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乳児には大人との身体接触が必要 社会的な絆を強め脳の発達に影響

 発達初期の乳児にとって、他者との身体接触を介した関わりが、社会的な絆を強め、乳児の心身の成長に重要であることが京都大学の研究で明らかになった。
体を触れられると乳児の脳活動に影響が
 京都大学は、大人と身体接触を介した/介さない関わりを行った場合の生後7ヵ月児の脳活動を計測し、他者に身体を触れられる経験が乳児の脳活動に影響を与えることを明らかにした。大人から身体に触れられた時によく笑顔をみせた乳児ほど、その単語を聞いた時に高い脳波活動を示すという。

 研究は、京都大学教育学研究科の明和政子教授、田中友香理研修員らの研究グループによるもので、科学誌「Developmental Cognitive Neuroscience」オンライン版に発表された。

 乳児は、日常的な他者との関わりの中で、大人から見つめられ、身体に触れられ、同時に話しかけられる。これほど多様な身体感覚(視覚や聴覚・触覚など)を介して他個体と関わる動物はヒトだけであり、こうした大人からの積極的な関わりは、子どもの学習の「足場づくり」となると考えられている。

 しかし、他者との相互作用において「触れられる」という触覚経験が、乳児の脳の活動にどのような影響を与えるかについては、よく分かっていない。

 そこで研究グループは、大人と乳児が遊ぶ場面での「身体接触(触覚)」と「音声(聴覚)」に着目。「身体接触をともないながら音声を聞く」経験が、乳児の脳活動にどのような影響をもたらすかを実証的に検討した。
体を触れられると乳児の脳波は活発に
 今回の調査には、生後7ヵ月児28名が参加。まず、成人の調査者と乳児が「くすぐり」で遊び(経験フェーズ)、その際、乳児は、(1)触覚-聴覚経験条件:乳児は他者に身体に直接触れられながら新奇単語(例:とぴとぴ)を5回聞く、(2)非触覚-聴覚経験条件:乳児は他者から直接身体に触れられることなく、(1)とは異なる新奇単語(例:べけべけ)を5回聞く、という2つの条件下で、単語を繰り返し聞く経験をした。

 (1)(2)は、ひとりの乳児に交互に行われ、経験フェーズが終了してから、乳児は経験フェーズで学習した単語を、スピーカーを通して繰り返し聞いた(実験フェーズ)。その時の乳児の脳波を計測し、事象関連電位(ERP)と周波数活動を解析した。

 その結果、「非触覚-聴覚経験条件」で学習した単語に比べ、「触覚-聴覚経験条件」で学習した単語を聞いた時、左側頭領域でより強いERPを示し、「触覚-聴覚経験条件」で学習した単語を聞いた時に左側頭のベータ周波数、前頭領域のシータ周波数でより強い活動を示した。

 これらの活動はそれぞれ、複数感覚統合、社会的刺激に対する予期を反映するものだという。

 また、経験フェーズでくすぐりに対してよく笑った乳児ほど、頭頂のERPの活動がより大きかった。
乳児期における養育者との身体接触の重要性を確認
 これらの研究成果から、他者から身体に触れられながら話しかけられる経験が、学習や予期に関わる乳児の脳活動を促進する可能性が示された。

 研究グループは、「発達初期のヒトの脳は、他者との身体を触れ合う関わりを通して、新しいことを効率的に学習できるしくみになっていると考えられる」と述べている。

 従来、乳児期における養育者との身体接触の重要性が、いわゆる「愛着」という概念的な表現で唱えられてきた。実際、大規模調査研究によると、乳児期の養育者と触れ合う機会の少なさが、長期的に子どもの認知や情動の発達に影響を与えるとされている。

 一方、ネグレクトなどの被虐待児やうつの母親に養育された子ども、長期間の母子分離の状況で育った早産児など、養育者と関わる機会が異質である子どもの情動・認知発達に与える影響が報告されている。

 他方、養育者の側については、早産児と母親の間で実施されるカンガルーケアや、産後うつの母親に対するタッチケア教育などが欧米を中心に実施されており、一定の効果があると報告されている。

 今回の研究は、それらを裏付けるもので、「今後は、養育者と乳児の関わりにおいてみられる身体接触の機能を、子ども側だけでなく、子どもと養育者の双方の身体に起こる生理・行動面の同期的変化から検討することも重要」としている。

京都大学大学院教育学研究科・教育学部
The integration of audio-tactile information is modulated by multimodal social interaction with physical contact in infancy(Developmental Cognitive Neuroscience 2017年12月9日)
[Terahata]

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