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世界初、他職種連携による産後の自殺予防対策プログラム「長野モデル」を開発

 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の研究チームがこのほど、産後の自殺予防対策プログラム「長野モデル」を開発。「長野モデル」によって産後の母親の自殺念慮(自殺を考えること)やメンタルヘルスが統計的に優位に改善し、その有効性が実証されたと発表した。
 妊娠期から多職種が連携して介入する自殺予防のための母子保健システムとしては世界初のモデルだという。
周産期の自殺の原因は産褥精神病や産後うつ病が多い 早期発見・治療が必要

 国立成育医療研究センターが人口動態統計を分析・研究したところ、2015~16年の妊産婦の自殺は102人と、身体的な原因による死亡(74人)を上回り、周産期死亡の原因の1位だった。

 妊婦の自殺は胎児の死亡につながり、また産褥婦の自殺は子どもとの心中例も少なくないなど、児童虐待の観点からも周産期の自殺対策は極めて重要と考えられている。

 一方、周産期の自殺の原因は産褥精神病・産後うつ病などが多く、早期に発見・治療が行えれば一般的に予後の良い疾患と言われている。そのため母子保健における早期発見・早期介入システムを確立すれば多くの母子の命を救うことができると考えられる。しかし世界的に見てもこれまで有効な妊産婦の自殺予防対策システムはなく、有効な地域介入プログラムの確立が望まれていた。

 このような中、「長野モデル」は同センターこころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科・立花良之診療部長らの厚生労働科学研究班グループによって開発された。

 具体的には新生児訪問時に保健師が「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」を使い、全ての母親に対して自殺念慮のアセスメント(評価)を行う。EPDSはイギリスで開発された産後うつ病のスクリーニング票で国内外にて使用されている。

現在の母子保健システムを活用して取り入れられる「長野モデル」

 「長野モデル」ではEPDSで自殺念慮を認めた場合に心理的危機介入を行い、保健師や精神科医、産科医、助産師、看護師、小児科医、医療ソーシャルワーカーなど多職種のチームでフォローアップを行うのが特長。

 心理的危機介入では、自殺予防学でいう「TALKの原則」の手法を応用し、Tell(伝える)・Ask (尋ねる)・Listen(聴く)・Keep safe (安全を確保する)の姿勢で関わる。このことにより、保健師などが自殺念慮を認めた母親に心理的に寄り添い、支えることができる。

 実際に「長野モデル」の事業開始前に妊娠届を出した母親と、事業開始後に妊娠届を出した母親各約230人を対象に、3~4カ月児健診時に自殺念慮をアセスメントしたところ、後者には改善が示され、産婦自殺予防対策の有効性が明らかになった。

 また後者におけるメンタルヘルスの向上効果は産後3~4カ月だけではなく、産後7~8カ月健診でも見られたという。

 「長野モデル」は新たな保健師などの増員や、妊産婦自殺対策の予算などを必要とするものではなく、現在の母子保健システムのリソースを活用して進められる。そのため今後は、ほかの地域の母子保健関係者を対象に研修会を開くなどして「長野モデル」の介入手法の均てん化を図っていく方針。

[yoshioka]