ニュース
「ウォーキング」で重要なのは継続 少し歩いただけで健康効果を得られる
2017年11月29日

推奨以下のレベルのウォーキングであっても、習慣として続ければ、死亡率が低下し、健康に生きるために役立つことが、米国がん学会が実施した14万人対象の研究で明らかになった。
「ウォーキングは自由に、簡単に行える、もっとも実践的な運動です。もっともリスクが高いのは、運動をまったく行わないことです。時間がないので運動できないという言い訳は通用しません」と、研究者は述べている。
「ウォーキングは自由に、簡単に行える、もっとも実践的な運動です。もっともリスクが高いのは、運動をまったく行わないことです。時間がないので運動できないという言い訳は通用しません」と、研究者は述べている。
推奨よりも少ない量のウォーキングでも効果がある
ウォーキングは、もっとも広く行われている運動であり、2型糖尿病、心臓病、がんなどのリスクを低下させることが、過去の研究で明らかになっている。
米国がん学会は、中強度の運動を週に150分、あるいは活発な運動を週に75分行うことを奨励している。
中強度の運動とは時速4.8km程度のウォーキングに相当し、活発な運動とは心拍数が上昇し、呼吸が速くなり、うっすらと汗をかく程度の運動に相当する。
しかし、米国健康・栄養調査によると、成人の半数は最小限の運動しかしておらず、65~74歳の高齢者では運動習慣のある人は42%しかいない。
米国では2030年までに65歳以上の高齢者が2倍に増えることが予想されている。そうした人々のすべてに、運動ガイドラインが推奨する運動量をこなしてもらうのは難しい。
しかし新しい研究で、推奨よりも少ない運動量であっても、健康と長寿に十分に役立つことが明らかになった。
ウォーキングが死亡リスクを20%低下させる
発表されたのは、米国がん学会が実施しているコホート研究「がん予防研究-3」(CPS-3)に参加している13万9,255人(男性 6万2,178人、女性 7万7,077人)を対象とした研究の成果だ。
参加者のおよそ95%は、なんらかのウォーキングをしていた。また、半数の人はウォーキングが中強度から活発な運動の唯一の手段であると回答し、男性の5.8%、女性の6.6%はそうした運動をまったく行っていない回答した。
1999~2012年の13年間の追跡期間中に、男性2万4,688人、女性1万8,933人が死亡した。
週に2時間未満のウォーキングを行っている群と比べると、まったく運動をししない群では、死亡リスクが26%上昇した。
さらに、対照群の2倍にあたる週に2.5~5時間のウォーキングをしていた群では、全死亡のリスクが20%低下した。
調査では、ガイドラインで推奨されているレベルを下回るウォーキングであっても、死亡リスクを低下できることが判明した。
ウォーキングを習慣として行うことで、心疾患による死亡リスクが20%低下し、がんによる死亡リスクが9%低下することが判明した。
ウォーキングの効果がもっとも高いのは、肺炎やインフルエンザなど、呼吸器に関連する疾患の死亡リスクだった。高齢の人が週に6時間のウォーキングをすることで、そうした疾患による死亡リスクは35%低下した。
ウォーキングは、自由で、シンプルな運動

「時間がない」という言い訳は通用しない
「時間がないので、運動ができない」という言い訳はもう通用しない。できる範囲内で、生活の中で時間をみつけ、運動をすることを習慣化することが、病気のリスクを減らし、医療費を減らすことにつながる。ウォーキングの時間は1分延ばしただけでも効果を得られる。
ハーバード大学医学大学院の研究によると、週に2.5時間、つまり1日20分とちょっと歩くだけで、心疾患のリスクを30%低下できるという。ウォーキングなどの運動は2型糖尿病やがん、高血圧や高コレステロールのリスクも低下させ、認知症の予防にも効果的という報告もある。
活発なウォーキングを習慣としている女性は、肥満のリスクを5%低下できることも判明した。ウォーキングを習慣化することで、年間に11兆円(1,000億ドル)以上の医療費を削減できるという試算も行われている。
ウォーキングはストレス解消にも役立つ うつを軽減する効果も
ウォーキングはストレス解消にも役立ち、気分を明るくする作用もある。ウォーキングなどの運動をすることで、うつ症状を軽減できることが多くの研究で確かめられている。ウォーキングをすることで緊張が和らぎ、脳内で働く神経伝達物質のひとつである「エンドルフィン」の分泌も高める。鎮痛効果や気分の高揚・幸福感などが得られやすくなる。
ウォーキングがコミュニティのつながりを強めるという報告もある。多くの人が通りを歩くことで、近隣の犯罪率が低下し、地域経済が活性化することか社会学の研究で確かめられている。ウォーキングは、新しい人との出会いを生み、近隣の人々と交流するために手段にもなる。
夕食後に家族といっしょに外を歩いてみよう。子供たちと話すことで、コミュニケーションを促進し、家庭内の問題を軽減し、子供の発育にも好ましい影響があらわれる。
Walking in Relation to Mortality in a Large Prospective Cohort of Older U.S. Adults(American Journal of Preventive Medicine 2017年10月11日)Study: Even a Little Walking May Help You Live Longer(米国がん学会 2017年10月19日)
Walking for Health(ハーバード大学医学大学院 2017年10月24日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「運動」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月27日
- 女性の月経にともなう困難症状は運動習慣によって異なる 生活習慣に応じた対策・支援が必要
- 2025年05月26日
- AIとビッグデータを活用し保健指導を実施 糖尿病リスクが高い市民を保健師が支援 横須賀市とJMDC
- 2025年05月19日
- 中年期に運動量を増やすと認知症予防につながる 活発なウォーキングなど心拍数を上げる運動が効果的