【高血圧の日】運動時間をわずか5分増やすだけで高血圧は改善 歩数を何歩増やすと理想的?

5月17日は「高血圧の日」だ。高血圧はサイレント・キラーと呼ばれるように、自覚症状が少ないことが影響し、高血圧を管理できている人は少ない。
運動不足の人は、20~27分のウォーキングなどの運動の行うことで、血圧を下げられることが明らかになった。運動時間を5分増やすだけでも効果を期待できるという。
高齢者が1日の歩数を3,000歩増やすと、高血圧を改善できることも分かった。
高血圧を早期に発見し、血圧を継続的に管理することは、脳卒中などを予防するために重要だ。
1日に20~27分の活発な運動の行うと高血圧が改善
5月17日は「高血圧の日」だ。これは、日本高血圧学会と日本高血圧協会が制定したもので、この日に合わせて高血圧の啓発活動が展開されている。
「高血圧が脳卒中などの重篤な疾患を引き起こすことについて、一般の方の認知が極めて低いことに危機感を覚えています」と、同学会では述べている。
高血圧は、日本でも三大死因のうちの2つである脳卒中や心臓病など、生命に関わる病気を引き起こす原因となっている。しかし、高血圧はサイレント・キラーと呼ばれるように、自覚症状が少ないことが影響し、日本で高血圧を管理できている人はわずか2割という報告がある。
1日のうちで座ったまま過ごす時間が長い運動不足の人は、ウォーキングをする、階段を上る、坂道を歩く、サイクリングをするなど、20~27分の活発な運動の行うことで、血圧を下げられることが、オーストラリアのシドニー大学などの新しい研究で明らかになった。
毎日を忙しく過ごしており、運動のためにまとまった時間をとれないという人は、1日の運動時間をわずか5分増やすだけでも、血圧を下げられる可能性があるという。研究成果は、「Circulation」に発表された。
運動時間を5分増やすごとに血圧は低下
研究グループは、5ヵ国の平均年齢が54.2歳の計1万4,761人の運動不足の男女を対象に調査を行った。活動量計を身に着けてもらい、座ったまま過ごす時間を減らし、運動を行う時間に置き換えることで、血圧にどのような変化があらわれるかを調べた。介入前の参加者の1日の座位時間の平均は10.7時間だった。
その結果、1日の座位時間のうち、20~27分を運動を行う時間に置き換えると、心血管疾患のリスクを最大で28%減らせることが示された。
さらに、運動時間を5分増やすごとに、収縮期(最高)血圧は0.68mmHg、拡張期(最低)血圧は0.54mmHg、それぞれ低下することも分かった。
「運動をする習慣をもたなかった人のなかには、自分には能力がないと心配している人もいるかもしれません。しかし身体能力に関わらず、血圧に好ましい影響を与えるのに必要な運動時間は、考えれているほど多くは必要ないことが示されました」と、同大学チャールズ パーキンス センターのエマニュエル スタマタキス教授は言う。
「座ったまま過ごす時間が長引いたときには、立ち上がって体を動かしたり、なるべく車を使わずに徒歩や自転車で移動するなどして、日常生活で運動をする時間を増やしていくことが大切です」。
「運動をあまりしない人にとっても、ウォーキングは血圧に良い影響を与えます。さらに血圧を改善するために、運動になれてきたら時間を少しずつ増やしたり、運動強度を高めていくといった工夫をして、心血管系への負荷を高めることをおすすめします」としている。
歩数を3000歩増やすと高齢者の高血圧が改善
1日の歩数を3,000歩増やすだけでも、高血圧を改善できることも、別の研究で明らかになっている。研究成果は、「Journal of Cardiovascular Development and Disease」に発表された。
「健康的な血圧を維持することは、心不全、心臓発作、脳卒中といった深刻な病気の予防に役立ちます。米国の高齢者の80%は高血圧と推定されています」と、米国のコネチカット大学で運動学を研究しているリンダ ペスカテッロ氏は言う。
「ウォーキングはもっとも人気が高く、取り組みやすい運動です。シンプルなライフスタイル介入により、毎日の歩数を適度に増やせることが示されました」としている。
研究グループは、高血圧があり座ったまま過ごす時間の長い、68~78歳の高齢者を対象に、20週間にわたり歩数計を1日に10時間以上身に着けてもらい、血圧計や歩数を記録できる日記帳なども利用してもらい、1日の歩数を増やすのを支援する介入試験を行った。
その結果、参加者の1日の歩数はおよそ4,000歩から7,000歩に増え、それにともない収縮期血圧は平均7ポイント、拡張期血圧は平均4ポイント、それぞれ改善した。
「高血圧に対策するために、1日の歩数を増やすことは、薬物療法と同じくらい効果的であることが示されました。これまでの研究で、血圧をこれくらい改善すると、全死亡リスクを11%、心血管疾患による死亡リスクを16%、心臓病のリスクを18%、脳卒中のリスクを36%、それぞれ減少するのにつながることが報告されています」と、ペスカテッロ氏は指摘している。
血圧が高い状態が長年続くと、脳卒中のリスクが高まる。高血圧を早期に発見し、血圧を継続的に管理することは、脳卒中を予防するために必要であることが、米ミシガン大学の研究で示された。研究成果は、「JAMA Network Open」に発表された。
研究グループは、脳卒中と診断されたことのない18歳以上の成人3万8,167人を対象に、22年(中央値)追跡し、脳卒中の発症と収縮期(最高)血圧の平均値との関連を調べた。
その結果、収縮期血圧の平均が10mmHg高いと、全体的な脳卒中と虚血性脳卒中のリスクは20%高くなり、脳内出血のリスクは31%高くなることが判明した。
「研究結果は、高血圧を早期診断し、生涯にわたり適切な管理を続けることが、脳卒中、虚血性脳卒中、脳内出血を予防するために非常に重要であることを示しています」と、同大学医学部内科・神経学のデボラ レバイン教授は言う。
「血圧を最適化するために、家庭での血圧測定も重要です。脳卒中のリスクを減らすために、所得の低い層に対しては家庭用血圧測定器の費用を負担するなどの対策も必要です」としている。
「高血圧の日」について 5月17日は"高血圧の日" (日本高血圧学会)
Five minutes of exercise a day could lower blood pressure (シドニー大学 2024年11月7日)
Device-Measured 24-Hour Movement Behaviors and Blood Pressure: A 6-Part Compositional Individual Participant Data Analysis in the ProPASS Consortium (Circulation 2024年11月6日)
Increasing Steps by 3,000 Per Day Can Lower Blood Pressure in Older Adults (コネチカット大学 2023年9月26日)
Increasing Lifestyle Walking by 3000 Steps per Day Reduces Blood Pressure in Sedentary Older Adults with Hypertension: Results from an e-Health Pilot Study (Journal of Cardiovascular Development and Disease 2023年7月27日)
Do the combined blood pressure effects of exercise and antihypertensive medications add up to the sum of their parts? A systematic meta-review (BMJ Open Sport & Exercise Medicine 2021年1月20日)
Blood pressure high for years? Beware of stroke risk (ミシガン大学 2024年7月23日)
Cumulative Systolic Blood Pressure and Incident Stroke Type Variation by Race and Ethnicity (JAMA Network Open 2024年5月3日)


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