オピニオン/保健指導あれこれ
乳がんとともに生きる人を理解する

No.9 周囲の人にがんを告知するとき、どうすればいい?

帝京大学医学部附属病院 帝京がんセンター 認定遺伝カウンセラー
青木 美保
 がんであることをほかの人に知らせるのは、たとえ家族や親しい友人であっても、とても難しいことです。それはがんが進行しているほど難しく感じるでしょう。

 それは、がんと告知された患者さんがショックを受けたように、がんだと知らされた周りの人も少なからずショックを受けることを、誰もが知っているからです。

 
 誰になぜ知らせるほうがいいか

 がんであることを誰に知らせる必要があるか、また誰に知らせたいか、どこまで、どのタイミングで知らせるかをよく考えてみましょう。

 がんになったら、通院や入院による治療が必要になり、治療スケジュールやその副作用によっては、日常生活・家事・仕事を手伝ってもらったり、さまざまなスケジュールや内容の見直し、変更を余儀なくされることもあるでしょう。がんであることを知らせる必要がある人は、がんであることによって直接影響を受ける方です。

 たとえば、一緒に生活しているパートナーや子どもなど、職場の人事担当者や直接の上司(派遣であれば派遣元)、学校の指導教官、また本人が乳がんになったためにリスクが高くなる血縁者(両親や姉妹など)などでしょう。 一緒に生活している家族は、あなたががんになったと知れば大きなショックを受けるでしょうが、日常生活や家事をサポートしてもらうためにも、早いうちに知っておいてもらう必要があるでしょう。

 働いている方は、職場の人事担当者や直接の上司、派遣であれば派遣会社の担当者、通学中なら学校の指導教官にも、早めに相談しておきましょう。乳がん治療を受けていることを上司や同僚に伝えておけば、治療のために業務に支障がある場合に、業務内容や配属先を考慮してもらったり、周囲の協力が必要になることもあるでしょう。実際に同僚がサポートしてくれて助かった、仕事がやりやすくなった、もっと早く伝えておけばよかったという声もあります。

 また、家族が乳がんになったことで、将来乳がんになるリスクが高くなる両親や姉妹には、治療が一段落したら、知らせておくほうがいいでしょう。

■パートナーに伝える

 パートナーには、事実をできるだけ早く知らせましょう。乳がんだと知れば、パートナーもショックを受けることでしょう。それでも、がんや治療に対する恐れや不安などの気持ちをパートナーと率直に共有できれば、大きな心の支えになるはずです。パートナーは気の利いた言葉をかけようと無理する必要はありません。また、根拠のない精神論で頑張れ、頑張れとただ励ましの言葉をかけるばかりでは、かえってお互いに辛くなるかもしれません。

 また、乳がんの原因はまだ科学的に解明されていませんので、なぜ乳がんになったのかという理由を突き詰められると辛くなるでしょう。理由がわからないことは脇に置いておきましょう。パートナーは話をよく聞いてあげて、病気だからといって特別扱いにするのではなく、普段通りに接して、温かく見守るだけで、本人には大きな励ましになるものです。

 パートナーも少なからずショックを受けている状態なので、できるだけ自然体でいることが、パートナーの精神的な負担をできるだけ軽くできる方法かもしれません。また、パートナーも心身の健康が大事です。できるだけ心身を休めるようにして、抱え込みすぎて辛くなる前に、誰かに打ち明けるようにすると、気持ちが軽くなるでしょう。

■子どもに知らせる

 母親が乳がんになったことを子どもに知らせることは、子どもの年齢や性別にかかわらず、難しいことでしょう。

 子どもにショックを与えたくないと思うと、話しづらいかもしれません。でも、子どもは小さければそれなりに理解しますし、年長になれば、親の病気や治療が必要なことをかなり理解できます。

 多くの親は、自分の治療方針が決まるまで、子どもに伝えるのを待つことが多いのです。それは、治療方針が決まれば、治療のために起こる日常生活や家事分担に変化を想定できるからでしょう。

 子どもに隠し事をすると、子どもは母親に何か心配事があることを鋭く察知して、余計に不安になるでしょう。子どもにはできるだけ正直でいましょう。病気のことを伝えるだけでなく、病気と闘うために、お母さんがどのように頑張っているかを伝えれば、子どもも応援してくれるでしょう。また、子どもは自分のせいで母親が病気になったのではないかと思いこむこともあります。乳がんになったのは、子どものせいではなく、また誰のせいでもないことを伝えてあげましょう。

 母親が病気になると(とくに母子家庭では)、子どもは経済的な問題のために、自分は将来学校に通えなくなるのではないかと不安になることがあります。

 これは子どもが不安でも、親には言いくいことかもしれません。そのため、母親が乳がんでも、子どもが今後もきちんと学校に行けるようにすることをはっきり言葉で伝えてあげれば、子どもは安心できるでしょう。

■両親に知らせる

 娘が乳がんだと両親に知らせるのも、また辛いことです。母親は娘に代わって、自分が乳がんだったらよかったのにと望むかもしれません。親は手助けの必要がなくても、子どもの手助けをしたいと願うものです。親が遠方に住んでいたり、時間的・経済的な余裕がないかもしれません。現実を変えるために何もできないとわかっていても、それでも親は駆け付けたいと思うでしょう。

 親に伝えたら、遠慮しないで、できるだけ建設的なサポートが得られるように、どのような手助けをしてもらうと助かるのか、具体的なサポートの希望を伝えるといいでしょう。また、親に知らせることが互いに負担になるなら、治療が一段落してから知らせるという選択肢もあるでしょう。

■姉妹に知らせる  きょうだいが乳がんになると、姉妹が将来乳がんになるリスクは、そうでない方よりも高くなります。

 姉妹は、次に乳がんになるのは自分ではないかと恐れているかもしれません。あなたがどんな治療を受けて、どのように克服したかを教えてあげれば、その恐れを解消する助けになるでしょう。

■友人に知らせる

 友人にどこまで知らせるかは難しい問題です。とくに助けてくれる親しい友人や、がんによってストレスが多くなって、感情的に影響するかもしれない友人には、知らせておくといいでしょう。

 病気についてオープンに話しやすい友人もいれば、何も話せない人もいるかもしれません。自分に負担がない範囲でコミュニケーションを取ればいいし、無理に話さなくてもいいのです。また、直接話すことが辛ければ、Eメールなどを利用すれば、時間の節約になりますし、体の負担も減らせるでしょう。

■職場の上司や同僚に伝える

 職場の人事や総務担当者や直接の上司(派遣の方は派遣元の担当者)に、早めに相談しておきましょう。がんの治療は長期にわたることも多いですし、治療完了後もがんの経過観察のために定期的な診察や画像検査が必要となることが多いのです。そのため、有給や時短制度を利用することもあるでしょう。

 もしがんの治療や経過観察により業務に支障が生じるなら、業務内容や配属先を考慮してもらったり、周囲のサポートが必要になるかもしれません。そうなる前に、乳がん治療を受けていること、治療のスケジュールなどについて上司や同僚に伝えておく必要があります。必要によっては、主治医の診断書を人事や総務担当者(派遣の方は派遣元)、産業医に提出する必要があるでしょう。また、利用できる会社の支援制度について人事や総務に確認したり、自分で就業規則や福利厚生制度を調べておくといいでしょう。

 がんであることを職場ではどこまで知らせるかは、自分が負担にならない範囲でいいのです。職場の方とは互いに負担のない範囲でコミュニケーションをとるようにしましょう。同じ情報を受け取っても、対処の仕方は人それぞれです。なかには、あなたががんであることを知ったとたん、急に態度がよそよそしくなる人もいるかもしれません。それは、単にがんに対して恐ろしいイメージをもっているだけかもしれません。もしかしたら、がんの方とコミュニケーションをとった経験がなく、本人もどうすればいいかわからず混乱しているだけかもしれません。

 今は治療を受けながら、元気に働いているがん患者さんはたくさんいます。そのような姿を職場の方が見せることで、周りの方のがんに対するイメージも変わっていくかもしれません。

「働く人のがん対策」に関するニュース

2017年07月19日
乳がんの新たな治療薬の開発に道 ホルモン療法の問題を回避できる可能性
2017年07月13日
大腸がんを人工知能(AI)で検査 見逃しやすいがんを98%の精度で発見
2017年07月06日
厚労省「データヘルス改革」の工程表を発表 2019年までにシステム構築
2017年07月06日
「人工知能」(AI)を保健分野に活用 6分野で開発、安全対策も 厚労省
2017年07月05日
【連載更新】No.10 治療前の画像検査とがんの臨床試験
2017年06月28日
がん検診の受診率 50%超は男性肺がんのみ 乳がんと子宮頸がんは低迷
2017年06月28日
膵臓がん 簡易な血液検査で早期発見 鹿児島で臨床研究を開始
2017年06月21日
世界の3人に1人が肥満か過体重 世界規模で保健指導が必要
2017年06月21日
「健康長寿新ガイドライン」を策定 東京都健康長寿医療センター
2017年06月15日
乳がん検診は今後はどう変わる? 「高濃度乳房」の実態調査を開始

最新ニュース

2017年07月21日
【新連載】高齢者の外出、移動の問題を考える
2017年07月20日
【申込受付中】東京糖尿病療養指導士(東京CDE)「受験者用講習会」
2017年07月20日
【健やか21】ヒアリに刺された場合の留意事項について
2017年07月19日
解説「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
2017年07月19日
ウォーキングで下半身を強くすると運動を続けやすい 「老化は足から」
2017年07月19日
「糖尿病性腎症の重症化予防」 課題が浮き彫りに 地域連携の整備が必要
2017年07月19日
うつ病を簡単な血液検査で早期発見 血液診断マーカーを発見 徳島大
2017年07月19日
乳がんの新たな治療薬の開発に道 ホルモン療法の問題を回避できる可能性
2017年07月19日
熱中症を防ぐための5ヵ条 熱中症は軽症のうちに対処すれば怖くない
2017年07月18日
衛生行政報告例の結果を公表 -人口10万あたりの保健師数は長野が最多
2017年07月14日
【健やか親子21】妊産婦メンタルヘルスケアマニュアルの掲載について
2017年07月14日
集中治療における急性腎障害バイオマーカー~L-FABPの可能性~
2017年07月14日
【連載更新】No.3 開業に向けて ‐開業準備や時期について ‐
2017年07月14日
健診・検診/保健指導実施機関 集計結果と解説(2016年度版)
2017年07月13日
特定健診72.8%、特定保健指導15.2% 実施率は横ばい 健保連調査
2017年07月13日
座ったままの時間が長いと血液がドロドロに 立ち上がって運動すると改善
2017年07月13日
カフェインの過剰摂取は危険 厚労省が注意「健康リスクを知って」
2017年07月13日
災害時の心のケアをする専門家チーム「DMORT」 被災者の悲嘆に対応
2017年07月13日
大腸がんを人工知能(AI)で検査 見逃しやすいがんを98%の精度で発見
2017年07月12日
蚊意外にキケンあり?-厚労省が夏の海外旅行での感染症予防を呼び掛け
2017年07月10日
【情報提供のお願い】健診・検診/保健指導機関リスト掲載について
2017年07月10日
「第6回健康寿命をのばそう!アワード(母子保健分野)」応募受付中!
2017年07月07日
産業保健師のキャリアとして必要なものとは?【産保PC第1回レポート】
2017年07月07日
【連載更新】No.2 保健師は開業できるのか?
2017年07月06日
厚労省「データヘルス改革」の工程表を発表 2019年までにシステム構築
2017年07月06日
「人工知能」(AI)を保健分野に活用 6分野で開発、安全対策も 厚労省
2017年07月06日
フライドポテトを週に2回以上食べると死亡リスクが上昇 揚げ物に注意
2017年07月06日
歯を20本以上を残すための4つの対策 セルフケアが決め手に
2017年07月06日
水虫に対策するための8つの方法 しっかりケアして水虫に対処
2017年07月05日
【連載更新】No.10 治療前の画像検査とがんの臨床試験
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 6,237 人(2017年07月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶