ニュース

【新型コロナ】世界メンタルヘルスデー コロナ禍によるストレスは深刻 早急なサポートが必要

 10月10日は「世界メンタルヘルスデー」だった。
 赤十字国際委員会(ICRC)などはこれに合わせて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が精神面にどのような影響をもたらしたかを国際調査した。
 その結果、半数以上が「COVID-19の拡大がメンタル面に悪影響を与えている」と回答。
 「コロナ禍により職場でのストレス、不安、極度の疲労が増加している」という調査も発表された。
コロナ禍がメンタル面に影を落としている
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、世界中のコミュニティーに重いストレスや苦痛をもたらしていることが、赤十字国際委員会(ICRC)などの調査で明らかになった。

 ICRCは、調査報告書『何より必要なのは声を聞くこと~コロナ禍におけるメンタルヘルスと社会的な心のケアの重要性』を公表。調査は、コロンビア、レバノン、フィリピン、南アフリカ、スイス、ウクライナ、イギリスの7ヵ国の3,500人を対象に、今年9月に実施した。

 調査では、半数以上の51%が「COVID-19の拡大がメンタル面に悪影響を与えている」と回答。新たにメンタル面に支障をきたす人が出てくる一方で、以前からメンタル状態が不安定だった人がさらに症状を悪化させるケースも少なくないことが示された。
精神衛生面での早急なサポートが必要
 「人道的な対応の一環として、メンタルヘルスと社会的な心のケアに対してより多くの資金提供を早急に行うことが求められています」と、ICRCは主張している。

 「紛争や災害に巻き込まれた何百万もの人々の精神的苦痛が、コロナ禍で増しています。ロックダウンなどの外出制限、社会からの孤立、経済的負担の増加により、人々の精神衛生面だけでなく、診療を受ける機会にも影響が生じています」と、ICRCのロバート マルディーニ事務局長は述べている。

 「精神の健康は、肉体の健康と同様に重要です。危機的な状況下では、精神衛生面でのサポートを早急に行うことが、よりいっそう重要になってきます」と指摘している。
最前線で働く医療関係者へのサポートも必要
 とくに医療関係者、ボランティア、コミュニティーワーカー、ソーシャルワーカーなど、最前線で働く人々はCOVID-19と隣り合わせに身を置くことが多く、長時間労働を余儀なくされている。こうした人々への迅速なサポートが必要としている。

 調査では4人に3人(73%)が、「最前線で働く保健医療関係者や初期対応にあたる人々は、一般の人よりもメンタルヘルス面でのサポートが必要」と回答。被災地支援を並行して行っている人たちも、常にストレスにさらされ、過酷な状況下におかれているという。

 「コミュニティーや医療関係者も含めて、すべての人が生活を再建し、危機を切り抜けることができるよう、私たちはこれまで以上にメンタルヘルスや心のケアに注力しなければなりません」と、IFRCのジャガン チャパガン事務総長は言う。

 「コロナ禍にある人々が、メンタルヘルスや心のケアを早期に、また継続して受けられけるようにする必要があります」。
職場でのストレス、不安、疲労も深刻
 ソフトウェア会社のオラクル・コーポレーションなどが実施した別の調査でも、コロナ禍により職場でのストレス、不安、極度の疲労(燃え尽き症候群)が増加していることが示されている。

 調査は、日本を含む11ヵ国の企業の従業員、マネージャー、人事部門リーダー、経営幹部など、1万2,000人を対象に行ったものだ。

 それによると、70%は2020年はこれまでのどの年よりも職場でストレスと不安を感じていると回答。日本でも61%がストレスと不安の増加を感じている。

 このストレスと不安の増加は、世界の従業員の78%のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、「ストレスの増加」(38%)、「ワーク・ライフ・バランスの喪失」(35%)、「極度の疲労(燃え尽き症候群)」(25%)、「社交がないことによる気力減退」(25%)、「孤独感」(14%)を生じている。

 多くみられた影響は、「睡眠不足」(40%)、「体調不良」(35%)、「家庭での幸福感の減少」(33%)、「家族関係の悪化」(30%)、「友人からの孤立」(28%)だった。
リモートワークには利点と欠点が
 世界的パンデミックの影響は職場にとどまらず、家庭にも及んでいるようだ。

 85%の人々が、日本でも76%が、職場でのメンタルヘルスの問題(ストレス、不安、極度の疲労)が家庭生活に影響していると回答している。

 リモートワークについては、「コロナ禍以前の仕事内容よりもリモートワークに魅力を感じるようになった」(62%)、「家族との時間が増えた」(51%)、「睡眠時間の増加」(31%)、「作業スピードが上がった」(30%)といった前向きの評価がみられた。

 その一方で、リモートワークによって「公私の境界がより曖昧になった」(41%)という意見も多い。35%の人々が以前に比べ、毎月40時間以上多く働き、25%の人々が過剰労働による極度の疲労におちいっている。

 さらに、76%の人々が、日本でも74%が、「自分の会社が今以上に従業員のメンタルヘルスを守る必要がある」と回答した。企業側でも51%が、COVID-19の結果として、「メンタルヘルスのサービスまたはサポートを追加した」と回答している。
メンタルヘルス改善にAIやロボットを活用
 この調査では、もうひとつ興味深いことが示されている。仕事でのメンタルヘルスの改善に、AI(人工知能)やロボットを活用したいと思っている人が多いことだ。

 医療では「看護師や保健師などの医療関係者による温かみのある対応は、AIやロボットに代替されにくい」という主張もあるが、今回の調査は、AIやロボットへの理解は予想以上に進んでいるという結果になった。

 メンタルヘルスのサポートを、人よりもロボットに頼りたいという回答は82%で、日本でも82%に上った。

 75%は、仕事でのメンタルヘルスの改善にAIが役立ったと回答した。主な利点として、「仕事の効率化に必要な情報の提供」(31%)、「作業の自動化と仕事量の削減による極度の疲労の防止」(27%)、「仕事の優先順位付けによるストレスの軽減」(27%)が挙げている。

 AIやロボットを活用したい理由としては、「ジャッジメント・フリー・ゾーン(無批判区域、決めつけのない環境)を与えてくれる」(34%)、「問題を共有する上での先入観のない感情のはけ口を提供してくれる」(30%)、「医療に関する質問に迅速に回答してくれる」(29%)が挙げられた。

World Mental Health Day: New Red Cross survey shows COVID-19 affecting mental health of one in two people(赤十字国際委員会 2020年10月7日)
Crisis within a crisis: Mental health distress rises due to COVID-19(赤十字国際委員会)
日本オラクル
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
2025年05月01日
【デジタル技術を活用した血圧管理】産業保健・地域保健・健診の保健指導などでの活用を期待 日本高血圧学会
2025年04月17日
【検討会報告】保健師の未来像を2類型で提示―厚労省、2040年の地域保健を見据え議論
2025年04月14日
女性の健康のための検査・検診 日本の女性は知識不足 半数超の女性が「学校教育は不十分」と実感 「子宮の日」に調査
2025年03月03日
ウォーキングなどの運動で肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶