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スマホで糖尿病を判定 早期の糖尿病を見逃さないために 簡単なテストで感度は80%以上
2020年09月07日

スマートフォンを使い、糖尿病を早期発見できる技術を開発したと、米国のカリフォルニア大学が発表した。スマホで光を当て、指先を透過した光をセンサーで読みとることで、糖尿病を80%以上の感度で検出できるという。
糖尿病の早期の発見と治療につなげられると期待されている。研究成果は、科学誌「ネイチャー メディシン」に発表された。
糖尿病の早期の発見と治療につなげられると期待されている。研究成果は、科学誌「ネイチャー メディシン」に発表された。
スマホで低コストに糖尿病を判定
「糖尿病は深刻な健康障害をもたらす疾患です。糖尿病のリスクの高い人を効率良く見つけて、未診断率を減らすためのツールが必要とされています」と、カリフォルニア大学医学部心臓科学のジェフリー ティソン氏は言う。
2型糖尿病は血糖値が高くなる疾患だが、初期の段階では自覚症状が乏しく、検査を受けなければ自分の血糖値は分からない。
「血液検査のような痛みのともなうものではなく、スマホを使った、低コストで誰でもできる簡単なテストにより糖尿病を発見できれば、早期に治療を開始できるようになります」と、ティソン氏は指摘する。
そこで研究グループは、スマートフォンに組み込まれた機能を利用して、簡単に糖尿病のスクリーニングができるツールの開発に取り組んだ。
自分が糖尿病であることを知らない人が半分
高血糖は体のほぼすべての臓器に影響をもたらす。糖尿病の人が治療を受けず、血糖値が高い状態が続くと、心臓疾患、脳卒中、腎臓病、網膜症、神経障害などの合併症が起こる。
最近では、血糖値が高い状態であると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合の重症化リスクが上昇することも分かってきた。
糖尿病は深刻な疾患であるにも関わらず、2型糖尿病の人の多くは診断を受けておらず、治療も受けていない。
とくに若い世代であると、自分が糖尿病であることを知らない人が半分に上るという報告がある。
スマホで指先の色のわずかな変化を測定

80%以上の感度で糖尿病を検出
研究グループは、ディープラーニング(深層学習)によるアルゴリズムも開発。測定の精度を高めるのに成功した。
5万3,870人の糖尿病患者から得たPPGのデータをもとに、2つのグループを対象に検証を行ったところ、1つでは81%、もう1つでは82%の精度で糖尿病患者を識別できることが示された。
この技術で「糖尿病ではない」と判定された人では、実際に92〜97%が糖尿病を発症していなかった。
年齢、性別、体格指数(BMI)、人種などの他の因子と組合せることで、精度をさらに高められることも確かめた。
研究者らは、臨床応用での有効性を判断するために、さらなる研究が必要としながらも、「このツールにより糖尿病の検出率を急速に高められる可能性があります」と述べている。
身近なツールであるスマホを使い自己チェック
「スマホを使った糖尿病のリスクの評価は、診断ツールではなく、医師によるアドバイスでもありません」と、カリフォルニア大学医学部心臓科学の臨床インストラクターであるロバート アヴラム氏は言う。
「低コストで簡単で大規模なテストにより、異常が発見された人に医療機関に行ってもらい、医師による診断と診療につなげようという狙いがあります」としている。
糖尿病の診断を行うために、血糖値の測定、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cの検査、ブドウ糖75gを飲み2時間後の血糖値を測定するブドウ糖負荷試験が必要となる。
中国全土で17万287人を対象とした調査研究で、全員に空腹時の血糖値とHbA1cの測定を行い、糖尿病と診断されなかった人にもブドウ糖負荷試験を行ったところ、糖尿病の有病率は10.9%、予備群が該当するのは35.7%であることが明らかになった。
2型糖尿病の予備群の割合は、糖尿病の人の実に3倍にも上ることが明らかになった。糖尿病予備群の数は、考えられている以上に多い可能性がある。
「糖尿病と判定されるほどではなくとも、血糖値が高くなっている人に、もっとも身近なツールであるスマホを使い自己チェックしてもらい、異常が見つかったら速やかに医師の診療を受けられるようにする仕組みを作る必要があります」と、アヴラム氏は指摘している。
Smartphones May Help Detect Diabetes(カリフォルニア大学 2020年8月17日)A digital biomarker of diabetes from smartphone-based vascular signalsNature Medicine(2020年8月17日)
Prevalence and Ethnic Pattern of Diabetes and Prediabetes in China in 2013(米国医師会雑誌(JAMA) 2017年6月27日)
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