ニュース

うつ病の予防に週1時間の運動 ウォーキングは気分を明るくする

 10月10日は「世界メンタルヘルスデー」だった。週にたった1時間の運動をするだけで、うつ病を予防する効果があることが明らかになった。運動は脳の健康を保つために効果的だ。
座ったまま過ごす時間が長いと
うつ病のリスクが上昇
 うつ病は世界的に増えている。世界保健機関(WHO)によると、世界中で3億人以上がうつ病で苦しんでいる。その数は2005年から2015年に18%増加した。

 「運動にうつ病を予防する効果があることは以前から分かっていましたが、今回の研究ではじめて、うつ病の将来のリスクを減らすという観点から、運動の可能性を定量化できました」と、ニューサウスウェールズ大学ブラックドック研究所のサミュエル ハービー氏(精神医学)は言う。

 「座ったまま過ごす時間の長い生活スタイルが世界的に普及しています。同時にうつ病の発症率も高まっています。両者は密接に関連していると考えられます。生活スタイルのちょっとした改善によって、メンタルヘルスにおけるベネフィットを得られる可能性があります」と、ハービー氏は言う。

 座ったまま体を動かさない時間が増えることで、肥満や過体重、2型糖尿病、がん、早期死亡が引き起こされる。

 座ったまま過ごす時間が長いと、血流が悪くなり代謝に障害が起こり、血糖値や血圧値を調節するメカニズムや、体脂肪をエネルギーに変える働きが衰え、筋肉や骨も弱くなるおそれがある。

 「座っている間は、体は"シャットダウン"しており、筋肉の活動はほとんどありません。座ったまま過ごす時間を減らし、体を動かすことで、筋肉や骨が働き、体のすべての機能が強化されます。まるで車のエンジンを起動するかようにです」と、ハービー氏は言う。

運動をするとポジティブな思考になりやすい
 「座ったまま過ごす時間が長時間に及ぶ場合は、1~2分の短い時間をとり、体を動かすアクティブな休憩にあてることが勧められます」。

 毎日の生活の中で生産性を上げ、体の機能を向上させるために、運動をほんの少しの時間行うだけでも効果がある。

 オーストラリアのベイカーIDI心臓・糖尿病研究所の研究によると、座ったまま過ごすことの多い人は、1日に20分間の運動をするだけで、寿命を延ばし、2型糖尿病などのリスクを低減できるという。

 運動にはリフレッシュ効果もある。運動すると交感神経が活性化され、心拍数が上昇する。交感神経が優位な時間が増えると意欲的になり、ポジティブな思考になりやすい。
運動をすると「セロトニン」や「エンドルフィン」が増える
 ウォーキングやジョギング、サイクリングなど、一定のリズムで体の筋肉を動かす有酸素運動により、脳の情報伝達のバランスを整える神経物質のひとつである「セロトニン」が活性化することも分かっている。

 脳内のセロトニン量が増えると、心が落ち着いてさわやかな気分になり、集中力も高まる。不安や抑うつ感なども改善され、元気が出てポジティブな気分になる。

 また、運動は脳の「エンドルフィン」の分泌も高める。エンドルフィンも脳内で働く神経伝達物質のひとつ。鎮痛効果や気分の高揚・幸福感などが得られるため、脳内麻薬とも呼ばれる。

 ウォーキングなどのリズム運動によってエンドルフィンの分泌を促すことができ、ストレス耐性やうつの予防効果も期待できる。
1週間に1時間の運動でもうつ病の予防効果が
 こうした「心身」の活性化を得るために、激しい運動を長時間行わなければならないわけではない。オーストラリアで発表された新しい研究では、1週間に1時間程度という少量の運動でも、十分に効果を期待できるという。

 発表されたのは、オーストリアの研究者が中心となり実施されている国際的な大規模調査「HUNT研究」の一環として実施された研究で、対象となったのはノルウェー在住の3万3,098人の成人。

 研究チームは、これらの成人の運動習慣について調査し、1984~1997年に平均11年間にわたり、うつ病や不安障害の発症について追跡して調査した。

 その結果、運動をする習慣がまったくない人では、週に1〜2時間の運動をしている人に比べ、うつ病発症のリスクが44%増加していた。

 毎週1時間の運動により、うつ病の発症を12%抑制できることも明らかになった。
少し息が上がる程度のウォーキングでも効果がある
 「運動がうつ病の予防効果をもたらすメカニズムを解明するには、さらに多くの研究が必要ですが、運動にはメンタルヘルスを改善する、身体的・社会的な複合的ベネフィットがあることは明らかです」と、ハービー氏は言う。

 うつ病の予防効果を得るためには、発汗をともなう息が切れるような激しい運動である必要はなく、少し息が上がる程度の運動でも十分だという。

 うつ病の発症に影響する、社会経済および人口統計学的因子、薬物の使用、BMI、身体性疾患の既往歴、社会的なサポートなどの影響を考慮しても、運動にうつ病を予防する効果があることは明らかだった。

 オーストラリアでは、運動習慣がまったくないという成人が20%に上り、3分の1以上が週に1.5時間の運動もしていないという。一方で、16~85歳の成人の5人に1人がうつ病などの精神疾患を発症している。

 ブラックドック研究所では今年9月に、オーストラリアの全国で運動によりメンタルヘルスを改善するためのキャンペーンを展開した。

 「運動をメンタルヘルス向上させるプログラムに組み込む必要性があります。公衆衛生でのキャンペーンとして、運動を幅広く呼び掛けることも必要でしょう。ポピュレーションレベルを運動や身体活動を引き上げることができれば、心身ともに健康効果を得ることができます。しかもそれは、週当たり1時間程度という、少しの運動だけでも効果があるのです」と、ハービー氏は述べている。

One hour of exercise a week can prevent depression(ニューサウスウェールズ大学 2017年10月3日)
Exercise and the Prevention of Depression: Results of the HUNT Cohort Study(American Journal of Psychiatry 2017年10月3日)
Excessive sitting at work and at home: Correlates of occupational sitting and TV viewing time in working adults(BMC Public Health 2015年9月15日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2018年10月18日
【参加募集中】第6回(2018年度 第2回)産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「メンタルヘルス」
2018年10月17日
日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」
2018年10月17日
高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻 【体力・運動能力調査】
2018年10月17日
母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査
2018年10月17日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討
2018年10月17日
魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月15日
パートナー企業とヘルスケア分野でオープンプラットフォーム構築―タニタヘルスリンク
2018年10月10日
「歩幅プラス10cmウォーキング」でロコモ・サルコペニアを防ぐ
2018年10月10日
たった一晩の「不眠」でメタボや糖尿病に 睡眠を改善するための7ヵ条
2018年10月10日
「子宮頸がんワクチン」の効果は高い HPVウイルス感染を90%以上予防

最新ニュース

2018年10月18日
【参加募集中】第6回(2018年度 第2回)産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「メンタルヘルス」
2018年10月18日
帝京大学産業保健プログラム 受講生募集
2018年10月18日
【健やか21】平成30年度「麻薬・覚醒剤乱用防止運動東京大会」(参加申し込み受付中)
2018年10月17日
日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」
2018年10月17日
高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻 【体力・運動能力調査】
2018年10月17日
母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査
2018年10月17日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討
2018年10月17日
魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月15日
パートナー企業とヘルスケア分野でオープンプラットフォーム構築―タニタヘルスリンク
2018年10月15日
厚労省専門委が5歳児虐待死亡事件の検証結果を公表
2018年10月12日
【健やか21】第 77 回日本公衆衛生学会総会 自由集会 ~知ろう・語ろう・取り組もう~
2018年10月10日
「歩幅プラス10cmウォーキング」でロコモ・サルコペニアを防ぐ
2018年10月10日
たった一晩の「不眠」でメタボや糖尿病に 睡眠を改善するための7ヵ条
2018年10月10日
「子宮頸がんワクチン」の効果は高い HPVウイルス感染を90%以上予防
2018年10月05日
乳がん検診に「人工知能(AI)」を導入 マンモグラフィの欠点を克服
2018年10月05日
肺の健康を守るには口の健康から 歯周病が進行すると呼吸機能が急速低下
2018年10月05日
「改正健康増進法成立! 受動喫煙対策を強化」へるすあっぷ21 10月号
2018年10月05日
厚労省が「働く女性の実情」を公表~女性活躍推進法に基づく取組状況を解説
2018年10月05日
「健康なまち・職場づくり宣言2020」2018年の達成状況を報告~日本健康会議
2018年10月04日
【講演会レポート】「10月8日は、糖をはかる日」講演会 「"これからの"血糖コントロール」
2018年10月04日
【回答期限延長(10/30 15:00まで)】「保健師の活動基盤に関する基礎調査」(日本看護協会)
2018年10月04日
【健やか21】若い世代に向けた妊娠・出産に関する普及啓発Webサイト(東京都)
2018年10月03日
【産保PC第5回(2018年度 第1回)レポート】テーマ:保健指導
2018年10月02日
心不全が急激に増えている 「心不全パンデミック」時代の3つの予防法
2018年10月02日
「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護
2018年10月02日
魚のオメガ3系脂肪酸が「不安症状」を軽減 魚を食事療法に活用
2018年10月02日
10月は「乳がん啓発月間」 定期的なマンモグラフィ検診は効果的
2018年10月01日
保健指導リソースガイド「よろず相談センター」が誕生
2018年09月28日
働き盛りの睡眠不足が問題に~睡眠障害への早期対応も必要
2018年09月28日
スマートフォンアプリ「ぜんそくリスク予報」をリリース~JMDCと日本気象協会
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,558 人(2018年10月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶