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妊娠中の長時間労働や夜勤が健康リスクに 全国の約10万人の女性を調査 エコチル調査
2019年11月06日
妊娠中も働く女性が増えている。妊娠中にも長時間働き、夜勤もしている女性では、母子ともに健康リスクが上昇するという調査結果を、名古屋市立大学が発表した。全国の約10万人の妊婦を対象とした「エコチル調査」で明らかになった。
全国の約10万人の妊婦を調査
妊娠中も働く女性が増える中、名古屋市立大学は、全国の約10万人の妊婦を対象とした、妊娠中の労働時間および夜勤回数の組み合わせと出産までの母子の健康状態などについての調査結果を発表した。
妊娠前期に長時間働き、夜勤もしている女性は、妊娠高血圧症候群などの影響が多かった。一方で、夜勤なしで働いている女性は、そうでない女性に比べ、妊娠糖尿病などや羊水混濁が少ないことが判明した。研究グループは、働く女性が勤務パターンから生じるリスクを自覚するとともに、ワークライフ・バランスの改善や母子保健の向上に向けた社会整備も必要だとしている。
「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、2010年度より全国10万組の親子を対象に始まった大規模長期追跡調査だ。子どもの健康と成長に影響を与える胎児期から小児期の環境要因を明らかにするために、調査対象地域で生まれた子どもが13歳になるまで追跡している。
全国15地区の大学に設置されたユニットセンターを調査拠点として、国立環境研究所、国立成育医療研究センター、環境省と協働し、調査を実施している。
関連情報
妊娠を望む女性の勤務パターンと健康について配慮が必要
妊娠中に働く女性は増えており、労働が妊娠の継続や母子の健康にどのように影響するのかは重要なテーマだ。長時間労働や交替制勤務が妊娠に悪影響を及ぼすという報告がこれまでにあるが、労働時間や夜勤の影響については不明だった。
そこで研究チームは、エコチル調査に参加した妊婦を対象に、妊娠中の週労働時間および夜勤回数の組み合わせと出産までの母子の健康状態および分娩様式との関連を調べた。
9万9,744名の妊婦のデータを解析した結果、以下のことが判明した。
・ 妊娠中後期に週あたり1時間以上働く女性は、全体の52.8%(5万560人)で、妊娠に就いていた主な仕事は、事務従事者(16.9%)、看護師(10.6%)、接客・給仕(8.6%)だった。
・ 妊娠中に就労している女性では、非就労者に比べ切迫流産・切迫早産の診断が多くみられた。しかし、実際の早産は、月あたりの夜勤回数が1~5回かつ週あたり労働時間が1~35時間の人、すなわち非正規雇用者が多い集団でのみ増えていた。
この集団では帝王切開を受ける人も非就労者に比べ多くみられた。1日あたりの労働時間(平均6.8時間)が、週あたり労働時間が同じで夜勤回数が異なる集団に比べ長めであることがひとつの理由かもしれないと研究チームは推測している。
・ 妊娠中後期に働いている人の中では、週36時間以上の勤務で、かつ夜勤回数が月1~5回の人で軽症の妊娠高血圧症候群が多く、とくに週あたり労働時間が46時間以上ではリスクが2倍になっていた。週あたり36時間以上働く人では、夜勤がなくても、吸引・鉗子分娩が多い傾向がみられた。
・ 妊娠初期に週あたり46時間以上働き、かつ月あたり1~6回の夜勤を行う人の赤ちゃんには、胎児発育不全が非就労者に比べ3割多いことも判明した。夜勤がないと妊娠糖尿病や羊水混濁が少ない結果になった。
一方で、夜勤回数が多い女性(妊娠初期は月7回以上、中後期は月6回以上)の間では、労働時間の長短にかかわらず、母子の健康状態に影響はみられなかった。交代制勤務労働者として代表的職種である看護職は、他職種より良好な健康管理を受けていることなどが背景として考えられる。
「妊娠しようとする女性は、勤務パターンに関連するリスクを自覚し、健康管理をすることが望ましい。また、夜勤のあるパートタイム職における健康管理の実態について、追跡して調査する必要がある」と、研究チームは指摘している。
名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学名古屋市立大学 エコチル愛知ユニットセンター 母と子どもの健康・環境総合研究センター
Effects of long working hours and shift work during pregnancy on obstetric and perinatal outcomes: a large prospective cohort study - Japan Environment and Children's Study(Birth 2019年10月31日)
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