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乳がん検診の「マンモグラフィ」は効果がある 革新的なマンモグラフィ検査も開発 女性の負担を軽減

 乳がんは、女性がかかるがんのなかでもっとも多く、患者数は年々増加している。検診を受けて早期に発見し、適切な治療を受ければ、9割が治る病気とされている。

 そのために、乳がんの検査を定期的に受け続けることが大切だ。マンモグラフィ検査を受けることで乳がんを抑制でき、多くの女性の命が救われていることが、大規模な調査で確かめられている。

 しかし、マンモグラフィ検査は、痛みをともなうことがあり、確定的影響のあらわれる線量ではないにしても、被ばくのデメリットもある。

 そのため、マンモグラフィを苦手に感じている女性は少なくない。そこで、従来のマンモグラフィ検査の弱点を補う、革新的な検査法も開発されている。

がん検診を定期的に受ければ、がんを早期発見・治療できる

 乳がんは、女性がかかるがんのなかでもっとも多く、患者数は年々増加している。検診を受けて早期に発見し、適切な治療を受ければ、9割が治る病気とされている。

 そのために、乳がんの検査を定期的に受け続けることが大切だ。現在、乳がんの検診は日本でも、40歳以上の女性であれば2年に1度、自治体で受けることができる。

 検診では、マンモグラフィが使用され、自治体によっては超音波検査(エコー)も併せて受けることができる。マンモグラフィ検査では、乳房のしこりや、カルシウムの沈着による石灰化がないかなどが調べられる。

マンモグラフィ検査を受けていると乳がんを抑制できる

 40代の女性は、乳がん検診でマンモグラフィ検査を定期的に受けていると、進行性の乳がんを抑制できることが、カナダのオタワ大学の調査で明らかになっている。

 マンモグラフィ検査が、乳がんの早期発見につながり、生存率を改善することは、過去の調査でも確かめられているが、カナダでも検査を毎年受けられないでいる40代や50代の女性は少なくないという。

 研究グループは、カナダで乳がんと診断された、40代と50代の女性5万5,490人を対象に調査した。

 その結果、乳がん検診を受けないでいると、乳がんのステージ2の発症は、40代の女性では12.6%増加し、50代の女性では3.1%増加することが分かった。

 ステージ2は、がんのしこりが大きくなり、わきのリンパ節に転移しており、乳房の切除が検討される段階だ。

 乳がん検診を受けていないと、50代の女性の乳がんのステージ4は6年間で10.3%増加することも示された。ステージ4は、がん腫瘍が他の臓器に転移している深刻な状態だ。

 「乳がんを早期に発見し、致命的な乳がんを減らすために、がん検診を定期的に受けることが大切です。可能であれば、検診を年1回受けることをお勧めします」と、同大学医学部で家庭医学を研究しているアンナ ウィルキンソン氏は述べている。

マンモグラフィ検査により多くの女性の命が救われている

 米国の別の調査でも、マンモグラフィ検査が普及したおかげで、30年間で50万人以上の女性が、乳がんによる死亡を防げたことが示されている。

 マンモグラフィ検査は、1980年代頃から広く利用されるようになり、乳がんの治療法が進歩していることもあり、乳がんが原因で亡くなる女性は大きく減少している。

 乳がんを早期発見し、治療を受けられれば、5年相対生存率は99%以上に上るという。

 コロラド大学医学部やデューク大学医療センターなどは、過去30年間の40歳~84歳の米国女性の乳がんについてのデータを解析した。対象となった女性は、30万5,000人以上から48万3,000人以上に及ぶ。

 その結果、2018年だけみても、年間に2万7,083人から4万5,726人の女性が、乳がんによる死亡を回避できたと推定されるという。

 「マンモグラフィ検査の普及により、乳がんを早期に発見できるようになり、適切な治療をすることで、多くの女性の命が救われています。より多くの40歳以上の女性に、がん検診を受けることを推奨することが大切です」と、同大学放射線学のエドワード ヘンドリック教授は言う。

革新的なマンモグラフィ検査も開発されている

 しかし、このマンモグラフィ検査は、痛みをともなうことがあり、乳房のX線撮影なので、確定的影響のあらわれる線量ではないにしても、被ばくのデメリットもある。

 マンモグラフィを苦手に感じている女性は少なくない。偽陰性(検診でがんを検出できないことがある)についての課題もある。

 そこで、従来のマンモグラフィ検査の弱点を補う、革新的な検査法も開発されている。

 これは、低線量のX線を使用し、乳房を複数の方向から撮影し、それをコンピューターで3次元(3D)解析するという、乳がんの早期発見を目指した新しい技術だ。

 通常のマンモグラフィ検査で得られるのは、乳房の2次元(2D)画像のみだが、この新しい方法では、乳房組織の断層画像を、スクロールしながら調べられる。

 乳房を断層画像ごとに詳しくみることで、とくに乳腺の密度が高い高濃度乳房の女性で、乳がんを早期発見しやすくなるとみられている。

 米ペンシルバニア大学病院などによる、100万人以上の女性を対象とした研究では、この「トモシンセシス」と呼ばれる新しい画像診断技術により、1,000人あたりの乳がん検出率は、4.5から5.3に改善することが示された。

 「3Dマンモグラフィでは、たくさんの断面画像をみることで、乳がんの検出をより正確に行えるようになります」と、同病院で放射線学を専門とし乳房画像部門の主任を務めているエミリー コナント氏は述べている。

 「乳がんによる死亡率は、早期発見と治療の進歩により、1980年代後半から大きく減少していますが、乳がんは依然として、女性のがん死亡の主な原因となっています。3Dマンモグラフィが普及すれば、乳がんの女性の生存率をさらに高められると期待しています」としている。

3Dマンモグラフィ(画像のA)は、従来の2Dマンモグラム(画像のB)で得られる単一な画像と違い、さまざまな角度から乳房のX線画像を撮影できるため、乳がんの検出率が高い。

出典:北米放射線学会、2023年

Study shows annual screening before age 50 leads to lower proportions of advanced breast cancer (オタワ大学 2022年8月10日)
The Impact of Organised Screening Programs on Breast Cancer Stage at Diagnosis for Canadian Women Aged 40-49 and 50-59 (Current Oncology 2022年8月9日)
More than half a million breast cancer deaths averted in the US over three decades (Wiley 2019年2月11日)
Breast cancer deaths averted over 3 decades (Cancer 2019年5月1日)
Huge Study Finds Tomosynthesis Better at Breast Cancer Detection (北米放射線学会 2023年3月14日)
Mammographic Screening in Routine Practice: Multisite Study of Digital Breast Tomosynthesis and Digital Mammography Screenings (Radiology 2023年3月14日)
[Terahata]
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