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肺がんを検診で早期発見・治療すると生存率と医療費が改善 京都市が市民を対象に調査 肺がんは早期発見がカギ
2023年06月19日
肺がんをがん検診で早期発見し、早期治療を行うことで、5年後の生存率が向上し、医療費の観点からも有利であることが、京都市などが2,609人の市民を対象に実施した調査で明らかになった。
「がん検診で、がんを早期発見・早期治療することが、生存の観点からも医療費の観点からも重要であり、あらためてがん検診の重要性を理解するうえで重要なデータが示されました」と、研究グループは述べている。
肺がんは日本で死亡者数がもっとも多いがん
日本人のがん死亡数の上位は、(1) 肺がん、(2) 大腸がん、(3) 胃がんとなっており、肺がんは死亡者数がもっとも多い。 肺がんで亡くなる人が多い理由として、肺がんは進行しないと自覚症状があらわれにくく、気付きにくいことや、他のがんに比べて進行が速く、転移しやすいことなどがある。 そのため、定期的に「肺がん検診」を受けて、早期に発見することが重要とされている。全国の自治体の肺がん検診は、40歳以上の人を対象に、年に1回、地域の保健所や医療機関で実施されている。 肺がん検診で必ず行われるのが「胸部エックス線検査」で、これだけでがんをみつけるのが難しいときには、「胸部CT検査」も実施される。肺がんは喫煙が原因で起こりやすいので、主にタバコを吸っている人を対象に、「喀痰細胞診」も行われている。 肺がんの治療は大きく進歩しており、手術や放射線、薬といった治療法がある。肺がんが進行している場合は、薬による治療が中心となることが多いが、早期発見ができれば、根治を目指すこともできるようになっている。肺がんの早期発見と早期治療が生存の観点からも医療費の観点からも重要
肺がんをがん検診で早期発見し、早期治療を行うことで、5年後の生存率が向上し、医療費の観点からも有利であることが、京都市などが市民を対象に実施した調査で明らかになった。 研究は、京都市・京都大学・製薬企業のアストラゼネカ・ヘルステック研究所が共同で実施したもの。研究結果は、「Thoracic Cancer」に掲載された。 研究グループは、京都市が保有する統合データ(国民健康保険及び後期高齢者医療制度加入者の医療レセプト、健診結果、介護認定情報、介護レセプト等を統合したデータベース)を解析。 2013~2018年度に、京都市で肺がんと診断され、治療を受けた患者のうち、2年以上の観察期間を有する2,609人を対象に調査した。うち、手術群は39.7%、薬物・放射線療法群は60.3%だった。 その結果、肺がんの早期発見と早期治療が、生存の観点からも医療費の観点からも重要であることが明らかになった。 肺がんを早期発見し手術を行った患者の5年後の生存率は75%だったのに対し、手術を受けずに薬物・放射線療法を行った患者では25%未満にとどまることなどが明らかになった。
初回治療が手術であった群と手術ではなかった群の生存率
肺がんを早期発見し手術を行った患者の5年後の生存率は高い
肺がんが進行している場合は、薬による治療が中心となることが多い
肺がんを早期発見し手術を行った患者の5年後の生存率は高い
肺がんが進行している場合は、薬による治療が中心となることが多い
出典:京都市、2023年
生存期間に応じた総医療費は、治療後6ヵ月の時点で、手術群の中央値が240万9,000円だったに対し、非手術群の中央値は295万1,000円と、差は50万円程度だったが、生存期間が延びるにつれて、手術群、非手術群ともに総医療費は増加傾向を示した。
4年後までの総医療費では、手術群で中央値が525万7,000円だったのに対し、非手術群では中央値が1,020万2,000円となり、約2倍の差になった。
「産学公連携は京都の強み」 健康寿命の延伸に向けた研究開発を加速
このように、肺がんを早期発見し、手術を実施することが、その後の生存率を高め、総医療費の抑制にも寄与することが明らかになった。 「京都市では全死因の約29%にあたる年間約4,300人ががんで、うち約930人が肺がんで亡くなっておられます。またとくに男性の場合、肺がんによる死亡者数は、次に死亡者数の多い胃がんに比べて約2倍にも上ります」と、門川大作・京都市長は述べている。 「本研究成果は、京都の強みでもある産学公連携の賜物です。関係者の皆さまに、心から感謝申し上げます」としている。 京都市では、新たな成長分野であるライフサイエンス関連産業の振興に向けて、「京都市ライフイノベーション推進戦略」を推進している。 京都の大学などが得意とする分野と、京都の企業が得意とする技術を最大限に発揮してもらい、産学公の連携により、健康寿命の延伸に向けた新たな研究開発を加速させる「健康・福祉・介護分野」の3つの分野を重点的に取り組んでいる。がん検診の受診率の向上をはかる対策も
京都市では、40歳以上の市民を対象に1年に1回、「京都市肺がん検診」を実施している。受診料金は無料(喀痰検査は1,000円)。 市民に、がん検診のお知らせメールをSMS(ショートメッセージサービス)で送信するなど、検診の受診率の向上をはかる対策もしている。 市では、胃がん・肺がん・大腸がん・子宮頸がん・乳がんの5項目のがん検診のうち、2項目以上のがん検診をまとめて受診できるがんセット検診も実施。 「検診を受けることで、がんによる死亡リスクが減少します。40歳を超えたら、年に1回は胸部X線検査を受け、さらに50歳以上で喫煙習慣のある人は、喀痰細胞診を受けることが大切です」と市では強調している。手術群と非手術群とでは総医療費は2倍の差に
今回の研究では、2013~2018年度に、京都市で肺がんと診断され、治療を受けた患者のうち、2年以上の観察期間を有する2,609人を対象に、初発の非小細胞肺がん患者で、初回治療が手術療法であったグループ(手術群)と、それ以外の治療(非手術群:薬物療法もしくは放射線療法)に分け、患者の背景、生存期間、初回治療後の総医療費について解析・調査した。 その結果、研究対象患者2,609人のうち、手術群は1,035人、非手術群は1,574人だった。非手術群は、手術群と比べて高齢で、男性の割合が高く、介護度も高い傾向がみられた。 また、5年後の生存率は、手術群で75%だったのに対し、非手術群は25%未満だった。生存期間に応じた総医療費は、治療後6ヵ月の時点で、手術群の中央値が240万9,000円(四分位範囲 206万4,000~322万4,000)だったに対し、非手術群の中央値は295万1,000円(同 160万~470万6,000円)だった。 その後、生存期間が延びるにつれて、手術群、非手術群ともに総医療費は増加傾向を示し、4年後までの総医療費では、手術群で中央値が525万7,000円だったのに対し、非手術群では中央値が1,020万2,000円だった。
各生存期間での「手術群」と「薬物・放射線療法群」のそれぞれの総医療費
生存期間が延びるにつれて、手術群と非手術群とでは総医療費は2倍の差に
生存期間が延びるにつれて、手術群と非手術群とでは総医療費は2倍の差に
出典:京都市、2023年
京都市民の健康に関するビッグデータを活用した肺がん治療の実態等の研究成果(第二弾)について (京都市)京都市がん検診総合ページ (京都市情報館)
Survival and medical costs of non-small cell lung cancer patients according to the first-line treatment: An observational study using the Kyoto City Integrated Database (Thoracic Cancer 2023年4月21日)
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