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がん患者に対するアピアランスケアの手引き がん治療の外見変化が苦痛に
2016.10.13
日本食
 国立がん研究センター中央病院は、がん患者に対するアピアランスケアの医療者向け手引き書「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」を作成した。具体的なアピアランスケアの方法を解説している。
がん治療で脱毛、爪のはがれ
患者にとって大きな苦痛に
 「アピアランス」は、広く「外見」を示す言葉だ。手術・抗がん剤・放射線などのがんの治療は、傷あと・脱毛・皮膚の変色・爪の変化など、患者の体にさまざまな外見の変化をもたらし、患者にとって大きなストレスになる。

 国立がん研究センターが、抗がん剤治療中の患者に、身体症状の苦痛度の上位20位を聞いたところ、外から見える身体症状が多く含まれていた。

 とりわけ女性患者では外見の変化に関する項目として、「頭髪の脱毛」(1位)、「まつ毛の脱毛」(6位)、「まゆ毛の脱毛」(8位)、「足の爪のはがれ」(9位)などが上位に挙げられた。これらは痛みやかゆみも伴わないが、患者にとっては苦痛になっている。「治療中に外見が気になって外に出られない」という意見もあったという。

 男性患者でも、「足のむくみ」(10位)、「顔のむくみ」(15位)、「湿疹」(16位)、「頭髪の脱毛」(18位)などが上位に挙げられた。

 一方、がん医療(手術療法、放射線療法、化学療法)の進歩によりがん生存率は改善し、また通院治療の環境整備により、仕事をもちながら通院する患者は32.5万人に増えた(平成22年国民生活基礎調査)。

 こうした背景により、がん患者のアピアランスに対する意識が強まり、医療現場におけるサポートの重要性も認識されはじめている。しかし、具体的なアピアランスケアの方法については、根拠のない情報や実生活に合わない情報があったり、患者からの相談に戸惑う医療関係者も少なくないという。

 そこで、国立がん研究センター中央病院は、がん患者に対するアピアランスケアの医療者向け手引き書「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」を作成した。

 これは、アピアランス支援センターの野澤桂子・センター長を研究代表者とする「がん患者の外見支援に関するガイドライン構築に向けた研究」班がまとめたもので、8月に発行された。
がん患者が自分らしく生活できるよう支援
 国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センターは、治療に伴う外見変化に対処し、がん患者が自分らしく生活できるよう支援することを目的に2013年7月に開設された。

 院内での患者向けプログラムの実施のほか、全国のがん診療連携拠点病院の医師・看護師などを対象とした研修の実施など、全国の各施設でも同様の活動が行えるネットワーク構築にも取り組んでいる。

 がん患者のアピアランスの支援方法を「外見に関する諸問題に対する医学的・技術的・心理社会的支援」としており、学際的、横断的に扱う新たな領域としている。

 この手引きは、医療者ががん患者に対しどのようなアピアランスケアを指導すればよいかを基準に使用されることを想定した内容となっている。アピアランスケアに必要な情報をエビデンスにもとづき整理し、がん治療や患者指導、情報提供を行う医師、看護師、薬剤師など医療従事者を対象としている。
アピアランスケア 医療者向けの手引きを作成
がん患者に対するアピアランスケアの手引き
 手引きの「治療編」(化学療法、分子標的治療、放射線治療)では、がん治療によって生じる外見問題をまとめ、その症状に対する治療方法を検討。「日常整容編」では、医療の分野では取り上げられることの少なかった日々の生活、衛生習慣について検討している。

 患者からの質問で、エビデンスが少ないので医療者が答えにくかった「治療が終わって髪の毛が生えてきたけれど、髪は染めてもいいのか?」「ざ瘡がある時の髭剃りは?」「爪が変形してしまったが、ジェルネイルで整えてもいいのか?」などの問いについて、エキスパートオピニオンとして一定の基準を示している。

がん患者に対するアピアランスケアの手引き(内容の一部)

◆ 治療編

・ 脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か
→ 日本人を対象とした明確なエビデンスはないが、勧められる(C1a)

・ 化学療法による皮膚の色素沈着の予防・治療としてビタミンC内服は有用か
→ エビデンスが乏しく、勧められない(C2)

・ 放射線治療中に制汗剤などのデオドラントの使用を継続してもよいか
→ 継続してもよい(B)

◆ 日常整容編

・ 化学療法に伴う爪の変形に対して、安全なカモフラージュ方法は何か
→ アクリルネイルやジェルネイルなどの硬化性樹脂製の爪化粧料を使用することは推奨できない(D)

・ 化学療法による皮膚乾燥に対して、安全な日常的スキンケア方法は何か
→ 洗浄前に水またはぬるま湯で身体を濡らした後、軽く泡立てた洗浄料で洗うことは勧められる(C1a)

・ 化学療法中の患者に対して、安全な日常的ヘアケア方法は何か
→ エビデンスはないが、髪と地肌をぬるま湯で十分に濡らした後、シャンプーなどを使用することは勧められる(C1a)

  (B) 科学的根拠があり、行うように勧められる
  (C1a) 科学的根拠はないが、行うように勧められる
  (C1b) 科学的根拠はないが、行うことを否定しない
  (C2) 科学的根拠はなく、行わないよう勧められる
  (D) 無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる
今後のアピアランスケアの水準向上を期待
 手引きは、通常のガイドライン作成手続きに厳正に従い手引きを作成されているが、新たな領域なので、治療編、日常整容編ともに十分なエビデンスが確認できない問題については、エビデンスのないことを明記したうえで、研究班のメンバーが討議し、エキスパートオピニオンとして対処方法を提言しているという。

 医学(腫瘍内科、皮膚科、放射線科、形成外科、乳腺科)だけでなく、薬学、看護学、香粧品学、心理学という異なる専門領域の専門家が、がん患者のアピアランスケアという目的のもとに、協働して作成した。

 手引きでは、現在までに集積しているエビデンスを記すことによって、エビデンスの少ないアピアランスケア研究の現状と課題も明らかにしている。「これらで示す指針や提言にもとづいたアピアランスケアが医療従事者を通じ提供され、一定の水準が担保されることが期待される」と、同センターは述べている。

「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」2016年版
編集:国立がん研究センターがん研究開発費「がん患者の外見支援に関するガイドライン構築に向けた研究」班
発行:金原出版
定価:2,500円+税

国立がん研究センター中央病院
(Terahata)
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