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働きながら「不妊治療」を受ける人へのサポート 仕事の両立支援が課題に
2018年04月04日

希望する妊娠・ 出産を実現するためには、育児休業制度などの仕事と育児の両立支援はもとより、不妊治療と仕事の両立支援も、重要な課題となっている。
厚生労働省の調査によると、不妊治療をしている人の16%が仕事の両立を諦めて離職したことがあるという。厚労省は対策に乗り出した。
厚生労働省の調査によると、不妊治療をしている人の16%が仕事の両立を諦めて離職したことがあるという。厚労省は対策に乗り出した。
不妊治療と仕事の「両立は難しい」という声が多数
厚生労働省は、不妊治療と仕事の両立に関するはじめての実態調査の結果を発表した。働いている男女2,060人と779の企業から回答を得たものだ。
不妊治療の経験者および治療中の人は全体の12%で、このうち「両立できず仕事を辞めた」「両立できず雇用形態を変えた」「両立できず治療をやめた」と回答した人が合わせて35%に上った。一方で、「両立している」と答えたのは53%だった。
不妊治療と仕事の両立を諦めて離職した人は16%、逆に治療をやめた人は11%で、雇用形態を変えた人は8%だった。
両立ができなかった理由は、「精神面で負担が大きい」(58%)がもっとも多く、「通院回数が多い」(54%)、「体調、体力面で負担が大きい」(51%)が続く。
また、「両立している」と答えた人であっても、その87%が「両立は難しい」と感じたことがあるという。働きながら不妊治療を続けることが容易ではないことが示された。

不妊治療の経済負担は大きい 不妊治療の助成
厚生労働省が今年1月に出した、不妊専門相談センターに関する調査報告書によると、医療機関によっても異なるが、人工授精には1回1万~3万円かかり、体外受精や顕微授精には1回20万円~70万円もかかる場合がある。
全国の自治体で実施されている国の特定不妊治療(体外受精と顕微授精)の助成は、法律婚をしている夫婦が対象で、治療を受ける時に妻の年齢が43歳未満であることが必要。その夫婦が、特定不妊治療を受けた場合、1回あたり15万円、初回の治療に限り30万円の助成が受けられる。
また、地方自治体独自の制度がある場合もある。東京都の場合、上限を5万円とし、妻の年齢が35歳未満の夫婦といった条件で助成している。保険医療機関で受けた不妊検査費と、薬物療法や人工授精などの一般不妊治療費を夫婦1組につき1回限り助成する。
体外受精、顕微授精を行う場合、特に女性は頻繁な通院が必要となり、排卵周期に合わせた通院が求められるため、前もって治療の予定を決めることは困難だ。
また、治療は身体的・精神的な負担を伴い、ホルモン刺激療法などの影響で体調不良などが発生することがある。
不妊治療 企業の対策は遅れている
不妊治療は、当人のプライバシーに属することだ。職場に相談や報告をした場合でも、当人の意思に反して職場全体に知れ渡ってしまうことなどが起こらないよう、プライバシーの保護に配慮する必要がある。
企業を対象にした調査では、67%が不妊治療中の従業員を把握していなかった。厚労省は「職場で知られたくないという人が多く、潜在化しているのではないか」と分析する。
また、職場での従業員の意に反する性的な言動(性的な事実関係を尋ねる、性的な冗談やからかいなど)は、セクシュアルハラスメントになる可能性がある。妊娠・出産・育児休業・介護休業などに関するハラスメントも少なくない
各都道府県、指定都市、中核市が設置している「不妊専門相談センター」では、不妊に悩む夫婦に対し、不妊に関する医学的・専門的な相談や不妊による心の悩み等について医師・助産師等の専門家が相談に対応したり、診療機関ごとの不妊治療の実施状況などに関する情報提供を行っている。
従業員の不妊治療をサポートする企業の取組み
不妊治療は、1回の治療にかかる時間は治療内容によりさまざまだが、頻繁に通院する必要があるものもある。
このため、▼通院に必要な時間だけ休暇を取ることができるよう、年次有給休暇を時間単位で取得できるようにする、▼不妊治療目的で利用できるフレックスタイム制を導入して、出退勤時刻の調整ができるようにするなど、柔軟な働き方ができるようにすることが必要となる。
こうした仕事との両立をしやすくする取組みのほか、不妊治療のための休暇(休職)制度を設けたり、治療費の補助や融資を行うなど、独自の取組を行っている企業も出てきた。
しかし現状では、不妊治療を受けている従業員を支援する制度を実施している企業の割合は、わずか9%にとどまっている。

「不妊治療連絡カード」を発行

リーフレット「仕事と不妊治療の両立支援のために~働きながら不妊治療を受ける従業員へのご理解をお願いします~」(厚生労働省)
「不妊治療連絡カード」(厚生労働省)
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