No.4 治療前の画像検査とがんの臨床試験
乳がんの手術や治療前に、まずはマンモグラフィや超音波検査で、乳房内に腫瘤があるかどうか、腫瘤の大きさや広がり、わきの下のリンパ節(腋窩(えきか)リンパ節)に転移があるかどうかなどを確認するために、マンモグラフィや超音波検査などが行われます。
その後、乳がんと確定して、手術や治療方針を決めるために、乳房MRIやCTで、より詳細に乳房内のがんの広がりやリンパ節転移などを調べます。
マンモグラフィやCTは、若干被曝がありますが、通常の方では健康に影響はありません。妊娠中や妊娠している可能性がある方は、被曝のない超音波検査やMRIで検査します。
画像検査によって得意・不得意があり、またメリット・デメリットがあります。1つの画像検査で必要な情報が得られないこともあり、その場合は複数の画像検査で補い合います。
とくに、乳腺が発達している乳腺濃度が高い方(デンス・ブレストともいいます)では、マンモグラフィでは観察しづらく、超音波検査やMRIが併せて勧められます。あまり知られていない事実ですが、日本人の多くはデンス・ブレストです。
デンス・ブレストついては、NPO法人乳がん画像診断ネットワークのウェブサイトを参照ください。 ≫Are you dense? あなたの乳房はマンモグラフィに向いていますか?
1)マンモグラフィ
マンモグラフィは、乳房専用のレントゲン(X線)検査です。乳房内の組織(乳腺、脂肪、石灰化など)はそれぞれX線吸収率が異なるという性質を利用して、画像化します。乳房を圧迫して薄く均一に広げることで、より少ないX線量で、乳房の内部まで鮮明に撮影できます。腫瘤や石灰化(乳房の一部にカルシウムが沈着したもの)があるかどうかなどを調べます。
近年日本でも、従来のフィルム式のアナログマンモグラフィに代わり、より鮮明な3次元画像が得られるデジタルマンモグラフィが普及して、多くの施設で受けられるようになりました。また、研究中の新しいデジタルマンモグラフィは、デンス・ブレストの方でもより鮮明な画像が得られ、今後さらに研究が進み、臨床に普及することが期待されています。
2)超音波検査
超音波の反響を使って、臓器の内部を観察できる、安全で簡単な方法です。乳房内に腫瘤があるかどうか、大きさ、腋窩リンパ節に転移があるかどうかなどを確認できます。超音波検査は、液体をよく区別できますので、良性変化である「のう胞」を診断することも得意です。被曝もなく、妊娠中の方でも使えます。
ただし、超音波は多少ぶれがあるため正確なサイズの計測が難しく、検査技師の経験や技量に大きく左右されます。また、脂肪が多いと超音波が奥まで届きにくく、乳房が大きい方では深い位置にある腫瘤は観察しにくくなります。
3)MRI(核磁気共鳴画像法)
MRIは、人工的に作った強力な磁場を用いて、断層撮影を行い、コンピューターで3次元画像を作ります。乳房専用のMRIでは、患者さんがうつぶせになった状態で、乳房をより詳細に撮影します。通常、手術などの治療を検討する前に、腫瘤ががんかどうか、がんの広がり、大きさ、リンパ節転移などをより詳しく調べるために行います。
MRIでも造影剤を使いますが、ヨード造影剤とは別の物質で、副作用はごくまれです。強い磁場を使うので、心臓ペースメーカーや体内金属が入っている方は使えません。また、狭い検査装置内で30分前後かかるため、閉所恐怖症の方は難しくなります。
4)CT(コンピューター断層撮影)
レントゲン(X線)を使っていろいろな方向から体の断層撮影を行い、組織ごとのX線吸収率の違いなどの情報をコンピューターで解析して、3次元画像を作ることができます。CTでは、手術などの治療を検討する前に、がんの広がり、大きさ、リンパ節転移、乳房以外の臓器の転移などをより詳細に調べます。
通常、レントゲンの吸収率を高める造影剤を血管に注射してから、CTを行う造影CTでは、より画像のコントラストが明瞭になり、より鮮明な画像が得られます。造影剤によるアレルギー反応が、約1%の方に起こることがあります。
1)臨床試験とは
乳がんに効果があるとわかっている新薬で、その投与量を決めるための臨床試験があれば、主治医は参加を勧めるかもしれません。
臨床試験とは、開発中の新しい治療薬や治療法が人に有効で安全かどうかなどを確かめる試験のことです。現在一般的に使われている薬や治療も、これまでの臨床試験で開発されてきたものです。
臨床試験に参加すると、参加者での効果や副作用を観察するために、定期的に診察や採血などが行われ、それは重要な研究データとして蓄積されます。臨床試験の参加者が大きな健康被害を受けることなく、科学的に信頼できる結果が得られるように、参加者を守るさまざまな基準が設けられています。
臨床試験は参加した本人に必ずメリットがあるとは限りませんが、将来医学の進歩につながる可能性がある研究に貢献して、結果的に、同じ病気で苦しむ患者さんを救うことにつながります。日本では臨床試験はまだ限定的ですが、アメリカでは臨床試験は大きな治療選択肢のひとつになっています。
2)臨床試験に参加するには
臨床試験はどの病院でも参加できるわけではなく、その臨床試験に参加している病院でのみ参加可能です。
興味のある臨床試験があれば、治療を受けている病院がその臨床試験に参加しているかどうか、主治医に相談してみましょう。
医師や臨床研究コーディネーターは、臨床研究の内容や流れ、必要な検査や治療、参加期間、メリット、デメリットなどについてわかりやすく説明をしてくれます。参加するかどうかは、患者さんが慎重に判断して決めることになります。
がんの臨床試験を探すには、下記のウェブサイトが役立ちます。
・国立保健医療科学院のリンク臨床研究〔試験〕情報検索ポータルサイト (患者さんと医療者向け) ・ 国立がんセンターがん情報サービスのウェブサイト (医療者向け)
「乳がんとともに生きる人を理解する」もくじ
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