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【新型コロナ】BCGワクチン接種を義務化すると、新型コロナの拡散率を低下できる可能性 130ヵ国以上を比較
2020年09月01日

京都大学は、BCGワクチン接種が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡散を防いでいる可能性があるという研究結果を発表した。
BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死者数ともに増加率が有意に低いことが明らかになった。
BCGワクチンの接種義務を制度化することで、COVID-19の流行を抑制できる可能性がある。
BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死者数ともに増加率が有意に低いことが明らかになった。
BCGワクチンの接種義務を制度化することで、COVID-19の流行を抑制できる可能性がある。
日本人で感染者数と死亡者数が少ないのはBCGワクチン接種を受けているから?
研究は、京都大学こころの未来研究センターの北山忍特任教授(米ミシガン大学教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Advances」に掲載された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染者数や死亡者数は国ごとに大きく異なる。これを説明する要因として、BCGワクチン接種義務の制度が関わっているのではないかと議論されている。
たとえば、日本はBCGワクチン接種義務の制度が戦後一貫してある。そして、日本は米国より感染者数、死亡者数の両方で格段に低い。米国はBCGワクチン接種義務を制度化したことがない。
しかし、現在のところ、国際比較データの分析にともなう方法的問題があり、結論は明らかにされていない。とくに感染者数や死亡者数の報告に関わるバイアスが結果に影響している可能性がある。また、個々の国は非常に多くの面で異なるため、交絡要因をできる限り排除し、できるだけ多くの国を比較することが必要となる。

出典:京都大学、2020年
BCGワクチンの接種を義務付けていた国で死者数などの増加率が低い
そこで研究グループは、国ごとの流行初期30日間における感染者数と死者数の増加の割合に注目することにより、報告バイアスの効果を排除し、さらに、さまざまな交絡要因を統計的に統制した上で、少なくとも2000年までBCGワクチンを義務付けてきていた国とそうでない国、計130ヵ国以上を比較した。
その結果、BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死者数ともに増加率が有意に低いことが明らかになった。さらに、同様の結果は、期間を流行の初期15日間に設定した場合にも確認された。
たとえば、米国ではBCGワクチン接種義務を制度化したことはないが、もしも接種義務を数十年前に制度化していれば、2020年3月30日における死亡者総数は667人であっただろうと推定される。これは実際の数(2,467人)の約27%にあたる。
流行初期30日間を計130ヵ国以上で比較

出典:京都大学、2020年
高齢者のBCGワクチン接種は保護効果があるという試験結果
BCGワクチンの接種によるCOVID-19に対する保護効果を調べた臨床試験の結果は、海外ではすでに報告されている。この研究はギリシャのアッティコン大学病院などで実施されたもので、結果は科学誌「Cell」に発表された。
高齢者198人を対象とした試験により、BCGは最初の感染までの時間と新規の感染の発生を減少させ、ウイルス性気道感染症に対する強力な保護効果があることが示された。
BCGワクチンの接種により、自然免疫を獲得し、抗炎症性のサイトカイン産生が増加する傾向がみられたという。
研究者らは、「COVID-19を含む呼吸器感染症に対するBCGの保護効果を評価するには、より大規模な研究が必要」としながらも、「BCGワクチン接種は、高齢者に対して安全である可能性があり、感染症から保護する作用を期待できる」と結論している。
乳児への定期ワクチン接種が優先されるという声明も
京都大学の今回の研究では、BCGワクチンの接種義務を制度化することで、COVID-19の流行を抑制できる可能性があることが示された。
「現在、感染症がどのような社会・文化・生態的要因により媒介されるかを解明すべく、BCGワクチンの接種義務以外のさまざまな要因の効果も同時に検討しており、順次発表していく予定」と、研究者は述べている。
一方、日本ワクチン学会は、COVID-19に対するBCGワクチンの効果について、慎重な見解を示している。「BCGワクチン接種の効能・効果は結核予防であり、また主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない」と注意を促している。
BCGワクチンは、結核に対する予防ワクチンであり、日本では小児に対して予防接種法にもとづく定期接種が実施されている。定期接種の対象者は0歳児であり、結核性髄膜炎や粟粒結核など低年齢小児で頻度の高い重症の結核を予防する有用性がもっとも高いという理由にもとづいている。
「BCGワクチンがCOVID-19に対して有効ではないかという仮説は、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もできない」「本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない」としている。
京都大学こころの未来研究センターMandated Bacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccination predicts flattened curves for the spread of COVID-19(Science advances 2020年8月5日) Activate: Randomized Clinical Trial Of Bcg Vaccination Against Infection In The Elderly(Cell 2020年8月31日)
日本ワクチン学会
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