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夏に起こる皮膚のトラブル 深刻な病気が隠れていることも

 血色がよく、しっとりうるおっていて、ハリがあり、キメが整った肌――健康な肌を誰もが願っている。肌(皮膚)は"体の窓"と言われる。肌に異常があらわれているときには注意が必要となる。

 「皮膚は人体最大の臓器です。多くの方が見落としがちですが、皮膚の異常は体からの危険信号です。健康上の問題の初期徴候である可能性があります。自分の肌の状態について知っておくべきです」と、米メイヨークリニックの皮膚科専門医であるドリス デイ博士は話す。

 メイヨークリニックでは、夏に起こりがちの肌のトラブルについて、次のように解説している――

爪の色の変化から疑われる病気
 内臓に障害が起きて機能が低下すると、体の末端の細い血管に影響があらわれやすい。その結果、爪にさまざまな病気のサインがあらわれることがある。爪の異常に気づくポイントは、色の変化と形や質の変化だ。ときどき自分の爪を観察し、変化に気づいたら皮膚科を受診することが勧められる。

 爪が全体的に白かったり、にごって見える場合は要注意だ。糖尿病、肝硬変、肺がん、白血病などの深刻な病気が隠れていることも。特に、爪の半月といわれる根元部分まで白くなり半月が見えなくなるのは、慢性腎臓病が疑われる。そのほかでは、加齢や、貧血、栄養失調など。爪の色が急に変色するのは、病気のサインである可能性があるので、早めの受診が必要だ。

夏のかゆみの原因
 夏は肌を露出する機会が増え、皮膚への刺激となるものに触れやすくなる、かゆみが起こりやすい季節だ。夏のかゆみといえば「虫刺され」が代表的たが、そのほかにも「紫外線」などによって皮膚炎を起こすことがある。かゆみを繰り返し、悪化させてしまうことがあるため、原因を突きとめて対処することが大切だ。

 紫外線が原因で起こる皮膚炎には、主に「日光皮膚炎」と「光線過敏症」の2つがある。日光皮膚炎は夏に強い日差しに当たって起きる「日焼け」のこと。なかでも日光に対して過敏に反応し、強い日焼けが起こるものを光線過敏症といい、皮膚の赤み、炎症、強いかゆみが特徴となる。

 かゆみを早く治すためにはかかないことがいちばんだ。患部を包帯で巻いたり、手袋をつけるのもひとつの方法だ。かかなければ皮膚炎は治まっていくが、我慢するのが難しい場合は、皮膚科を受診する必要がある。治療には、炎症を抑える「ステロイド外用薬」が使われる。副作用を心配する人は多いが、適切に使う分には問題はない。患部だけに塗るようにして、治ったら使用を中止しよう。

円形脱毛症と自己免疫の関係とは
 円形脱毛症の原因はストレスだけではなく、自己免疫疾患である可能性がある。毛そのものが悪いのではなく、免疫の異常が引き起こす脱毛だ。免疫反応は自分の体に侵入してきたウイルスや細菌など自分の身体以外のものを敵と認識して攻撃する仕組みだ。ところが、免疫細胞のTリンパ球が毛根を異物とみなして攻撃すると、円形脱毛症という困った症状が起こる。

 円形脱毛症の治療、経過には時間がかかる。多くの場合は、単発の丸い脱毛斑ができて、毛が抜けてから完全に毛が生え揃うまでは1年以上かかることも珍しくない。自己免疫疾患がある人や、アレルギー性疾患がある人は、円形脱毛症が起こりやすい。また、遺伝的素因があると発症のリスクが高まる。

 自己免疫疾患が原因の円形脱毛症の多くは、治療を受けなくても自然に治ることもあるが、脱毛が止まらない場合や何度も繰り返す場合などは、早めに適切な治療を受けることが勧められる。

紫外線から皮膚を守るには
 しみやしわの7~8割は紫外線で起こる「光老化」が原因だ。そのため、予防には紫外線対策をしっかり行うことが大切だ。また、適度な保湿を行ったり、睡眠や食事などにも生活に注意することでも、予防効果が期待できる。

 世界中で「皮膚がん」の患者数は増加している。もっとも大きな原因は高齢化だが、紫外線量の増加も関係が深いと考えられている。紫外線のダメージを防ぐには、紫外線をできるだけ避けることが大切だ。紫外線の量が特に多い時期は初夏から夏にかけて。1日のなかでは正午前後の数時間がもっとも多い。紫外線の強い時間帯に外出したり、運動をするのは、できるだけ控えよう。

 皮膚がんを予防するためには、日ごろから紫外線を防ぐ効果が高い日焼け防止剤を使うのがお勧めだ。屋外に出るときは、長袖の服や長ズボンを着用し、つばの広い帽子や日傘、サングラスを利用しよう。肌が露出する部分には、日焼け防止剤を塗る。日焼け防止剤は、一度塗っても汗で流れたり効果が弱くなるので、2~3時間おきを目安に塗り直す。

 日焼けには、皮膚が炎症を起こして赤くなり水ぶくれなどができるサンバーン(赤い日焼け)と、皮膚が褐色に色づいた状態で痛みがほとんどないサンタン(黒い日焼け)がある。日焼けによりダメージを受けると、皮膚の弾力性を保つ成分を作る線維芽細胞にダメージを与えたり、真皮層のコラーゲンが破壊される。

 日焼けをした場合には、適切な対処が必要だ。軽度の日焼けならば、まずは保冷剤などで冷やそう。ほてりが治まったら保湿剤を塗っておく。水ぶくれができるなど重度の日焼けの場合は皮膚科を受診するようにしよう。

肌のしみの原因と特徴
 老人性色素斑は、浴び続けた紫外線が原因で、時間の経過に伴って現れてくる。30歳代から40歳代以降から現れやすくなる。大きさはさまざまで、特に頬やこめかみのあたりにできやすく、薄茶色で輪郭がはっきりとした類円形をしているのが特徴だ。

 日常的に繰り返し紫外線を長期間浴びたことにより、皮膚の表皮細胞が光老化し、色素細胞(メラニン細胞)を活性化して過剰なメラニンを作るために起こる。肌の奥まで届く紫外線A波(UVA)が主に関係していると考えられている。UVAは真皮を構成しているコラーゲンを減らしたりエラスチンを変質させる。

 老人性色素斑は、過去に受けた紫外線ダメージが蓄積した結果といえる。そして、一度できてしまうと自分では改善・治療が難しくなる。防止するためには、日常的に紫外線対策をしっかりと行い、備えておくことが大切だ。

水虫のほとんどは治療が可能
 水虫は、白癬菌というカビ(真菌)の一種が皮膚の角質層に感染して起こる。白癬菌は、角質層の主成分であるケラチンというタンパク質を栄養源として増加する。「水虫があると必ずかゆみが起こる」と思っている人が多いが、実際にはかゆみが出るのは1割程度だ。かゆみがない場合でも、皮膚の症状がある場合には水虫が疑われる。

 水虫を治療するときに重要なのは、抗真菌剤をしっかり塗ることだ。現在は、殺菌作用でしっかり菌を退治できる薬があるので、適切な治療をすれば治る。皮膚の組織が入れ替わるサイクルに合わせ、少なくとも1ヵ月間は薬を塗り続ける必要がある。症状がない部分も含め、指と指の間や足の裏全体に、まんべんなく塗ることがポイントだ。

 塗り薬には、軟膏、クリーム、ローション、スプレーなどいろいろなタイプがある。症状によっては、かえって刺激になることがあるので、注意が必要だ。ジュクジュクしていたり、傷がある場合は、ローションタイプだとアルコールが入っており、しみるので良くない。また、足に触りたくないという理由でスプレーを使う人もいるが、趾間などにきちんと塗れない可能性があるので注意が必要だ。

 水虫は治っても再発しやすい病気だ。家族とマットやスリッパを別にするだけでなく、毎日足を洗って清潔にし、足や靴の通気性をよくすることが大切となる。

Skin care: 5 tips for healthy skin(メイヨークリニック 2013年11月6日)

[Terahata]
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