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【新型コロナウイルス】学校閉鎖が子供の心身を脅かしている「流行阻止の効果は乏しい」 小児科学会が報告書
2020年06月02日

小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策について、日本小児科学会が報告書を公開した。
「学校や保育施設の閉鎖は流行の阻止効果に乏しい」「閉鎖が子供の心身を脅かしている」との見解を示している。
子供は多くの場合、親から感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症。しかし、COVID-19流行にともなう社会の変化の中で、さまざまな被害を被っている、と指摘している
「学校や保育施設の閉鎖は流行の阻止効果に乏しい」「閉鎖が子供の心身を脅かしている」との見解を示している。
子供は多くの場合、親から感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症。しかし、COVID-19流行にともなう社会の変化の中で、さまざまな被害を被っている、と指摘している
小児のCOVID-19感染のほとんどは家族内で起きている
日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会は、小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する国内外の医学的知見をまとめた報告書「小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見の現状」を公表した。
「COVID-19患者の中で小児が占める割合は少なく、そのほとんどは家族内感染」、「学校や保育施設での症例からクラスターはないか、あるとしても極めてまれ」、「小児では成人と比べて軽症で、死亡例もほとんどない」などと指摘している。
その上で、「学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しく、逆に医療従事者が仕事を休まざるを得なくなるために、COVID-19死亡率を高める可能性が推定されている」との見解を示した。
「教育・保育・療育・医療福祉施設などの閉鎖が子供の心身を脅かしており、小児に関してはCOVID-19関連健康被害の方が問題と思われる」と踏み込んだ意見を示している。
学校などでクラスターが起こる可能性は低い
報告書では、「中国では19歳未満の患者は全体の2.4%、米国では18歳未満の患者は全体の1.7%、日本国内でも5月3日の時点で10歳未満の患者総数は246人で1.6%」と、患者に占める小児の割合が少なく、ほとんどは家庭内感染だというデータを提示。
その上で、「学校や保育園におけるクラスターはないか、あるとしても稀」という考えを示し、日本でも学校や保育所でのクラスターの事例は報告されておらず、「香川県の保育所での集団発生では、感染者は職員11人、園児2人だった」と例示している。
「インフルエンザの場合とは異なり、COVID-19が学校や集団保育の現場でクラスターを起こして拡がっていく可能性は低いと推定される」との考えを明らかにしている。
感染の再拡大に備えて
新型コロナウイルス感染症は、国内では6月現在で収束に向かっているが、警戒が緩めば感染が再拡大する可能性がある。政
さらに「小児の COVID-19はほとんどの場合、成人と比べて軽症であることから、経過観察または対症療法で十分である」とした上で、「人工呼吸管理が必要となる症例は、小児の場合割合としては小さいと思われるが、流行のピークに達すると絶対数は増えてくると予想される」と注意を促している。
日本集中治療学会などによる「COVID-19急性呼吸不全への人工呼吸とECMO:基本的注意事項」は、同学会も参画してまとめられた。「日本COVID-19対策ECMOnet」が専門電話番号で24時間対応しているが、小児特有の問題については「小児専門回線」でコンサルトすることができるという。
学校閉鎖は流行阻止効果に乏しい
日本小児科学会は、COVID-19流行期の子どもの心身の健康について「学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しい」として、下記の考えを示し、学校閉鎖にともなうマイナス面を挙げている。
・ 学校閉鎖は、その他のソーシャルディスタンシングと比べて効果は少なく、一方、医療従事者も子供の世話のために仕事を休まざるを得なくなることから、医療資源の損失による死亡数が増加し、結果として学校閉鎖はCOVID-19死亡者をむしろ増加させると推定されている。
・ 学校閉鎖は、単に子供達の教育の機会を奪うだけではなく、屋外活動や社会的交流が減少することとも相まって、子供を抑うつ傾向に陥らせている。
・ 就業や外出の制限のために親子とも自宅に引き籠るようになって、ストレスが高まることから家庭内暴力や子ども虐待のリスクが増すことが危惧されているのに、それに対応する福祉施設職員が通常通り就業できていない状況が拍車をかけている。
休園・休校が子供や保護者、社会に及ぼした影響
5月25日に緊急事態宣言が全国で解除され、分散登校やその他の手段を用いながら、徐々に学校生活が再開されつつある。6月の現時点で、全国の多くの学校などが授業を再開している。同学会はこれについて、「新型コロナウイルス感染症に対する保育所・幼稚園・学校再開後の留意点について」を公表。
現状について、「感染対策を徹底した上での学校再開であっても、誰もが感染する可能性があります」とした上で、「感染者や関係者が責められることのない社会を築きましょう」と提言している。
「もし感染が生じた場合、対象となる学校関係者・保護者・園児/児童/生徒が差別、偏見、誹謗中傷、いじめなどで辛い思いをすることがないようにしなくてはなりません。新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識を持って、感染者に対しても偏見なく温かい思いで迎える社会を構築していく必要があると考えます」としている。
休所・休園・休校のもたらす影響として、▼子供の教育の遅れ、▼生活習慣の乱れ、▼運動不足、それによる体重増加、▼栄養の偏り、▼食環境の変化、▼家庭内での虐待の増加、▼保育所・幼稚園・学校での福祉活動の低下、▼保護者の就労困難・失業、▼祖父母などの高齢者との接触機会の増加などのの問題点を挙げている。
同学会は「保育所・幼稚園・学校生活は、子供にとってもっとも基本的かつ大切な活動」と指摘し、「休園・休校が子供や保護者、社会に及ぼした影響を考慮しつつ、より良い未来を築くためにみなさんで取り組みましょう」と呼びかけている。
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