ニュース
世界初、他職種連携による産後の自殺予防対策プログラム「長野モデル」を開発
2020年09月08日

周産期の自殺の原因は産褥精神病や産後うつ病が多い 早期発見・治療が必要
国立成育医療研究センターが人口動態統計を分析・研究したところ、2015~16年の妊産婦の自殺は102人と、身体的な原因による死亡(74人)を上回り、周産期死亡の原因の1位だった。
妊婦の自殺は胎児の死亡につながり、また産褥婦の自殺は子どもとの心中例も少なくないなど、児童虐待の観点からも周産期の自殺対策は極めて重要と考えられている。
一方、周産期の自殺の原因は産褥精神病・産後うつ病などが多く、早期に発見・治療が行えれば一般的に予後の良い疾患と言われている。そのため母子保健における早期発見・早期介入システムを確立すれば多くの母子の命を救うことができると考えられる。しかし世界的に見てもこれまで有効な妊産婦の自殺予防対策システムはなく、有効な地域介入プログラムの確立が望まれていた。
このような中、「長野モデル」は同センターこころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科・立花良之診療部長らの厚生労働科学研究班グループによって開発された。
具体的には新生児訪問時に保健師が「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」を使い、全ての母親に対して自殺念慮のアセスメント(評価)を行う。EPDSはイギリスで開発された産後うつ病のスクリーニング票で国内外にて使用されている。
現在の母子保健システムを活用して取り入れられる「長野モデル」
「長野モデル」ではEPDSで自殺念慮を認めた場合に心理的危機介入を行い、保健師や精神科医、産科医、助産師、看護師、小児科医、医療ソーシャルワーカーなど多職種のチームでフォローアップを行うのが特長。
心理的危機介入では、自殺予防学でいう「TALKの原則」の手法を応用し、Tell(伝える)・Ask (尋ねる)・Listen(聴く)・Keep safe (安全を確保する)の姿勢で関わる。このことにより、保健師などが自殺念慮を認めた母親に心理的に寄り添い、支えることができる。

掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年08月21日
- 歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
- 2025年07月07日
- 子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
- 2025年06月27日
-
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】 - 2025年06月17日
-
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断 - 2025年06月02日
- 肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
- 2025年05月20日
-
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化 - 2025年05月16日
- 高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
- 2025年05月16日
- 【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
- 2025年05月12日
- メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
- 2025年05月01日
- ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】