オピニオン/保健指導あれこれ
働く女性と乳がん -がん治療と乳房再建のいま

No.2 働きながら、乳がんの治療はできる?

セルポートクリニック横浜院長、 杏林大学形成外科非常勤講師
辻 直子
 前回は急激に増加する乳がんの罹患率についてお話いたしました。
 乳がん発症のピークは50歳代ですが、最近では30歳代や40歳代の乳がん患者も珍しくありません。それはまさに、働き盛り世代、子育て世代を直撃します。

 働く女性の増加
 総務省統計よると、女性の就業率は15-64歳全体で65.5%と過去最高を記録しています(2015年10月)。特に20代後半から30歳代で上昇しています。





総務省統計局 年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率より作成

 これは結婚しても共働きをする女性や、家事・育児と仕事を両立させて頑張っている女性が増加していることを表しています。そのような女性が乳がんの宣告を受けた時、自分の体の心配ももちろんありますが、「仕事続けられるかしら」「治療や入院の間、子供の世話をどうしよう」と考えてしまう女性も少なくないのではないでしょうか。

 ―手術前― 乳がん治療と仕事
 実際の乳がん治療ではどのくらい通院や入院が必要なのでしょうか。

 まず、乳がんの診断と手術までは、ほとんどが通院での検査になります。大体はマンモグラフィーとエコーの後に針生検の検査をし(ここまで通院3-5回)、乳がんの診断が下った後はさらに転移の有無やがんの拡がりを調べていきます。MRIや腹部エコー、CTなどの検査を外来で行った後に手術の予定が組まれます(さらに通院2-3回)。乳がんの手術は体表の手術ですので、乳房温存でも乳房切除(全摘)でも手術翌日には歩行や飲食が可能で、3日~7日程度で退院となります。その間は仕事を休まなくてはなりませんが、術後はデスクワークなどの軽労働であればすぐに再開できます。

 ―手術後― 乳がん治療と仕事
 手術が終わったらそのあとに、必要があれば放射線照射や抗癌剤治療、ホルモン療法などが行われます。大体の方針は手術の病理結果が出てからになりますので、術後約1ヶ月後から併用療法の開始です。ホルモン療法は基本的には内服治療と外来での注射ですので3ヶ月に1回程度の通院が必要ですが、あまり仕事への影響はないとみていいでしょう。

写真

がんと仕事に関する支援ツールも多くあります。
参照:
がんと仕事のQ&A
国立がん研究センター
 放射線照射は1ヶ月間、平日は毎日照射のために通院が必要になります。1回の所要時間は30分程度と短いです。抗がん剤の場合はたいてい3週間に1回程度、3ヶ月から6ヶ月くらいの通院となります。こちらは点滴が2時間くらいかかることもあります。

 どちらも定期的な通院が必要なため、仕事の都合をつけるのが大変な場合もあるでしょう。手術や通院のために退職や、非正規雇用へ変更する患者さんもいます。しかしもちろん、仕事をつづけながらこれらの治療を受けている方も多くいらっしゃいます。職場への病状の報告や勤務時間の変更などは必要となりますが、計画的に進められますし、丸1日つぶれるわけではないので、曜日や時間帯を選べば何とかやり過ごせるでしょう。

 周囲のサポートが大切
 もちろん、放射線照射や抗癌剤治療の副作用もありますし、ホルモン療法も更年期障害のような症状が出ますので、治療期間中はこれまでと全く同じようなパフォーマンスで働くことは難しいかもしれません。病院が遠い場合は通院のための往復時間もかかることもあり、治療中に気分が落ち込むこともあるでしょう。そんなときにまず大切なのは周囲の理解とサポートです。家族や友人などが一般的ですが、医療的なことや治療の内容の相談は病院の相談室や保健師のほうが話しやすいこともあります。また、がん患者会などで情報交換することも不安を軽減する良い方法です。

 仕事を続けながらの治療は大変なことも多いですが、逆に仕事をしているから気がまぎれたり、術後のリハビリになったりすることもあります。そして、治療費もかかることから仕事を続けていた方が経済的にも安心です。本当にスケジュールや体調の調整が大変なのは数ヶ月です。無理せず、計画的に、乳がんをうまく克服して行けるように職場や病院などの社会としてもサポートしていきたいものです。

 なお、働く女性の乳がん治療を応援するために夜間の抗癌剤治療外来を行っている病院もあるようです。仕事が終わってから無理なく治療が受けられるようにと配慮されているのですね。こういった病院側のサポートもこれから少しずつ増えていくのではないでしょうか。

 次回からは乳房再建の話になりますが、乳房再建はさらに、自分の都合に合わせた治療や方法が選択できます。気持ちも前向きになる乳房再建、是非より多くの方に知ってもらいたいと思います。

「働く人のがん対策」に関するニュース

2018年09月11日
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018年08月29日
「第4回がん撲滅サミット」を11月18日(日)に東京ビッグサイトで開催
2018年07月26日
東京第1期 「ブレスト・アーティスト養成スクール」開講日程のお知らせ
2018年06月27日
「グループ運動」は継続するのに効果的 「プラス・テン」で運動促進
2018年06月27日
乳がん患者の不安や恐怖を緩和 乳がんサバイバーを支援するアプリを開発
2018年06月20日
「老年医学推進5ヵ年計画」を学会が発表 人生100年時代の高齢者医療
2018年06月20日
低脂肪の食事で女性の「乳がん」リスクが低下 死亡リスクも低下
2018年06月13日
「早期乳がん」の70%は化学療法は不必要 乳がん治療に明るい選択肢
2018年06月13日
「女性特有の遺伝子」を発見 バストの大きさ、月経痛の重さに関連
2018年06月06日
「笑い」が糖尿病やメタボ、がんを改善 よく笑うと健康効果を得られる

最新ニュース

2018年09月20日
健やか親子21全国大会事前申込み受付中(10/12日(金)〆切)
2018年09月19日
日本人の28%が65歳以上 女性の高齢者は2000万人超 働く高齢者も最多
2018年09月19日
「糖尿病腎症」のリスクは糖尿病予備群の段階で上昇 検査で早期発見を
2018年09月19日
早期乳児の腸管内ビフィズス菌 母親の分娩時の抗菌薬投与で減少
2018年09月18日
男性の同性間性的接触によるA型肝炎患者が激増
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(1) 糖尿病・高血圧・コレステロール 多くの項目で目標未達成
2018年09月14日
2017年国民健康・栄養調査(2) 食事エネルギー量は60歳代が最多 外出しない高齢男性が低栄養に
2018年09月13日
【9/10~9/16は自殺予防週間】SNS(LINE・チャット)相談できます!
2018年09月12日
【申込開始】あらゆる世代の健康支援に役立つ一冊 保健指導用・健康事業用「教材・備品カタログ2019年版」 
2018年09月11日
肥満でなくても「高コレステロール」に注意 日本人を30年調査 滋賀医大
2018年09月11日
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018年09月11日
「うつ病対策」が職場のメンタルヘルスを向上させる 日本の対策は最下位
2018年09月11日
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果
2018年09月07日
「運動不足」が世界に蔓延 日本でも3人に1人が運動不足 WHOが報告
2018年09月07日
【母子保健担当者】災害時の母子保健対策に関するマニュアル等について
2018年09月06日
「保健師の活動基盤に関する基礎調査」を開始 日本看護協会
2018年09月06日
糖尿病患者さんに向けて「血糖トレンド」啓発キャンペーンを始動
2018年09月05日
高齢者のフレイル対策は栄養指導の大きな課題 日本栄養士会が全国大会
2018年09月05日
「スマートミール」認証がはじまる バランスの良い健康な食事の証
2018年09月05日
育児中の女性の孤独感 SNSなど双方向的な育児支援が必要 京都大
2018年09月05日
禁煙後の体重増加で糖尿病リスクが上昇 でも禁煙のメリットは大きい
2018年09月05日
暑さに対策してウォーキング 安全に運動するための10ヵ条
2018年09月04日
「ストレスチェック制度の活用」へるすあっぷ21 9月号
2018年09月03日
【「STOP!肥満症」強化月間記念行事】特別セミナー&市民のための身体健康チェック体験会ご案内
2018年08月31日
【健やか親子21】18歳から"大人"に!成年年齢引き下げで変わること、変わらないこと。(内閣府)
2018年08月30日
【参加募集中】2018年度 第1回産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「保健指導」※定員に達したため、応募を締め切りました
2018年08月29日
「アルコール」は健康に悪い? 総合的にみて安全な飲酒量はないと結論
2018年08月29日
「コーヒーは健康に良い」は本当か 何杯までなら飲んで良いのか?
2018年08月29日
朝食で「牛乳」を飲むと1日を通じて血糖値が低下 糖尿病を予防
2018年08月29日
介護予防に効果がある「百歳体操」の動画 大阪市が吉本興業と共同制作
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,421 人(2018年08月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶