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【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも

 横浜市は「新たながん対策」を推進し、自治体初のものも含む7つの取り組みを開始すると発表した。

 65歳時点のがん検診を無料化、子宮頸がん検診の新たな検査の導入、女性のブレスト・アウェアネス(乳房を意識した生活習慣)の推進、AYA世代のがんにも取り組むなど、がん対策を加速するとしている。

横浜市が推進する「新たながん対策」7項目

 横浜市は「新たながん対策」を推進し、自治体初のものも含む7つの取り組みを開始すると発表した。高齢者や女性のがん検診の充実などのがん対策を加速し、AYA世代のがんにも取り組むなど、対策を強化する。

 横浜市が推進する「新たながん対策」は、主に下記の7項目。

横浜市のがん対策における新たな取り組み
1子宮頸がん検診における新たな検査の導入
2遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)検査への新たな助成
3ブレスト・アウェアネス(乳房を意識した生活習慣)の推進
465歳時点のがん検診を無料化に
570歳以上の方の精密検査を無料化に
6さらに受けやすいがん検診に
7小児・AYA 世代(15~39 歳)向けの新たな取り組み

 横浜市の調査では、市民の9割以上が、「がんは恐い」と思っており、身近な人ががんに罹患した市民は8割に上るという。

1子宮頸がん検診における新たな検査の導入

 子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染によるもの。検診で診断されたときのステージが早いほど、生存率は高いことが示されている。
 これまでの子宮頸がん検診は、子宮の入口の細胞を採取し、細胞に異常がないかどうかを顕微鏡で観察するもの(細胞診)だったが、新たにHPV検査を導入する。
 新たな方法では、細胞がHPVに感染しているかどうかを調べる。HPVに感染している場合はがんのリスクが高くなりますので、そのまま細胞診の検査を実施する(再度受診の必要はない)。
 細胞診が陽性なら精密検査へ、そして細胞診が陰性でも、リスクが高い状態ではあるため、次回は1年度のHPV検査になる。HPVに感染していない女性は、リスクが低いということになり、次回は5年後となる。
 この方法は、HPVに感染しているリスクの高い女性についてはより細やかに検査を実施し、感染していないリスクの低い女性については受診間隔が広がるというメリットが期待できるとしている。

横浜市 HPV検査の導入後のイメージ

出典:横浜市、2024年

2自治体初の遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)検査 新たに助成

 がんの原因の多くは、高齢化やタバコ、飲酒や食生活などの環境的な要因とされているが、遺伝が原因のがんもある。HBOCは遺伝要因の代表例で、高い確率でがんを発症することが知られており、若年でも発症する傾向がある。
 そこで、自治体初の取り組みとして、乳がんなどのがんが若い年齢で発症しやすい遺伝のリスクを知るため、とくにがん未発症で家族にHBOCがいる女性などを対象に、遺伝カウンセリングや検査費用の一部助成を新たに行う。

出典:横浜市、2024年

3ブレスト・アウェアネス(乳房を意識した生活習慣)の推進

 女性に広く乳がんへの意識を高めてもらうため、企業向けの情報発信や、子育て事業のなかで「ブレスト・アウェアネス」を啓発する。
 「自分の乳房の状態を知る → 乳房の変化に気を付ける → 変化に気づいたらすぐに医師に相談」を呼びかけ、40歳になったら2年に1回は乳がん検診を受診することを啓発する。

4高齢者向けの施策 65歳時点のがん検診を無料に

 がんの罹患が増える高齢世代のがん対策として、これまでがん検診を受診する習慣がなかった人や、勤務先で受けていた人の退職後の定期的な受診に向け、横浜市が実施する6つのがん検診について、65歳の人の自己負担額を無料化する。

5高齢者向けの施策 70歳以上の人の精密検査を無料に

 70歳以上の方のがん検診は現在無料だが、精密検査は保険診療となる。精密検査が必要とされた人は、精密検査まで受けてはじめてがん検診を受けたと言えるので、費用的な面から精密検査を受けることを断念してしまうことのないよう、無料化により精密検査を受けやすいようにする。無料化により、がん検診から精密検査までの一体的な受診を促す。

6 さらに受けやすいがん検診に

 胃がん検診値下げ(自己負担額 3,140円 → 2,500円)、大腸がん検診の自己負担の無料化の継続、対象者の受診状況に応じたナッジを活用したオーダーメイドのメッセージによる受診勧奨を行う。
 これまでまったく受診したことのない人と、昨年だけ受診を忘れてしまったという人は、受診への意識が異なる層であることから、それぞれの受診パターンに応じて、適切な言葉で受診を呼びかけるような通知を行う。

7小児・AYA世代(15~39歳)向けの新たな取り組み

 小さい子供や30代までの若い世代の人のがんについては、罹患する人が少なく理解が不足している状況があるので、メタバースによる小児がん患者の交流支援、プロモーション動画の作成、妊孕性温存療法に関する助成を行う。
 がんの治療にともなう妊孕性温存については、神奈川県の助成の対象外となるカウンセリングや、卵子や精子等の凍結更新に係る費用の一部を補助するなどの支援を行う。

横浜市 健康・医療
[Terahata]
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