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魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月17日

魚を週に1~2回食べると、「大動脈疾患」(大動脈解離・大動脈瘤)を発症する危険性が低下することが、国立がん研究センターと筑波大学の研究で明らかになった。魚を食べる頻度は月に1~2回でも効果があるという。一方で、魚をほとんど食べないと、大動脈疾患による死亡リスクは上昇する。
魚を食べない人で大動脈疾患リスクが上昇
日本人36万人以上を対象とした研究で、魚をほとんど食べない人では、大動脈疾患(大動脈解離・大動脈瘤)による死亡リスクが増加することが世界ではじめて明らかになった。
研究は、国立がん研究センター社会と健康研究センターの井上真奈美部長、筑波大学医学医療系の山岸良匡准教授らの研究グループによるもので、詳細は欧州専門誌「Clinical Nutrition」オンライン版に掲載された。
研究グループは、日本の8つの大規模コホート研究から36万人以上を統合した解析を行い、質問紙によって調査した魚摂取頻度と大動脈疾患死亡リスクとの関連を検討した。
解析の対象となったのは、国立がん研究センターによる多目的コホート研究「JPHC-I」(4万7,753人)、「JPHC-II」(5万9,502人)、「JACC研究」(9万791人)、「宮城県コホート研究」(4万2,151人)、「大崎国保コホート研究」(4万3,635人)、「三府県宮城コホート研究」(2万4,038人)、「三府県愛知コホート研究」(2万8,098人)、「三府県大阪コホート研究」(3万80人)。
関連情報
死亡リスクが高い大動脈疾患
大動脈は、体の真ん中を通り、心臓に直接つながっているもっとも太い動脈。大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離)は、かつては日本での死亡率は多くなかったが、高齢化に伴い増加している。
動脈硬化などで弱くなった大動脈にこぶ状の膨らみができるのが大動脈瘤。大動脈の内膜に傷ができ、中膜に血液が入り込んで長軸方向に裂けるのが大動脈解離。
大動脈瘤が破裂したり、大動脈が裂けたりすると、医療が進んだ現代でも急速に死に至ることが多く、その予防が重要だ。
この大動脈瘤は心筋梗塞と同様に増えている。どちらも、動脈硬化が原因という共通点がある。
不飽和脂肪酸を豊富に含む魚を食べている人では心筋梗塞や脳梗塞が少ないという報告がある。魚を多く食べる食事スタイルは、大動脈疾患の予防にもつながると考えられるが、それを証明する科学的エビデンスはほとんどなかった。
そこで研究グループは、日本人における魚摂取頻度と大動脈疾患死亡リスクとの関連を分析した。
魚をほとんど食べない人で大動脈疾患死亡が2倍に上昇
それぞれのコホートで使用しているアンケート調査結果から、魚摂取頻度を、▽ほとんど食べない、▽月1~2回、▽週1~2回、▽週3~4回、▽ほとんど毎日――の5つの群に分けた。
その結果、魚摂取が週に1~2回の群と比べ、魚をほとんど食べない群の、大動脈疾患死亡多変量調整ハザード比は1.9であり、統計学的にも有意な関連が認められた。
これは、魚をほとんど食べない人では、大動脈疾患死亡が約2倍に上昇することを意味する。
魚を週1~2回食べる群と比べ、ほとんど食べない群では、大動脈解離で死亡するリスクが2.5倍(95%信頼区間1.1~5.5)、大動脈瘤で2.0倍(同0.9~2.1)に上昇した。
興味深いのは、魚を食べる頻度が月に1~2回であっても、大動脈解離で死亡するリスクの上昇しなかったことだ。大動脈瘤では1.9倍(同0.9~4.0)とリスクが上昇する傾向がみられた。
「魚をほとんど食べないような非常に魚の摂取頻度が少ない場合に、大動脈疾患で死亡するリスクは上昇します。魚を多く食べると、心筋梗塞のリスクが低下することも知られています。循環器疾患予防の観点から、魚の摂取が極端に少なくならないよう気をつけると良いです」と、研究者は述べている。


筑波大学医学医療系
Fish intake and risk of mortality due to aortic dissection and aneurysm: A pooled analysis of the Japan Cohort Consortium(Clinical Nutrition 2018年8月14日)
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