め。考えながら、色々と調べたりていると、どんどん良いものになっていく。
村:新しいことを考え、どんどん良いものになっていくときが一番楽しいってことですね。
若:そうですね。あとデザイン関係を考えているときは、夜、デザインの神様が降りてきて、突然、良いものが出来たりします。
村:そういうのも、閃くのが夜だし、新しいものを考えやすいのも夜なんですね。仕事もすごく楽しんでらっしゃいますし、長時間も苦になっていないみたいですし、ストレスは少ないんじゃないかなと思うんですけど、自分自身、ストレスは多っかたり、感じたりしますか?
若:いや、特に感じない方ですね。
村:ストレスは自分では感じない?
若:そうですね。
村:ストレスはゼロという人はなかなかいないですが、今はストレスを感じていないようですが、ストレスが出たときのストレスサインとかご存知ですか?
若:そうですね・・・何かあるとトイレが近くなるとか。腸の方に来やすいかなといった感じはあります。それがどういうタイミングかはわかりませんが、それかなと。
村:そういう体のサインがあり、わかっているということですね。そういうストレスサインは最近ありましたか?
若:仕事関係ではないですが、この間の休みの次の日にありましたね。
村:休みの時に何かあるとストレスサインが出ると。その日、何かありました?
若:確か、お義母さんが1日遊びに来て、いろいろと一緒に過ごしたり、エスコートした翌日でしたね。
村:仕事というよりも、プライベートの時間で、いつもとは違う環境だと、ストレスを感じやすいんですね。
若:そうですね。思い返すとそうなりますね。
村:長時間労働だけど、仕事も充実しているし、やりたいことも出来ているし、ストレスも少なく、自分では満足している状態ということでいいですかね。
若:そうですね。
村:プライベート等でストレスがあったときでも、ストレスサインを感じ、自分で調整できているとうことですね。
若:そうですね。
村:今の仕事スタイルや生活スタイルは、かなり満足している?
若:そうですね。
村:であれば、続けていただきたいですし、もし、続けるうちに、さっきのようなストレスサインが増えてくるとか、あるいは、今までと少し違うなぁといったことを感じるようでしたら、時々声をかけていただき、こうやったらストレス解消できたとか報告してくれたらなぁと思います。是非、このまま継続して頑張っていただきたいなと思います。
若:はい!

前半と後半どんな違いがあったか?
▶前半
・事務的な質問をしていた印象、聞かれていることに答えているだけ、怒られて終わった感じ。

 「前半のアプローチは、一生懸命やってもらうことを探している、でも見つからないから睡眠に結論を出すしかない。応援者にもなってないし、問題点、やるべきことも見つけられなかった」(村田さん)

▶後半
・相手に興味がもっている、背景を聞こうとしていた、問いかける、自分の言葉で答えてもらおうとしていた。そのままでいい、何かあったら相談にきてという味方感。

 「後半のアプローチも、問題点、やるべきことは見つからなかったけど、この仕事スタイルがいいのかを自身に考えてほしいと思った。ダメな時以外にも上手くいったときも報告に来てほしいことを伝えた」(村田さん)

 メンタルヘルス・健康相談のとき、その人の問題を探して何とかさせようではなく、その人のいつも味方・応援者でいることが大切です。しかし、それは特別なことをすることではありません。健康相談・健康教育の中でおこなっていけることです。言われたことを言われた通りやるのではなく、対象者の人が本当に元気になってもらうため、パフォーマンスが上がるために自分は何ができるかを考え接することが重要といいます。

 また、保健師として、健康な時に健康な人の話を聞けるのはとても大事なスキルと言います。「健康な時に応援できれば信頼関係を構築できる。これができれば落ち込んだ時にも相談に来てくれ、うつ病になっても来てくれる。本音の話しができる。病気を探すだけでなくポジティブな面も探してほしい」(村田さん)

 メンタルヘルスといって事業に振り回されるのではなく、途中であげた「心が健康な人」をつくっていく、支えていく仕事をするという想いを持って日々取組んでもらいたいとエールを送りました。

 今回の参加者の皆さま、遅い時間までありがとうございました。次回、第4回は、2018年2月中旬~下旬の予定です。日程や内容の詳細が決まりましたら、WEBサイトやメールマガジンでお知らせしていきます。

【当日の軽食】

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 産業保健プロフェッショナルカンファレンスは、若手の産業保健師が将来へ向けキャリアアップするために必要な知識や考え方、技術を習得できる場を提供するプロジェクトです。保健指導リソースガイドとウェルネス・コミュニケーションズ(株)が協力し、発足させました。
 年4~5回の参加型イベントの開催とWEBによる情報発信、業務に役立つ資料・ツール提供など、年間を通じて産業保健師の「スキルアップ、キャリア形成、ネットワーク」をサポートしていきます。

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