ニュース

アルツハイマー病で失われた記憶は取り戻せる 神経細胞を刺激

 アルツハイマー病モデルマウスの脳神経細胞を刺激することで失われた記憶を取り戻すことに成功したと、理化学研究所の研究チームが発表した。
脳神経細胞を刺激し失われた記憶を取り戻す
 アルツハイマー病は認知症の70%を占め、日本の患者数は9万2,000人と推定されており、高齢化が進む現代社会の大きな問題となっている。原因のひとつは、脳で「アミロイドベータ」と呼ばれるタンパク質が異常なかたちで蓄積することだ。

 アルツハイマー病モデルマウスの脳神経細胞を刺激することで失われた記憶を取り戻すことに、理化学研究所の研究チームが成功した。研究を発表したのは、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、利根川進・脳科学総合研究センター長(マサチューセッツ工科大学教授、理研-MIT神経回路遺伝学研究センター長)らの研究チーム。

 研究グループは、アルツハイマー病患者と同じ神経変性を示すモデルマウスをつくった。モデルマウスと正常マウスをそれぞれ実験箱に入れ、電気刺激を与えて不快な体験として記憶させた。実験の後に箱から出し、翌日にモデル、正常それぞれのマウスを再び実験箱に戻した。

 すると正常なマウスは嫌な体験を思い出しておびえたが、7ヵ月齢のアルツハイマー病のマウスは、嫌な体験をしてから1時間以内であればおびえるが、翌日になるとこの反応がみられなかった。

 つまりこのマウスは、不快な経験の記憶をつくることはできるが、24時間後にそれを想起することができなくなっていると考えられる。
記憶を保持する細胞が維持されている可能性
 これまでの研究で記憶の痕跡は海馬の「記憶エングラム」と呼ばれる細胞群に保存されていることが分かっている。

 2005年に光遺伝学(オプトジェネティクス)という実験手法が導入された。この手法は、標的とする神経細胞のオン/オフを光照射で制御可能にする技術で、光を受けて細胞を活性化させる機能を持ったタンパク質を、遺伝子組み換えにより神経細胞に強制的に発現させる。

 研究チームはアルツハイマー病のマウスの脳にある記憶エングラムに青色光を照射し、この細胞を直接活性化させた。

 すると、アルツハイマー病のマウスは、実験箱に入れた時におびえるようになった。つまり、アルツハイマー病の状態にあるマウスは正常に記憶を作っているものの、記憶を思い出せないという状態にあり、記憶エングラムを刺激することで失った記憶を取り戻したと考えられる。

 さらに研究チームは記憶想起の障害が、神経細胞同士をつなぎその情報伝達の効率を左右するシナプスが形成されるスパイン(棘)構造の減少と関連していることを突き止め、光遺伝学を用いてこのスパインを正常化すると記憶想起も正常化することを実証した。

 「アルツハイマー病初期の患者の記憶は失われているのではなく、思い出すことができないだけかもしれません。初期の患者には記憶を保持する細胞が維持されているというのであれば、将来、これらの細胞から記憶を取り出す技術が開発されれば、障害を軽減できる可能性があります」と、利根川氏は言う。

 研究に用いた7ヵ月齢の実験マウスでは、アミロイドベータの蓄積はまだ始まっていなかった。今後、アミロイドベータの蓄積以前に起こる異常を解明することで、アルツハイマー病を初期段階で治療・予防する方法を開発できる可能性があるという。

 この研究は、理化学研究所脳科学総合研究センターと米国立衛生研究所(NIH)の支援を得て行われ、科学誌「Nature」オンライン版に発表された。

理化学研究所
Memory retrieval by activating engram cells in mouse models of early Alzheimer's disease(Nature 2016年3月16日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2017年06月28日
がん検診の受診率 50%超は男性肺がんのみ 乳がんと子宮頸がんは低迷
2017年06月28日
週1回のセックスが脳の老化を防止 50歳以降の性生活が健康に関与
2017年06月28日
1日20分の運動でも効果がある 「クロスフィット」が糖尿病の改善に有用
2017年06月28日
植物性食品ベースの食事療法で2倍の減量に成功 筋肉脂肪を減らす効果も
2017年06月28日
膵臓がん 簡易な血液検査で早期発見 鹿児島で臨床研究を開始
2017年06月28日
妊婦の半数以上が妊娠前・妊娠中に医薬品・サプリを使用 10万人を調査
2017年06月27日
【新連載】日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
2017年06月21日
東京糖尿病療養指導士(東京CDE)、東京CDS 講習会の日程を発表
2017年06月21日
日本の介護の現状をレポート 「介護社会」の本格的な到来に備える
2017年06月21日
世界の3人に1人が肥満か過体重 世界規模で保健指導が必要

最新ニュース

2017年06月28日
がん検診の受診率 50%超は男性肺がんのみ 乳がんと子宮頸がんは低迷
2017年06月28日
週1回のセックスが脳の老化を防止 50歳以降の性生活が健康に関与
2017年06月28日
1日20分の運動でも効果がある 「クロスフィット」が糖尿病の改善に有用
2017年06月28日
植物性食品ベースの食事療法で2倍の減量に成功 筋肉脂肪を減らす効果も
2017年06月28日
妊婦の半数以上が妊娠前・妊娠中に医薬品・サプリを使用 10万人を調査
2017年06月28日
膵臓がん 簡易な血液検査で早期発見 鹿児島で臨床研究を開始
2017年06月27日
【新連載】日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
2017年06月26日
3つのアプリを開発「考えよう!いじめ・SNS@Tokyo」
2017年06月26日
子どもの健康の地域間格差が拡大している可能性を発表
2017年06月22日
【健やか21】子どもの健康の地域間格差が拡大している可能性
2017年06月21日
東京糖尿病療養指導士(東京CDE)、東京CDS 講習会の日程を発表
2017年06月21日
日本の介護の現状をレポート 「介護社会」の本格的な到来に備える
2017年06月21日
世界の3人に1人が肥満か過体重 世界規模で保健指導が必要
2017年06月21日
ブロッコリーで糖尿病を改善? 「スルフォラファン」が血糖値を下げる
2017年06月21日
糖尿病+高血圧 どうすれば治療を両立できる? 高血圧の治療が進歩
2017年06月21日
「健康長寿新ガイドライン」を策定 東京都健康長寿医療センター
2017年06月20日
「血糖トレンドを知るには。」を公開 血糖トレンドの情報ファイル
2017年06月19日
広がる電子母子手帳~健康情報を管理するアプリとも連携(神奈川県)
2017年06月16日
【健やか21】子ども外傷患者初期対応アセスメントシート 活用マニュアル
2017年06月15日
乳がん検診は今後はどう変わる? 「高濃度乳房」の実態調査を開始
2017年06月15日
食育推進計画を策定した市町村は78%に上昇 「平成28年度食育白書」
2017年06月15日
日本初の「心房細動リスクスコア」を開発 検診項目からリスクが分かる
2017年06月15日
赤ワインのポリフェノールで血管が柔らかく 糖尿病の動脈硬化も改善
2017年06月15日
内臓脂肪が増えるとがんリスクが上昇 腹囲の増加は「危険信号」
2017年06月15日
HbA1cを測定できる「ゆびさきセルフ測定室」 全国に1,500ヵ所以上
2017年06月08日
【健やか21】子ども・若者育成支援「専門分野横断的研修」研修生募集
2017年06月07日
若い世代の産業保健師を育成するプロジェクトがスタート
2017年06月07日
産業保健プロフェッショナルカンファレンス サイトを公開
2017年06月07日
糖尿病医療に貢献するビジネスプランを募集するコンテストを開始
2017年06月07日
健康に生きるための5つの「ライフ スキル」 人生で勝つために学びが必要

おすすめニュース

無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 6,135 人(2017年06月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶