特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
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特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い
日本では高血圧や糖尿病の患者が増加しており、患者や家族に対する負担が大きいだけでなく、社会的にも医療費増加の要因となっている。
特定健診(特定健康診査、メタボ健診)は、そうした問題に対する取り組みだが、健診を受ける人の割合が直近の2022年のデータで6割弱にとどまっている(目標は70%)。
そこで、静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)などの研究グループは、特定健診の記録と医療機関の受診記録データをひもづけて、高血圧や糖尿病とそれまでに診断されていない、のべ29万3,174人を最長10年(中央値4.2年)にわたり追跡し、健診を受けた人とそうでない人の病気の発症を比較した。
研究グループは今回、標的試験法と呼ばれる、近年注目されている研究手法を用いて、特定健診を受けていない群でも追跡の開始時点を一時点に決め、また特定健診を受けた人とそうでない人の背景の違いも統計的に調整した。
その結果、高血圧と糖尿病の発症リスクは、「健診あり」の群で10.6%、「健診なし」の群で11.4%となり、健診を受けた人の方がリスクは低い傾向があることが分かった。
さらに、背景因子の統計的な調整を行ったところ、健診を受けた人はそうでない人に比べて、高血圧・糖尿病の発症が0.90倍と低いことが確認された。高血圧や糖尿病などを別個に評価した追加の解析でも、同様の傾向が示された。
「健診を受けていない人に受診を促すことは、生活習慣病の予防対策として重要であることがあらためて確認されました」と、研究者は述べている。
「今回の結果は、将来的により有効な健診制度の検討や医療経済学的な観点からの健診のあり方を探るための基礎資料になりえます」としている。
研究は、静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)社会健康医学研究科の竹内正人氏教授、東京理科大学工学部情報工学科の篠崎智大准教授、京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の川上浩司教授らによる研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。
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特定健診を受けた人とそうでない人に分け追跡して調査
2008年に開始された特定健診は、腹囲肥満に焦点をあてることで、肥満に関連する糖尿病、高血圧、脂質異常症などの高リスク群を抽出し、その後の特定保健指導を通じて生活習慣を見直してもらうことで、生活習慣病の発症を予防する取り組み。
特定健診は、病気の早期発見よりは、そもそもの病気の発症を防ぐことに主眼が置かれている、世界的にみてもユニークな取り組みと言える。
しかし特定健診は、制度設計の段階から現在にいたるまで、どれくらいの生活習慣病の予防効果があるのかは詳しくは検証されていなかった。
その背景として、これまで生活習慣病のない人を長期間にわたり追跡する必要があること、またそれが十分に大きな集団を対象とする必要があったことが要因のひとつとして挙げられる。
一方、近年さまざまな分野でビッグデータの利活用が進んでおり、医療情報に関しても同じくデータが蓄積され活用さるようになってきた。
そこで研究グループは今回、民間の医療データ会社が保有する、累計1,000万人以上の母集団を対象とした長期間の追跡が可能なビッグデータを解析することで、この課題に取り組んだ。
このデータは、主に企業からの200以上の健康保険組合データをもとにしている。データは匿名化されてから研究者側に提供されるため、個人を特定する情報は基本的に含まれていない。
そのデータから、特定健診の対象年齢である40~74歳であり、それまで高血圧や糖尿病と診断されていない人を抽出し、さらに特定健診を受けた人とそうでない人に分け追跡して調査した。
静岡社会健康医学大学院大学 (静岡SPH)
Universal Health Checkups and Risk of Incident Diabetes and Hypertension (JAMA Netw Open 2024年12月20日)
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