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【子宮頸がん】日本はHPVワクチン接種と検診の実施率が低い 子宮頸がんの罹患率と死亡率がともに増加

 国立がん研究センターがん対策研究所は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症する子宮頸がんなどについて、科学的根拠と日本の現状をファクトシートとしてまとめて公開を開始した。

 子宮頸がんはHPVワクチンと検診によって予防できるがんだが、日本では、HPVワクチン、子宮頸がん検診ともに十分に実施されておらず、子宮頸がんの罹患率、死亡率ともに増加しているとしている。

 「国、自治体、研究機関、医療機関、メディアなどと連携し、日本での子宮頸がんの減少に貢献していきたい」と、同研究所では強調している。

子宮頸がんはHPVワクチンと検診によって予防できる

 国立がん研究センターがん対策研究所は、横断的プロジェクトとして、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症する子宮頸がんなどのHPV関連がんについて、科学的根拠と日本の現状をファクトシートとしてまとめて公開を開始した。

 子宮頸がんはHPVワクチンと検診によって予防できるがんであり、HPVワクチンは、HPV感染、子宮頸がん前がん病変、子宮頸がんに対して高い予防効果があるとしている。

 しかし日本では、HPVワクチン、子宮頸がん検診ともに十分に実施されておらず、子宮頸がんの罹患率、死亡率ともに増加している。

 その背景として、HPVワクチンは、2013年~2021年の積極的勧奨が控えられており、積極的勧奨が本格的に再開されたのが2022年度からであることがある。

 「接種対象の女性(小学校6年生~高校1年生相当)は、現状入手できるHPVワクチンを接種することが推奨されます。とくにキャッチアップ接種の対象世代(1997年度生まれ~2006年度生まれの女性)は、HPVワクチン接種と、20歳以上でのがん検診受診が強く推奨されます」と、同研究所では強調している

 「子宮頸がん対策は、HPVワクチン、検診、治療・ケア包括的に実施することが求められます。それらの履歴管理とデータ分析が可能な制度の構築が合わせて必要です」としている。

日本の子宮頸がん罹患率・死亡率は先進国でもっとも高い

出典:国立がん研究センター、2023年

関連情報

日本ではHPVワクチン接種率が著しく低い キャッチアップ接種も低迷

 日本では、子宮頸がんが増加し続けている。日本では年間に約1万1,000例の女性が子宮頸がんと診断され、約3,000人が子宮頸がんによって死亡している。

 その背景として、実効性のある子宮頸がん対策が行われていないことがある。2022年度からHPVワクチンの積極的勧奨が本格的に再開されたが、接種率は十分に回復していない。

 HPVワクチン接種は、その安全性と有効性が認められており、子宮頸がんの1次予防方法として日本を含む多くの国で予防接種プログラムに導入されている。

 日本では、小学校6年生~高校1年生相当の女性を対象に、HPVワクチンの定期接種が実施されており、2023年4月からは、感染予防効果が4価ワクチン接種に比べ90%以上と高い9価ワクチンも導入された。

 しかし、日本ではHPVワクチン接種率が諸外国と比べて著しく低い状態が続いている。HPVワクチン接種の機会を逃した女性を対象に実施されているキャッチアップ接種の接種率も低迷している。

 2020年度のHPVワクチン接種率は、1回目15.9%、2回目11.6%、3回目7.1%程度と推定されている。

 HPVワクチン接種を国家プログラムとして実施している欧米諸国では高い感染予防効果が確認されており、早急にHPVワクチン接種を普及させることが強く求められている。

生まれ年度ごとのHPVワクチン接種率
2013年~2021年の積極的勧奨の控えにより、HPVワクチン接種率は大幅に低下した

地域保健・健康増進事業報告および国勢調査から算出
出典:国立がん研究センター、2023年

乳がん検診や子宮頸がん検診の受診率も低い 欧米と日本で大きな差

 また、子宮頸がん検診も対策型検診として実施されているものの、受診率は低く、子宮頸がんの減少にはつながっていない。先進諸国では、科学的根拠にもとづく子宮頸がん対策を実施することで、子宮頸がん減少に成功している。

 厚生労働省は、20歳以上の女性を対象に2年に1回、問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診を推奨している。

 しかし、日本の乳がん検診や子宮頸がん検診の受診率はとても低く、がん検診の国際比較をみても、欧米の検診受診率が80%以上であるのに対し、日本は35%程度にとどまる。

 子宮頸部細胞診による子宮頸がん検診は、死亡率減少効果を示す相応の科学的証拠があり、市区町村で対策型検診(対象集団におけるがん死亡率の減少を目的としたがん検診)として実施されている。

 そこで、同研究所は、子宮頸がんおよびHPV関連がんについて、国内外の科学的根拠と、これらのがんを実効的に減らすために必要な方策をファクトシートとしてまとめ公開している。

 このファクトシートでは、ワクチンによる1次予防、検診による2次予防それぞれの課題を明らかにするとともに、予防からがんの診断治療までをモニタリング、評価できる制度の構築が重要であることが示されている。

 「これらの課題の解決に向けて、国、自治体、研究機関、医療機関、メディアなどと連携し、日本での子宮頸がんの減少に貢献していきたいと考えています」と、同研究所では述べている。

地域でのHPVワクチン接種率にかかる診療・相談体制を強化する必要が

出典:国立がん研究センター、2023年

国立研究開発法人 国立がん研究センター
[Terahata]
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