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C型肝炎を飲み薬で治療 新薬「ソバルディ」が医療費助成の対象に

 1日1錠6万1,799円――。高額だが効果が高いC型肝炎の治療薬「ソバルディ」が日本で発売された。患者数が150万~200万人とされるC型肝炎ウイルスの新たな治療法として期待されている。
C型肝炎のインターフェロン治療には課題がある
 C型肝炎はC型肝炎ウイルスの感染により起こる疾患で、国内のウイルス感染者は150万~200万人とされる。治療を行わないでいると肝硬変に移行しやすく、日本人の慢性肝炎、肝硬変、肝がんの7割以上はC型肝炎が原因だ。

 日本人のウイルスの遺伝子型には「1b型」「2a型」「2b型」がある。4割の患者はウイルス量が少なく、インターフェロンと抗ウイルス剤「リバビリン」の併用療法が行われる。

 ウイルス量が多く、インターフェロンが効く場合は、インターフェロンとリバビリンにウイルス直接阻害薬を併用する3剤併用療法が行われる。

 20年以上にわたり、主な治療法は患者の免疫力を高める作用をもつインターフェロンの注射だった。

 ただ、この治療法は頭痛、食欲不振、吐き気、不眠・不安、倦怠感などの副作用があり、負担に耐えられない高齢者が多い難点がある。治療期間も24~48週間と長期にわたる。
経口薬でC型肝炎患者の96%が治癒
 新たに登場した「ソバルディ」(成分名:ソホスブビル)は、C型肝炎の治療に高い効果が期待できる経口薬として期待されている。

 「ソバルディ」は、ウイルスの増殖に関わるRNA(遺伝情報)の複製を阻害することで、C型肝炎を治療する薬だ。

 ウイルスが増殖を行うとき、「遺伝情報」が必要となる。C型肝炎ウイルスでは、RNAが遺伝情報となっており、RNAを複製することで増殖している。

 RNAの複製に関わるタンパク質を「RNAポリメラーゼ」という。C型肝炎ウイルスは「NS5Bポリメラーゼ」と呼ばれるタンパク質を媒介にして増殖している。

 「ソバルディ」には、NS5Bポリメラーゼの働きを阻害することで、C型肝炎ウイルスを排除する作用がある。

 「ソバルディ」は大きな副作用がなく、治療期間も12週間と短い。対象はウイルスの遺伝子型が2a型、2b型のC型肝炎で、感染者の3割が該当する。国内の臨床試験では患者の96%が治癒するという高い効果を示した。
医療費助成で患者の負担は月1万~2万円に
 治癒率の高い薬が手に入るようになるのはC型肝炎患者にとって朗報だ。だがその反面で、別の悩みが頭をもたげ始めている。医療財政への負担だ。

 「ソバルディ」は高額な薬で、1錠の薬価は6万1,799円。12週間服用すれば、治癒までに要する薬剤費は併用薬を含めて約546万円。インターフェロンを使った治療の薬剤費は約223万円なので、倍以上に相当する。

 このままでは利用できる人が限られるため、厚生労働省の肝炎治療戦略会議は、「ソバルディ」と「リバビリン」を公的医療保険制度の適用対象とし、さらにこれらの薬の併用療法を医療費助成の対象とすることも決めた。

 これにより患者の負担は月1万~2万円となる。医療費助成の大部分は国民が負担する税金や健康保険料で賄われる。

 C型肝炎を治療できれば、中長期では肝臓がんなどにかかる医療費を節減できる可能性がある。一方で、高額な薬をすべて公的保険や助成の対象にすると、国民負担が過重になる。仮に50万人の患者が利用したとすると、薬剤費だけで2兆円を超えてしまう。

 既存の薬に比べ費用がどれだけ余計にかかり、効果はどれほど変わるのかといった費用対効果を、客観的に評価する手法をつくれば、経済的な効率性に優れた薬のみを公的保険の対象とするといった区分けがしやすくなる。

 英国やドイツ、フランス、カナダ、オーストラリアなどではすでに費用対効果の考えが導入されている。厚生労働省では費用対効果の検討が始められており、今後は議論が活発になりそうだ。

第14回肝炎治療戦略会議(厚生労働省2015年5月18日)
日本肝臓学会編『C型肝炎治療ガイドライン』
[Terahata]
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