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10月は「乳がん月間」 マンモグラフィ検査を毎年受けている女性は乳がんリスクが減少 乳がん検査の最新情報
2024年09月30日

10月は「乳がん月間」だ。乳がんの早期発見のシンボルである「ピンクリボン」が掲げられて、さまざまなキャンペーンやイベントが開催される。
乳がんを発見するためのマンモグラフィ検査を、毎年受けている女性は、2年に1回あるいはそれ以上の間隔を空けて検査を受けている女性に比べて、乳がんのリスクが少ないことが明らかになった。
乳がん検査を受けている女性は少なく、日本でも40~69歳の女性の検診の受診率は50%未満で、毎年受けている女性は少ないことが報告されている。
マンモグラフィ検査で懸念されているのは、偽陽性のリスクがあり、検査を受けた女性の不安を高め、不必要な検査が増えるおそれがあることだ。検査時に乳房を挟まれ圧迫されるのを負担に感じている女性も少なくない。
そのため、検査を受ける女性の負担を減らしながら、精度を高めるための技術開発も進められている。
10月は「乳がん月間」 検査を受けている女性は乳がんリスクが減少
乳がんを発見するためのマンモグラフィ検査を、毎年受けている女性は、2年に1回あるいはそれ以上の間隔を空けて検査を受けている女性に比べて、乳がんを発症し進行する可能性が低く、乳がんと診断された女性でも生存率が高いことが明らかになった。 「40歳以上の女性のうち、乳がんの検査を受けているのは、米国では65%程度です。そのうち毎年検査を受けている女性は、わずか半数に過ぎません」と、米ピッツバーグ大学医療センター放射線科のマルガリータ ズーリー教授は言う。 「今回の調査で、閉経前女性を含め、乳がんを発見するためのマンモグラフィ検査を毎年受けている女性は、2年に1度以下の頻度で検査を受けるよりも、大きなメリットを得られることが示されました」としている。検査を毎年受けていれば乳がんを発症したときの負担も少ない
研究グループは今回、マンモグラフィ検査の最適な間隔を調べるため、1回以上のマンモグラフィ検査の記録のある8,145人の乳がん患者の記録を解析した。 その結果、末期の乳がんが確認された女性の割合は、検査を2年に1回受けている女性では14%、それよりも長い間隔を空けて受けている女性では19%だったが、毎年受けている女性では9%と大幅に低いことが分かった。 さらには、検査を毎年受けている女性は、乳がんを発症した場合も生存率が大幅に高いことも分かった。 「マンモグラフィ検査を毎年受けると、乳がんを早期発見できるようになり、乳がんが発見された場合でも治療を行いやすく、回復も容易で生存率も高く、治療費の削減にもつながります」と、ズーリー教授は指摘する。日本でも乳がん検査を毎年受けている女性は少ない
一方で、多くの臨床研究により、乳がんのマンモグラフィ検査を受けるメリットは実証されているものの、女性が検査を受ける間隔の推奨については、ガイドラインによって異なるという現状がある。 米国放射線学会などは、40歳以上の女性は乳がんの検査を毎年受けることを推奨しているが、米国予防医療専門委員会などは、2年に1回の検査を推奨している。 日本でも、40~69歳の女性の乳がん検診の受診率は50%未満で、毎年受けている女性は少ないことが報告されている。 「女性は意識して、乳がんの検査を毎年受けることをお勧めします。乳がんの検査を受けることに大きなメリットがあることは明らかです」と、ズーリー教授は強調している。マンモグラフィ検査の負担をなくすために新しい技術を開発
マンモグラフィ検査の頻度が増えることがもたらすもうひとつの懸念事項は、偽陽性のリスクが高まり、検査を受けた女性の不安を高め、不必要な検査が増えるおそれがあることだ。
偽陽性とは、乳がんがないにもかかわらず、検査で「精密検査が必要」と判定されること。
マンモグラフィは乳がんの早期発見に有効なスクリーニング方法だが、正常な乳腺組織とがん細胞の見分けが難しい場合がある。
さらには、撮影時に乳房を挟み圧迫するため、痛みをともなうことがあり、それを負担に感じている女性は少なくない。
そのため、乳がん検診の精度を高めるための技術開発も進められている。北米放射線学会(RSNA)が発表した別の研究によると、革新的な乳房画像技術により、がんを高感度に検出できると同時に、偽陽性の可能性が大幅に低減できる可能性がある。
陽電子放射乳房撮影(PEM)は、マンモグラフィと同等の放射線量で、診断性能を向上させる乳がんの新しい検査法だ。乳房を挟む必要がないため、痛みもともなわない。
さらには、AI(人工知能)によるサポートを活用した、より被ばくや偽陽性の少ない、新しいマンモグラフィの開発も進められている。
AI支援によるマンモグラフィ検査により、偽陽性に影響を与えることなく、乳がんの検出精度が改善することが報告されている。
「乳がんの検査に偽陽性のリスクがあり、女性を再検査に呼び戻すことに潜在的な害がともなうことは理解していますが、こうした害は、乳がんを見逃したり、進行するリスクを上回るものではありません」と、ズーリー教授は言う。
「しかし、検査を受ける女性の負担を軽減し、より偽陽性率の少ない検査ツールの開発に取り組んでおり、より費用対効果の高い正確な検査をできるようにするために努力しています」としている。
Breast Cancer Screening Interval: Effect on Rate of Late-Stage Disease at Diagnosis and Overall Survival (Journal of Clinical Oncology 2024年8月21日)
Annual Breast Cancer Screening at 40 Saves Lives (北米放射線学会 2024年2月20日)
Outcomes of Breast Cancer Screening Strategies Based on Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network Estimates (Radiology 2024年2月20日)
Novel Technique Has Potential to Transform Breast Cancer Detection (北米放射線学会 2024年2月9日)
Breast Cancer Detection Using a Low-Dose Positron Emission Digital Mammography System (Radiology: Imaging Cancer 2024年2月9日)
AI-supported mammography screening is found to be safe (ルンド大学 2023年8月2日)
Artificial intelligence-supported screen reading versus standard double reading in the Mammography Screening with Artificial Intelligence trial (MASAI): a clinical safety analysis of a randomised, controlled, non-inferiority, single-blinded, screening accuracy study (Lancet Oncology 2023年8月)
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