ニュース

特定健診の基準を見直し 「腹囲が基準未満」でも心血管疾患リスクが2倍に

 メタボリックシンドロームに着目した特定健診で腹囲が基準(男性85cm、女性90cm)に満たなくても、高血糖や高血圧、脂質異常などの危険因子が1つでもあると、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが約2倍になるとの調査結果を、厚生労働省研究班(研究代表者:門脇孝・東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科教授)が発表した。
腹囲とBMIが基準値未満でもリスクがあると心血管疾患は2倍に増加
 2005年にメタボリックシンドロームの診断基準が策定され、内臓脂肪蓄積を診断の必須項目とし、内臓脂肪面積100㎠以上をマーカーとして、腹囲(ウエスト周囲長)の基準値が「男性85cm、女性90cm」と定められた。2008年度から「メタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導」が開始された。

 厚生労働省研究班(代表者:門脇孝・東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科教授)は、心筋梗塞などの心血管疾患発症を効果的に予防するとために、腹囲の基準値を見直す必要性について検討している。
 研究では2010年~2014年に、男性2万591人、女性1万7,901人を対象に、全国の12のコホートで心血管疾患の発症などをフォローアップした。

 保健指導レベル別にみた心血管疾患発症のハザード比をみたところ、腹囲とBMIがともに基準値未満で、血糖、脂質、血圧のリスクのある人(対照群)を基準に比較したところ、「動機づけ支援レベル」ではハザード比が男性で1.01倍、女性では1.07、「積極的支援レベル」では男性で1.61倍、女性で1.65倍になった。

 特定保健指導の階層化基準で選定された「積極的支援レベル」群の心血管疾患発症のリスクは対照群より高いことから、特定保健指導の効果が高いことが明らかになった。

 次に、腹囲とBMIがともに基準値未満で、リスクが全くない人(対照群)を基準に比較したところ、腹囲とBMIがともに基準値未満であっても、リスク数が1つの人では心血管疾患発症のハザード比は男性で1.91倍、女性で2.12倍になった。リスク数が2つの人ではハザード比は男性で2.22倍、女性で2.54倍になった。

 同様に「動機づけ支援レベル」の群ではハザード比は男性で1.97倍、女性で2.32倍になり、「積極的支援レベル」の群ではハザード比は男性で3.17倍、女性で2.83倍に上昇した。

 つまり、「積極的支援レベル」と「動機づけ支援レベル」の人の心血管疾患の発症リスクは、対照群より高いことが示されただけでなく、腹囲とBMIの基準を満たさない人でも、リスクファクターを有すると心血管疾患のリスクが上昇することが示された。
腹囲を「男性85cm、女性90cm」から厳しくした場合の影響
 「BMIと腹囲の基準値をともに満たさない"情報提供レベル"の群でも、血糖、脂質、血圧のリスクファクターがない人と比べると、リスクファクターがある人では、心血管疾患発症のリスクが上昇することが明らかになった」と研究班では述べている。

 なお、研究ではメタボリックシンドロームを構成するリスクファクター数が1を超える腹囲は男性では85cm前後、女性では90cm前後であることが示された。これは、現行のメタボリックシンドロームの診断基準の基準値と合致する。

 「メタボリックシンドロームに着目した保健指導では、腹囲を必須とする基準で診断することに妥当性がある。"内臓脂肪を減らす"という介入は簡明で合理的な手段であることが確かめられた」と、研究班では述べている。

 一方で、腹囲の基準値を現行の「男性85cm、女性90cm」からより厳しくした場合の影響についても検討した。特に女性では心血管疾患発症のリスクを下げる効果が得られるという。もしも女性の「腹囲90cm以上」あるいは「腹囲90cm未満でBMIが25以上」という基準を外し、腹囲80~90cmも対象に加えると、65~74歳の女性で心血管疾患発症のハザート比は2.8から1.8に改善すると推定された。

 そうした場合は特定保健指導の対象者が増えるとみられる。「動機付け支援レベル」の女性は現行の18.2%から32.9%に増え、「情報提供レベル」の女性は76.3%から60.7%に減ると推定されている。「積極的支援レベル」の女性の増加はわずかにとどまるという。

 「動機づけ支援レベル群が増加することと、女性の前期高齢者(65~74歳)では心血管疾患発症のリスクが低い人を多く拾い上げることが明らかとなった。医療資源・医療費に余裕がある場合に介入の対象となる可能性がある」と研究班では述べている。
 今回の結果を受け、2018年度の特定保健指導の指針見直しに向け、具体策が検討される。

 2013年に厚生労働省健康局が提出した「標準的な健診・保健指導プログラム[改訂版]」では「医療保険者の判断により、動機づけ支援、積極的支援の対象者以外の者に対しても、必要に応じて保健指導の実施を検討することが望ましい。特に、腹囲計測によって内臓脂肪型肥満と判定されない場合にも、血糖高値・血圧高値・脂質異常等のリスクを評価する健診項目を用い、個別の生活習慣病のリスクを判定する」とされている。

第5回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会(厚生労働省 2016年4月11日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2018年04月25日
「検体測定室」でのHbA1cチェックは糖尿病対策として効果的
2018年04月25日
エネルギーを燃焼する「褐色脂肪細胞」を活性化 脂肪が燃えやすい体に
2018年04月25日
ICTを活用して「フレイル」を予防 健康長寿医療センターなどが開発
2018年04月25日
夏の夜は「心筋梗塞」の増加に注意 季節の日照時間によって発症に差
2018年04月18日
糖尿病の原因は「酸化ストレス」 肝臓の脂肪蓄積を防ぐ治療
2018年04月18日
「サルコペニア」を容易に評価 CKD患者の心疾患リスクを予測
2018年04月18日
糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」
2018年04月18日
乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化
2018年04月17日
建設業で働く女性の妊娠や出産をサポート~『女性にやさしい職場づくりナビ』
2018年04月11日
子宮頸がんとHPVワクチン 日本産科婦人科学会が「接種は必要」と強調

最新ニュース

2018年04月26日
【健やか21】平成30年度「児童虐待防止推進月間」の標語を募集します!
2018年04月25日
「検体測定室」でのHbA1cチェックは糖尿病対策として効果的
2018年04月25日
エネルギーを燃焼する「褐色脂肪細胞」を活性化 脂肪が燃えやすい体に
2018年04月25日
ICTを活用して「フレイル」を予防 健康長寿医療センターなどが開発
2018年04月25日
夏の夜は「心筋梗塞」の増加に注意 季節の日照時間によって発症に差
2018年04月25日
「プロポリス」が認知機能の低下を抑制 7年間の国際研究で判明
2018年04月24日
環境省が熱中症環境保健マニュアルを改訂~夏季イベント時の対策を追加
2018年04月19日
【健やか21】パンフレット「住まいの中のアレルゲン対策」ご活用下さい
2018年04月19日
【新連載】女性のライフステージと、体と心の健康運動
2018年04月18日
糖尿病の原因は「酸化ストレス」 肝臓の脂肪蓄積を防ぐ治療
2018年04月18日
「サルコペニア」を容易に評価 CKD患者の心疾患リスクを予測
2018年04月18日
糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」
2018年04月18日
乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化
2018年04月17日
建設業で働く女性の妊娠や出産をサポート~『女性にやさしい職場づくりナビ』
2018年04月16日
くるみを食べると腸内フローラが改善 くるみが善玉菌を増やす
2018年04月13日
厚労省がGWの海外渡航に感染症予防注意を呼びかけ
2018年04月12日
【健やか21】「母子保健指導部」の会員募集と30年度研修会一覧の掲載
2018年04月11日
子宮頸がんとHPVワクチン 日本産科婦人科学会が「接種は必要」と強調
2018年04月11日
「2時間の飲み会」の危険 アルコールのイッキ飲み・アルハラを防止
2018年04月11日
ご存知ですか?「紫外線」 紫外線に打ち勝つ4つの方法
2018年04月11日
糖尿病の発症前に「慢性腎臓病」(CKD)は悪化 検査で早期発見を
2018年04月11日
「甘酒」を飲んでコレステロールを低減、便通を改善 プロラミンが作用
2018年04月09日
【連載紹介】何をどう食べるか―体験から得た震災時の食の"知恵袋"
2018年04月06日
【健やか21】「ふくおか子育てマイスター活動事例集」のご紹介
2018年04月06日
東京都が福祉保健基礎調査「東京の子どもと家庭」(速報版)を公表
2018年04月05日
糖尿病患者の痛風リスクがフェノフィブラートで半減 FIELD試験
2018年04月05日
栄養を効率よく摂取するには? くるみ病態別レシピ申し込み受付中
2018年04月04日
女性の「痩せ」志向は不健康 スポーツを通じて女性の活躍を促進
2018年04月04日
働きながら「不妊治療」を受ける人へのサポート 仕事の両立支援が課題に
2018年04月04日
魚の「オメガ3脂肪酸」が死亡リスクを低下 「食後高脂血症」に注意
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,045 人(2018年04月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶