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肥満のある人はやはりがんリスクが高い 代謝的に健康であってもがんリスクは上昇 日本人5万人超を調査
2025年01月06日
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肥満のある人は、代謝的に不健康であると、がんの発症リスクが大幅に高くなり、代謝的に健康であっても、がんリスクはやはり上昇することが、徳島大学などによる5万人超を対象とした調査で明らかになった。
肥満や代謝的に不健康であることは、がんリスクの上昇と関連があり、2つが重なるとがんリスクはとくに高くなることが分かった。
代謝的に健康な肥満の人も大腸がん、肝臓がん、乳がんになりやすいことが分かった。
肥満があり代謝的に不健康だとがんリスクは大幅に上昇
肥満は世界中で深刻な問題になっており、世界の8人に1人が肥満を抱えている。肥満は、その他の心血管リスク要因である代謝異常[高血圧・脂質異常・高血糖]と、メタボリックシンドロームを形成し、循環器疾患やがんのリスクを高めることが知られている。 その一方で、太っているが糖尿病や脂質異常などはなく、代謝的には健康な人や、やせているのに代謝的には不健康な人がいることが注目されている。 しかし、肥満のある人は、代謝的に不健康であると、がんの発症リスクが大幅に高くなり、代謝的に健康であっても、がんリスクはやはり上昇することが、徳島大学などによる、5万人超を対象とした日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究の解析で明らかになった。肥満のある人は代謝的に健康であってもがんリスクは上昇
「代謝表現型」は、肥満と、心血管リスク要因である代謝異常[高血圧・脂質異常・高血糖]を組み合わせて分類したもの。 調査では、肥満があり、その他の心血管リスク要因がないときは「代謝的に健康な肥満」とした。肥満があり、その他の心血管リスク要因があるときは「代謝的に不健康な肥満」、正常体重で、その他の心血管リスク要因がないときは「代謝的に健康な正常体重」とした。質問票にもとづく解析では、糖尿病、脂質異常症、高血圧の自己申告による病歴にしたがい定義された。 その結果、肥満や代謝的に不健康であることは、がんリスクの上昇と関連があり、2つが重なるとがんリスクはとくに高くなることが分かった。 代謝的に不健康な肥満は、Cox比例ハザード回帰分析の結果、がんリスクが検査ベースでは1.17倍に、質問票ベースでは1.15倍となり、いずれもがん発症率の増加と有意に関連していた。 代謝的に健康な肥満、代謝的に不健康な肥満の人も、大腸がん、肝臓がんになりやすいことが分かった。肥満があり代謝的に不健康な人は、全がんのリスクも上昇した。 正常体重の人でも、代謝的に不健康であると、膵臓がんになりやすいことも分かった。女性でも、代謝的に健康な肥満の人と、代謝的に不健康な肥満の人は乳がんに、代謝的に不健康な肥満の人は子宮体がんにもなりやすいことが示された。
J-MICC研究:日本人成人は、代謝表現型により、全がんおよび部位別がんの罹患のしやすさが変わることが示唆された
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出典:徳島大学、2024年
日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究の5万人超のデータを解析
研究グループは今回、日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究のデータを解析し、代謝表現型と全がん、部位別がんの罹患との関連を調べた。 J-MICC研究は、2005年に開始された、全国の約10万人を対象としたコホート研究。徳島大学、愛知県がんセンター、名古屋大学など、全国の施設が共同して実施されている。 解析の対象となったのは5万3,042人で、追跡期間の9.1年(中央値)のあいだに4,467人(男性2,423人、女性2,044人)が、がんを発症した。 検査にもとづく解析の対象となった2万5,357人(平均年齢 56歳)のうち24.9%が肥満で、質問票にもとづく解析の対象となった5万3,037人(平均年齢 55歳)のうち21.8%が肥満だった。 肥満のある人は、身体活動は少なく、喫煙や飲酒の習慣があり、脂肪肝・高血圧・糖尿病・脂質異常症がある割合が高い傾向がみられた。日本人は代謝表現型によってがんリスクが変わる
日本人を含むアジア人は、欧米人に比べ肥満が少ないが、肥満の健康への影響は大きいことが知られている。 代謝的に不健康な人のなかでも、肥満の人とやせ型の人を比べると、遺伝的背景も含めて、病態メカニズムは異なると考えられている。 研究は、徳島大学大学院医歯薬学研究部予防医学分野の渡邊毅氏らによるもの。研究成果は、「Cancer Research Communications」に掲載された。 「高血圧、脂質異常、高血糖といった代謝表現型は、日本人成人の全がん、および一部の部位の特異的がんのリスクを知るための、重要な危険因子となることが示唆されました」と、研究者は述べている。 「研究により、日本人成人で、代謝表現型によって、全がんおよび部位別がんの罹患のしやすさが変わることが示唆されました。今後は、生活習慣と代謝表現型、がん罹患との関係性について遺伝要因も含めてさらなる検討を行っていきたいと考えています」としている。 徳島大学医学部・大学院 予防医学分野The Significance of Comprehensive Metabolic Phenotypes in Cancer Risk: A Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study (Cancer Research Communications 2024年11月21日)
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