ニュース

高カフェインの「エナジードリンク」で健康被害が 摂取の制限を検討

 「エナジードリンク」の飲み過ぎは、肥満、2型糖尿病、血圧上昇、肥満や腎障害などの深刻な健康被害を引き起こすおそれがあり、とくに思春期前の子供では危険性があるので、摂取の制限を検討する必要があるという研究が発表された。
エナジードリンクの市場は拡大している
 エナジードリンクの市場は世界規模で拡大を続けている。そのため、エナジードリンクの副作用について検討する必要があり、広告宣伝で謳われている内容や、公衆衛生で考えられる影響などを検討する必要があるという研究が発表された。研究は専門誌「Frontiers in Public Health」に発表された。

 ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームによると、エナジードリンクは健康に対する有害性が高く、とくに子供や若年の成人が健康被害を受けるおそれがあるという。思春期以前の子供に対しては、エナジードリンクの摂取制限を行うべきで、カフェイン含有量の上限規制も検討する必要があるとしている。

 エナジードリンク産業は過去20年間で拡大しており、米国の市場規模は1兆円を超えている。企業はこれらの飲料を健康的なイメージと結び付けて宣伝しており、エネルギーやスタミナ、運動パーフォーマンスや集中力の向上などを印象付けようとしている。

 しかし、注意しなければならないのは、エナジードリンクに含まれる栄養成分は健康に悪影響をもたらす可能性があり、安全性について十分に検証されていないことだ。
2本で1日のカフェイン摂取量の上限を超えることも
 エナジードリンクの多くは、清涼飲料水にカフェイン、ビタミン、アミノ酸などを含有した炭酸飲料で、とくに多く含まれるのは糖分とカフェインだ。

 欧州連合(EU)の欧州食品安全機関(EFSA)は、健康を維持するために望ましいカフェイン摂取量について、「成人では1日400mg未満に抑え、1回の摂取量が200mgを超えないようにするべき」とする提言を公表している。

 国内で販売しているエナジードリンク1本のカフェイン含有量は100~200mg程度だ。中には、1缶(200mL)あたり680mgのカフェインを含んでいるものがあり、これは通常のコーヒー(200mLあたり80mg)の8倍にあたる量になる。
カフェインを摂り過ぎると副作用が
 カフェインには、中枢神経に働きかけ、眠気や疲労を抑え、運動機能を高める興奮作用や、骨格筋に働き、疲労感を抑え活動性を増大させる作用がある。

 また、カフェインは心臓の心筋に作用し、収縮力や拍出量を増加させたり、腎臓の血管を拡張させ、腎臓への血流量を増やし尿の生成を促す利尿作用がある。

 しかし、カフェインを大量に摂取すると、不眠症や神経症、心拍数の増加、血圧の上昇、不整脈、腎障害が引き起こされるおそれがあるという。

 また、エナジードリンクとアルコールを同時に摂ってしまうと、相乗的に危険性が高まることが懸念されるという。こうした飲み方でアルコールを摂取すると、アルコール単独よりもより消費量が多くなる傾向がある。

 エナジードリンクの作用により、アルコールによる酩酊感が隠されてしまい、結果としてより多くのアルコールを無意識に摂取してしまい、アルコールの急性中毒が引き起こされるおそれがある。
エナジードリンクを飲むと血糖値が上昇
 エナジードリンクの過剰な摂取が2型糖尿病の発症リスクを高めるという調査結果も発表されている。

 カナダのカルガリー大学の研究チームは、13~19歳の若年者20人を対象に、カフェインを含むエナジードリンクを摂取した後の血糖値およびインスリン抵抗性のデータを解析した。

 被験者をカフェインを含むエナジードリンクを摂取する群と、摂取しない群に分け、摂取後40分に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施した。このエナジードリンクは、ボトル容量が57mLで、糖類は含有していないが、208mgのカフェインを含んでいる。

 その結果、カフェイン含有のエナジードリンクを摂取した群では、カフェイン抜きの群に比べて血糖値が24.6%、インスリン値が26.4%上昇した。

 過剰なカフェイン摂取がアドレナリンなどの血糖値を高めるホルモン分泌を促し、インスリンの機能を妨げている可能性があるという。

 「エナジードリンクに含まれるカフェインがインスリン抵抗性を引き起こしていると考えられます。カフェインの血中半減期は4~6時間で、血糖値とインスリン値の上昇はかなりの時間続くことになります」と研究者は述べている。

 エナジードリンクはカフェインに含めて、糖分を多く含み、高カロリーのものが多い。「過剰なカフェインの摂取が、中枢神経系の刺激によるめまいや心拍数の増加、興奮、不眠症などの急性作用をもたらすことがあります。特に若年者の飲み過ぎには注意が必要です」と研究者は指摘している。

Serious health risks associated with energy drinks(Frontiers 2017年11月15日)
Health Effects and Public Health Concerns of Energy Drink Consumption in the United States: A Mini-Review(Frontiers in Public Health 2017年8月31日)
Energy drink consumption impairs oral glucose tolerance in adolescents: a randomized, double-blind, crossover pilot study(カルガリー大学 2015年12月7日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「栄養」に関するニュース

2023年08月28日
極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
2023年08月28日
カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
2023年08月28日
週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
2023年08月28日
高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月21日
朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
2023年08月21日
ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
2023年08月15日
スマホやゲーム機で遊ぶ時間が長いと睡眠障害に 子供の言語力や認知力の発達が低下 食習慣も大切
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年08月07日
【がん予防の経済効果】 がんのリスク要因を減らして1兆円超の経済的負担を軽減 生活スタイルや環境の改善が重要
2023年08月01日
肥満やメタボになりやすい生活習慣は子供のうちに身についている 子供の頃から保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶