【熱中症予防】気候変動による暑熱 スポーツ活動を行うのが困難に 「予防強化キャンペーン」を開始

気候変動がこのまま進行すると、これまで通りにスポーツ活動を行うのは困難になるという研究結果が発表された。
いずれの対策でも効果はあるものの、温暖な地域を中心に、暑熱影響が残存して激しい運動が制限されるため、気候変動が進行すると、想定した対策だけでは運動活動を継続することは難しいことが示された。
政府は、「熱中症対策実行計画」にもとづき、関係府省庁と連携しながら「熱中症予防強化キャンペーン」に取り組んでいる。
暑熱化が進行すると夏季の屋外での運動は困難に
気候変動がこのまま進行すると、これまで通りにスポーツ活動を行うのは困難になるという研究結果を、国立環境研究所と早稲田大学が発表した。研究成果は、「Environmental Research: Health」に掲載された。
国内で数百万人が参加する学校の運動部活動に着目し、気候変動の暑熱影響と対策の効果を評価した結果、気候変動が進行するすと、これまで通りの活動実施は困難となり、早朝練習の導入や屋外練習の削減といった対策だけでは不十分であることが示された。
小児・若年期に一定の強度・時間以上の運動をすることは、筋骨格や心肺の健康、肥満の予防、ストレスの軽減、学業成績の向上などさまざまな良い効果をもたらし、その後の人生の健康にも寄与するとされているが、運動中は熱中症のリスクが高まり、すでに国内の運動部活動では毎年数千件の熱中症が報告されている。
気候変動により、将来は高温の頻度・強度がいっそう増加すると予測されている。今後は、気候変動の進行に注視しつつ、想定した対策はもとより、より抜本的な対策の実行に移していくことが重要としている。
暑熱により激しい運動は制限される 屋内運動などの対策が必要
研究グループは今回、将来の気候変動下における暑さ指数(WBGT)の予測にもとづき、主に屋外における運動部活動への暑熱影響と対策の効果を分析した。
国内842都市での過去12年間分の時間別WBGTデータと、対応する日別気象データ(気温、湿度、風速、日射量)の関係を、機械学習手法で約5,000万件のデータからランダムに選定した約4,000万件のデータを学習。日別の気象データから、時間別のWBGTを予測するモデルを構築した。
活動実施に関わる暑熱基準をもとに、「週5日・1日あたり2時間の屋外活動が、放課後の15~18時に実施可能か」について、3つのレベルで運動部活動への暑熱影響を評価。さらに、(a) 早朝(7~9時)の屋外活動、(b) 週のうち暑い2日は屋外活動を空調がきく屋内活動に変更、(c) (a)と(b)の両方を実施――という3つの対策による効果を分析した。
その結果、いずれの対策でも、もっとも気候変動が進行するシナリオ下でも効果があることが示されたたものの、温暖な地域を中心に、暑熱影響が残存して激しい運動が制限されるため、気候変動が進行した状況では、研究で想定した対策だけでは、これまで通りの運動部活動を継続することは難しくなることが示された。
「今後の気候変動の進行に注視しつつ、今回想定した対策はもとより、より抜本的な対策(例::大会や練習の年間スケジュールの変更、屋内運動場の整備、夏季のより涼しい地域での活動)を実行に移していくことが重要と考えられます」と、研究者は述べている。

熱中症予防強化キャンペーンを開始
環境省と気象庁は、2025年度「熱中症特別警戒アラート」および「熱中症警戒アラート」の運用を4月23日から開始した。
全国841地点における暑さ指数(WBGT)の予測値・実況値など、熱中症予防情報の提供を行うのに加え、気温がとくに著しく高くなり、熱中症による健康に対する重大な被害が生じるおそれのある場合には「熱中症特別警戒情報」(通称:熱中症特別警戒アラート)を発信する。
パソコン、スマートフォン、携帯電話で公開するほか、個人向けメール配信サービス、環境省LINE公式アカウントも提供している。
政府は、「熱中症対策実行計画」にもとづき、関係府省庁と連携しながら「熱中症予防強化キャンペーン」に取り組んでいる。
4月~9月の期間中に、時季に応じた適切な熱中症予防行動の呼びかけを行い、普及啓発や注意喚起、イベント開催などの広報活動を実施する。
4月~6月 | 暑熱順化やエアコンの早期点検等の呼びかけ |
---|---|
7月 | 梅雨明けにとくに熱中症のリスクが高いことを国民へ注意喚起 |
8月 | 盛夏における熱中症対策のいっそうの呼びかけ |
災害時における熱中症の注意喚起 |

国立環境研究所
早稲田大学 スポーツ科学学術院
Heat impacts on school sports club activities in Japan under climate change and the effectiveness of countermeasures (Environmental Research: Health 2025年3月10日)


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