【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
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妊娠に関連する高血圧や高血糖を経験した女性は、将来的に高血圧や糖尿病、脳卒中や心臓病を発症するリスクが高くなることが知られている。
しかし、産後に検査を受けられている女性はとても少ないことが、新しい調査で明らかになった。
乳がんの検査についても、十分に実施されていないという調査結果が発表された。
「妊娠に関連する健康リスクについて理解を高め、検査を受ける必要性について気軽に相談できるような環境が求められます」と、研究者は指摘している。
妊娠中に血圧や血糖が高かった女性は将来の健康リスクについて知ることが大切
3月8日は「国際女性デー」だ。女性の健康を高め、ジェンダー不平等をなくすために、世界中でさまざまな取り組みが行われている。
「妊娠高血圧(妊娠高血圧症候群)」は、妊娠中にみられる高血圧で、「妊娠糖尿病」は、妊娠中にみつかった糖代謝異常。
医療は進歩しており、医療機関で妊娠高血圧や妊娠糖尿病の適切なケアを受ければ、母体や胎児の健康や成長に深刻な問題があらわれることは少ないが、どちらも世界的に発症頻度は上昇しており、効果的な対策が必要とされている。
妊娠中に妊娠高血圧や妊娠糖尿病と診断された女性は、将来的に高血圧や糖尿病、心血管疾患などになるリスクが高くなることが知られている。妊娠中に血圧・血糖値が高めと指摘された女性も注意が必要になる。早めに高血圧や糖尿病のリスクに気付き、健康管理に取り組むことが重要になる。
しかし、妊娠に関連する高血圧症や糖尿病を経験した女性のうち、心血管リスク因子に関連する検査を受けている女性は5人に1人未満と、とても少ないことが、新しい調査で明らかになった。
研究は、カナダの臨床評価科学研究所(ICES)が発表したもので、研究成果は、「Circulation」の女性特集号に掲載された。
産後の高血圧や糖尿病の検査が十分に行われていない 女性の「機会損失」は深刻
「心臓病や脳卒中などの心血管疾患は、女性の死亡原因の上位を占めています。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を経験した女性は、将来的に心血管疾患を発症するリスクが高くなることが知られています」と、同研究所の健康科学センターおよびトロント大学医学部のエイミー ユウ氏は言う。
「高血圧、脂質異常、高血糖に対する注意が必要で、検査を定期的に受けることが、心血管疾患などの危険因子を早期ら診断し治療するために重要です」。
「妊娠中に高血圧や高血糖が発見された女性は、出産後も定期的に血糖値やコレステロール値などの検査を受けるのが望ましいと、各国のガイドラインで推奨されています。妊娠中の母親の健康と長期的な血管の健康には関連があるというエビデンスは増えています」としている。
研究グループは今回、カナダのオンタリオ州に在住している妊婦100万人以上を対象に、2002~2019年に調査を行った。
対象者を、妊娠に関連する高血圧あるいは糖尿病を発症したことのある女性と、発症しなかった女性に分けて、出産後3年間まで糖尿病や脂質異常症などのスクリーニング検査の受診状況を調べた。
その結果、妊娠高血圧あるいは妊娠糖尿病と診断されたことのある女性のうち、出産後1年以内に検査を受けていた女性は、5人に1人未満の17%と少なかった。
ただし、出産後3年以内まで範囲を拡大すると、検査を受けた女性は半数近くの44%まで増えた。しかし、それでも十分な数ではなく、とくに糖尿病の検査を受けた割合に比べ、コレステロールの検査を受けた割合は低いことが分かった。
さらに、そうした女性の検査の受診率は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧を発症しなかった女性と比べて、あまり変わらないことも示された。
女性の健康に対する理解を高める必要が
「妊娠に関連する健康リスクについて、患者と医師とのあいだで理解を高める必要があります。女性はご自分の心血管疾患などのリスクについて知り、検査を受ける必要性について気軽に医師などに相談できるような環境が求められます」と、臨床科学者でもあるユウ氏は指摘する。
「女性の健康に対する理解を高めることで、加齢にともなうライフスタイルの変化についての適切な意思決定をより良くサポートできるようになり、血管の健康の改善につながります」としている。
マンモグラフィー検査を定期的に受けると乳がんリスクが大幅に減少
「マンモグラフィー検査を定期的に受けることで、乳がんによる死亡を40%以上減らせることが報告されています」と、ダートマス大学ガイゼル医科大学院の放射線学デブラ モンティチオロ教授は言う。
「40歳から79歳になるまで、乳がん検診を毎年受けることで、乳がんのリスクを最小限に抑えられ、死亡リスクも減らせることができます」としている。
しかし、実際に検査を毎年受けている女性は、50%以下しかいないという。
研究グループは、米国立がん研究所が支援している「がん介入・監視モデリングネットワーク」(CISNET)の、2023年の乳がん検診の結果を解析した。
その結果、40~79歳の女性を対象とした年1回の乳がん検診が、死亡率を41.7%減少し、もっともベネフィットが高いことが示された。
マンモグラフィー検査は、圧迫感や痛みを負担に感じる女性がいたり、わずかではあっても被爆のリスクや、誤ってがんの疑いありとされ不要な検査が行われる不利益もあるが、ほとんどの女性にとって検査を受けることで得られる利益が大きく上回るとしている。
「乳がんは米国で、女性のがんによる死亡原因の第2位になっています。乳がんを早期に発見すれば、治療をより行いやすくなります。女性の命を大切にするために検査を行い、早期発見にシフトするのが賢明です」と、モンティチオロ教授は指摘している。
Inadequate postpartum screening for hypertension and diabetes a 'missed opportunity' for women, study suggests (臨床評価科学研究所 2025年2月17日)
Population-Level Screening for Diabetes and Dyslipidemia After Pregnancies Complicated by Hypertension or Diabetes (Circulation 2025年2月17日)
Annual Breast Cancer Screening Beginning at 40 Saves Lives (北米放射線学会 2024年2月20日)
Outcomes of Breast Cancer Screening Strategies Based on Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network Estimates (Radiology 2024年2月20日)
Annual Mammography Saves More Lives and Minimizes per-Mammogram False-Positive Results (Radiology 2024年2月20日)
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