ニュース

10月は「乳がん啓発月間」 定期的なマンモグラフィ検診は効果的

 毎年10月の「乳がん啓発月間」に、乳がんの早期発見を呼びかける「ピンクリボン運動」が全国的に行われている。乳がんの発症数は増加しているが、適切な知識を持っていれば、早期発見・治療が可能だ。
乳がんを早期発見できれば生存率は100%
 乳がんは早期発見・治療をすれば恐くないがんだ。乳がんの進行度をあらわす「ステージ別の生存率データ」をみると、ステージIの早期発見で治療をした患者の場合、「5年相対生存率」(治療で命を救えるかを示す指標)は100%で、全ての人が生きられる。

 がんの中で、日本の女性がもっとも多くかかるのが乳がんだ。漫画『ちびまる子ちゃん』などで知られるさくらももこさんが2018年8月に亡くなった。享年53歳。

 乳がんにかかる女性は年々増加しているが、2016年度の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、乳がん検診の受診率はおよそ45%と低い。

 それを受けて、「乳がん啓発月間」には乳がん検診の定期受診の推進などが呼びかけられる。

 乳がんの早期発見のために行われている主な検査は、マンモグラフィと超音波検査で、それぞれに特徴がある。

関連情報
年に1回のマンモグラフィ検診を受けると死亡リスクが低下
 自治体の乳がん検診で40歳以上の女性を対象に2年に1回行われているのはマンモグラフィ検診だ。マンモグラフィではX線検査で、腫瘤(がん)や石灰化が確認できる。

 日本乳癌検診学会によると、現在のところ、乳がんの死亡率を低下させる効果が証明されている検査方法はマンモグラフィのみだ。

 しかし、2016年に実施された「国民生活基礎調査」によると、日本の女性の乳がん検診の受診率は44.9%と低い。がん検診の国際比較をみても、日本の乳がん検診は、OECD(経済協力開発機構)加盟国30ヵ国の中で最低レベルに位置している。例えば、米国では8割以上の女性がマンモグラフィー検診を受診している。

 米国のコロラド大学医学部の研究で、40歳を過ぎた女性は、年に1回のマンモグラフィの乳がん検診を受けると、死亡リスクを40%減らせることが分かった。この研究は、米国がん学会が発行する医学誌「Cancer」に発表された。

 「40~84歳の女性は年1回のマンモグラフィ検診」を受けることで、「2年に1回」の場合に比べ、乳がんによる死亡をもっとも多く低減できることが明らかになった。乳がんを早期発見するために、マンモグラフィ検診を定期的に受けることが欠かせない。
「高濃度乳房」の女性は乳がんを見つけにくい
 しかし、注意しなければならないのはマンモグラフィの乳がん検診ですべての乳がんを発見できるわけではないことだ。特に若い女性は「高濃度乳房」である場合が多く、全体に白く写り、がんを見つけにくくなる。

 乳房の土台を作っている「乳腺実質」は、乳汁を作る乳腺と、乳汁を乳頭に運ぶ管から形成されている。その周りを脂肪組織が囲むように覆っている。このうち高濃度乳房とは、乳腺実質の割合が多い乳房のことだ。

 乳房にX線を照射すると、乳腺実質は白く、脂肪組織は黒く写し出される。高濃度乳房の患者では、乳腺の割合が多いため、乳房の大部分が白く、そして濃く写る。

 マンモグラフィで撮影すると腫瘍(乳がん)の部分が白く映るが、高濃度乳房の方の場合、乳房の多くの部分が強い白色で映し出されるため、腫瘍が検出されにくくなってしまう。そのため、高濃度乳房の女性では、乳がんなどの異常が発見されにくくなる。

 日本乳癌学会によると、日本人女性のおよそ4割は乳腺の密度が高い高濃度乳房だと推定されている。
乳がん検診を受診した女性に高濃度乳房を伝える仕組みが必要
 これを受けて、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」は、「高濃度乳房」の実態を把握するための調査などを実施する研究班を立ち上げた。

 乳がんの発症率が高くなる40歳代の女性は、高齢者と比較して、高濃度乳房の比率が高いことが分かっている。また、日本人を含むアジアの女性では、欧米の女性と比べ、高濃度乳房の比率が高いとされている。

 高濃度乳房の場合、脂肪性乳房よりもマンモグラフィの診断精度が落ちてしまうが、日本では高濃度乳房であるかどうかを検診受診者に通知していないケースが多い。

 乳がん検診を受診した女性に高濃度乳房のことを十分理解できるよう説明を行い、通知後に適切な行動をとれるよう指導できる体制の整備が必要だという。

 高濃度乳房の告知を行う動きは海外でも広がっている。米国では半数以上の州で高濃度乳房の告知を行っている。米国では2009年から8年間で27州において告知を行うようになった。
超音波検査を加えるとメリットがある
 受診者への高濃度乳房の通知について問題提起されたことで、乳がん検診ではマンモグラフィに追加して、超音波検査も行うべきではないかという議論もされており、日本乳癌検診学会のワーキンググループで対応策を検討している。

 超音波検査は、「高濃度乳房」の若い女性の乳がんを発見するのに適している。人間ドックなどで任意で行う検査だが、乳がん検診で精密検査が必要と診断された人は保険診療で受けられる。

 厚生労働省が立ち上げた「J-START」試験では、超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)を比較する試験を世界ではじめて実施し、超音波検査が有効かどうかを検証している。対象となっているのは40歳代の女性だ。

 その結果、マンモグラフィと超音波検査の両方を行う検診で、早期乳がんの発見率は約1.5倍に上昇した。
月に1度のセルフチェックも効果的
 乳がんは体表にできるため、自分で発見できる数少ないがんのひとつだ。そのため、マンモグラフィや超音波の検査に加え、月に1度はセルフチェックを行って、乳房に変形やしこりがないかチェックすると効果的だ。

 日本乳癌学会もウェブサイトの一般向けページで、「一部の乳がんはマンモグラフィで写し出せない場合があることも知られており、マンモグラフィ検診を受けていれば万全ということではありません。マンモグラフィ検診を受けて『異常なし』と判定されていても、自己検診でご自分の乳房に何か気になることがあれば医療機関を受診してください」と説明している。

 自分の胸の正常な状態を知っておくことで、ほんの少しの違和感に気づくことができる。早期のがんである非浸潤がんはがん細胞が乳管の中だけにとどまっている状態だが、ごく早期にはまだしこりとして感じることはできない。触ってみて「何か違う」と感じたらすぐに受診することが大切だ。こうして自分の乳がんを早期発見した人も多い。

 しこりや変形がないかどうかは、以下の手順で確認していく。

・ 鏡に向かって腕を上げて両腕を上げて、乳房に変形や左右差がないかチェックする。

・ 放射線状、または渦を描くように手を動かしてしこりの有無をチェックする。入浴時は石けんをつけるとすべりがよくなり、調べやすくなる。

・ 仰向けになってあまり高くない枕、あるいはタオルを折り、背中の下に入れる。乳房の外側から内側へ指をまんべんなく滑らせ、しこりの有無をチェックする。

日本乳癌学会
対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する提言(日本乳癌検診学会)
がん検診のあり方に関する検討会(厚生労働省)
Comparison of recommendations for screening mammography using CISNET models(Cancer 2017年8月21日)
[Terahata]

「保健指導リソースガイド」に関するニュース

2019年02月20日
府民のための健活マイレージ「アスマイル」が始動 700万人の健康づくりを支援 大阪府
2019年02月20日
高カロリーの清涼飲料は肥満やメタボの敵 腎臓病のリスクも高める
2019年02月20日
認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明 長寿医療研究センター
2019年02月19日
アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
2019年02月15日
【書籍プレゼント】保健指導リソースガイド10周年特別企画 第1弾!『保健師と放射線 すぐ使える講義・演習・事例検討』を10名様にプレゼント
2019年02月13日
子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
2019年02月13日
低所得が糖尿病リスクに 1.2〜1.4倍の格差 ストレスや就労困難が原因か?
2019年02月13日
地域活動に参加する高齢者はうつになりにくい ソーシャル・キャピタルの整備が必要 3万人を調査
2019年02月13日
「脂肪の味」は6番目の味覚 味覚に敏感になると食欲を抑えられる?
2019年02月13日
後期高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併存 後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析

最新ニュース

2019年02月21日
【参加者募集中!】第5回年次講演会/医療や保健指導の現場で役立つプログラム「スローカロリーのアンケート結果」も発表
2019年02月21日
【健やか21】梅毒予防に向けた啓発動画の作成について(東京都)
2019年02月20日
府民のための健活マイレージ「アスマイル」が始動 700万人の健康づくりを支援 大阪府
2019年02月20日
高カロリーの清涼飲料は肥満やメタボの敵 腎臓病のリスクも高める
2019年02月20日
虐待対策ワーカー配置など児童相談体制強化に向けた取組を強化―東京都
2019年02月20日
認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明 長寿医療研究センター
2019年02月19日
アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
2019年02月15日
【書籍プレゼント】保健指導リソースガイド10周年特別企画 第1弾!『保健師と放射線 すぐ使える講義・演習・事例検討』を10名様にプレゼント
2019年02月14日
風疹のワクチン接種と妊婦への予防を呼びかけ―先天性風疹症候群の報告を受け
2019年02月14日
【健やか21】シンポジウム「社会で守る子どもの安全 〜『ネットの声』を分析してみてわかったこと〜」3/3(日) 
2019年02月13日
子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
2019年02月13日
低所得が糖尿病リスクに 1.2〜1.4倍の格差 ストレスや就労困難が原因か?
2019年02月13日
地域活動に参加する高齢者はうつになりにくい ソーシャル・キャピタルの整備が必要 3万人を調査
2019年02月13日
「脂肪の味」は6番目の味覚 味覚に敏感になると食欲を抑えられる?
2019年02月13日
後期高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併存 後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析
2019年02月07日
【PR】 【資料ダウンロード開始】健康的にダイエット! 保健指導で活用したい「おにぎりダイエット」のススメ
2019年02月07日
【健やか21】第71回「保健文化賞」の募集について
2019年02月06日
H31年度実施を目指す未就園児等全戸訪問事業で児童虐待を防止
2019年02月06日
特設ページ「妊産婦のための食習慣」を開設~健やか親子21公式HP
2019年02月05日
高齢者は運動をどこまでできる? 強めの運動でも楽しんで続けられる
2019年02月05日
宮城県がメタボ対策のアプリを配信 働き盛り世代に「あと1500歩 歩こう」
2019年02月05日
牛乳やヨーグルトの成分が炎症を抑制 血管を改善し脳の活性化にも効果的
2019年02月05日
母親のストレスが子どもの肥満に影響 生後1歳までがとくに重要との結果に
2019年02月05日
「適正受診が医療を守る~上手な医療のかかり方~」へるすあっぷ21 2月号
2019年02月03日
大人のがん教育への活用も。がん医療の現状とサバイバーの今をていねいに描くドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」を鑑賞して
2019年01月31日
【健やか21】子ども予防接種週間(3/1~3/7)/低年齢層の子供の保護者向け普及啓発リーフレット
2019年01月30日
肥満より怖い「サルコペニア肥満」 食事と運動で筋肉低下を予防
2019年01月30日
糖尿病発症の予測アプリは「医療機器」ではない スマホアプリにも規制の波
2019年01月30日
健保組合加入者の37%が肥満 健診検査値で「リスクなし」は19% 健保連
2019年01月30日
すべてのがん患者は運動を治療として行うべき 運動が乳がん患者のQOLを改善 欧州臨床腫瘍学会
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,762 人(2018年12月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶