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「高齢社会白書」2023年版を発表 高齢者の社会参加が健康や生きがいを生み出す 各地の取組みも紹介 内閣府

 内閣府は、2023年版「高齢社会白書」の公開を開始した。「高齢者の健康をめぐる動向」について特集しており、▼社会活動に参加している高齢者ほど健康状態が良い、▼健康状態が良い高齢者ほど生きがいを感じている、▼コロナ禍により人とのコミュニケーションに変化が生じており、インターネットで医療機関や病気などの情報を収集する高齢者が大きく増えていることなどを示した。

高齢者の健康寿命と平均寿命の差が拡大 課題に

 内閣府は、2023年版「高齢社会白書」を発表した。日本の高齢者の数はますます増えており、65~74歳の高齢者の数は1,687万人(13.5%)。75歳以上の高齢者は1,936万人(15.5%)。2070年には、2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると予測されている。

 日常生活に制限のない期間である「健康寿命」は、2019年に男性が72.68年、女性が75.38年になり、10年前に比べそれぞれ延びている。

 それにともない、高齢者の就業率は上昇しており、60~64歳で73.0%、65~69歳で50.8%、70~74歳で33.5%、75歳以上で11.0%となっている。高齢者の就業率は、60~64歳では10年前に比べ、15.3ポイント増えている。

 一方、高齢者の日常生活に制限のある「不健康な期間」を示す、健康寿命と平均寿命の差は拡大している。不健康な期間は2019年には、男性では8.73年、女性では12.07年となっており、女性でとくに長い。

 健康寿命と平均寿命の差の拡大は、医療費や介護給付費の多くを費やす期間の増大につながる。疾病予防と健康増進、介護予防などにより、この差を短縮することが、高齢化が進む日本では大きな課題になっている。

健康寿命と平均寿命の推移

出典:2023年版「高齢社会白書」

社会活動に参加している高齢者ほど健康状態が「良い」

 社会活動(健康・スポーツ・地域行事など)に参加している高齢者ほど、健康状態が「良い」という回答が増える傾向がある。

 健康状態が「良い」と回答した高齢者の割合は、社会活動に「参加した」という高齢者で39.4%に上り、「参加していない」の21.9%を上回った。

 社会活動に参加して良かったこととして、「生活に充実感ができた」(48.8%)、「新しい友人ができた」(39.1%)「健康や体力に自信がついた」(34.6%)、「地域社会に貢献できた」(32.4%)が多く挙げられた。

 一方、社会活動に参加しない理由としては、「健康・体力に自信がない」(35.2%)、「人と付き合うのがおっくう」(25.1%)、「家庭の事情(病院、家事、仕事)がある」(17.6%)が多かった。

 「高齢者になる前から、自らの健康に関心をもつことも健康につながる可能性がある。さらに、社会参加活動により、健康や体力に自信がつき、それが生きがいにつながる」と、内閣府では述べている。

社会活動に参加して良かったと思うこと(複数回答)

出典:2023年版「高齢社会白書」

健康状態が良い高齢者ほど「生きがい」を感じている

 健康状態が良い高齢者ほど、「生きがい」を感じている傾向も示された。

 「生きがい」を感じる程度について、現在の健康状態別に比べると、健康状態が「良い」と回答した高齢者は93.3%が「生きがい」を感じているが、健康状態が「良くない」という高齢者では33.7%にとどまり、大きく差が出た。

生きがい(喜びや楽しみ)を感じているか(択一回答)
健康状態が良い人ほど生きがいを感じている

出典:2023年版「高齢社会白書」

コロナ禍により人とのコミュニケーションに変化が

 コロナ禍により、人と直接会ってコミュニケーションをとることが「減った」という高齢者が6割を超えている。一方で3割は、直接会わずにコミュニケーションをとることは「増えた」と感じている。

 さらに、インターネットで医療機関や病気などの情報を収集する高齢者が大きく増えている。インターネットを利用している高齢者は50.2%と半数を超えている。

 収集している情報は、「病気について(病名や症状、処置方法など)」(39.0%)、「病院などの医療機関」(30.1%)、「薬の効果や副作用」(25.1%)、「自分でできる運動(体操・ストレッチ)など」(19.7%)が多い。

 「コロナ禍が高齢者による非対面のコミュニケーションのきっかけとなっているとみられる。また、高齢者のインターネットによる情報収集や、情報機器を利用し友人と連絡をとることなどに対する意識の変化もみられる。高齢者のインターネットを活用した社会活動につながる可能性もある」と、内閣府では述べている。

インターネットの情報収集状況(複数回答)

出典:2023年版「高齢社会白書」

高齢者の社会参加を促進 取り組み事例を紹介

 「高齢社会白書」では、高齢者の社会参加活動が、健康や生きがいを生み出し、それがさらなる活動につながり、コミュニティづくりにも貢献するという、健康の好循環を期待できるとして、各地域の実情に応じた具体的な取り組みをトピックスとして紹介している。

[事例1]新潟県佐渡市
和太鼓を活用した高齢者の健康づくりと社会参加
 新潟県佐渡市では、大幅な人口減と高齢化により、コミュニティの維持も困難になりつつあるなか、市の介護予防教室のひとつとして、和太鼓を活用したエクササイズを実施。
 高齢者の健康増進や認知症予防のみならず、社会参加の促進やコミュニティの再活性化といった、地域の課題の解決にまちぐるみで取り組んでいる。
[事例2]愛知県一宮市
次世代へつなぐ「通いの場」への挑戦
 愛知県一宮市では、高齢期になってもいきいきと元気に過ごすための健康づくりをテーマに、高齢者の社会参加をはかり、次世代型のコミュニティづくりに取り組んでいる。
 地域の公民館を拠点とした「通いの場(オフライン)」の活動と、コロナ禍をきっかけとした「在宅(オンライン)」の活動を組み合わせて活動している
[事例3]青森県弘前市
岩木健康増進プロジェクト
 青森県弘前市では、弘前大学が同市岩木地区の住民を対象に毎年実施している大規模健康診断で蓄積されたビッグデータを活用し、生活習慣病・認知症をターゲットとした疾患予防法の研究開発を行っている。
 自治体、教育機関、企業などと連携した健康増進プロジェクトを推進している。
[事例4]大阪府
スマートシニアライフ事業
 大阪府では、高齢者の課題の解決や健康寿命の延伸を目的に、自治体の提供する行政サービスと、金融・保険、IT、医療・薬品、エンターテイメントなど、さまざまな分野の民間企業による高齢者向けサービスを組合わせて展開。
 タブレット端末やLINEアプリなどのデジタル機器を通して、ワンストップで提供する取組を実施している。
[事例5]北海道更別村
更別村 SUPER VILLAGE構想
 北海道更別村では、高齢者が100歳世代まで生きがいをもって楽しく過ごせるために必要な基本サービスを目指し、デジタル技術を活用して、少子高齢化により薄れた人々のつながりの回復と、村民の健康の向上をはかっている。
 高齢者でも楽しく元気に続けられるスマート農業を実現するための取組みも実施している。

高齢社会白書 (内閣府)
[Terahata]
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