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「保健師活動指針の活用に係る事例の収集」報告書掲載 日本公衆衛生協会

 日本公衆衛生協会はこのほど、平成27年度地域保健総合推進事業「保健師活動指針の活用に係る事例の収集」報告書をまとめた。保健師の人材育成や保健師活動指針の活用などについて、取り組みを阻害する要因について調査し、今後、一層の促進を図ろうというもの。

 全国の自治体は、平成25年に出された厚生労働省健康局通知「地域における保健師の保健活動について」と「地域における保健師の保健活動に関する指針」(以下、保健師活動指針)に基づき、統括的な役割を担う保健師の配置や人材育成計画の策定などに取り組んでいる。

 しかし、平成27年6月に厚生労働省健康局がん対策・健康増進課保健指導室で全都道府県・全市区町村対象に保健師活動指針の活用状況について調べたところ、統括的な役割を担う保健師の配置は都道府県では89.4%、市町村では41.9%にとどまっていた。また、このうち所属組織で統括保健師について事務分掌が明記されている人は51.1%、市町村では10.8%しかいなかった。独自の活動指針の策定状況も、都道府県では42.6%であるのに対し、市町村では1.0%という結果になり、特に市町村における取り組みの遅れが指摘されている。

 また平成27年3月の全国保健師長会都道府県支部の報告では、平成25年11月時点で、管内市町村における独自の活動指針の策定状況をすべて把握しているのは12都道府県しかなく、都道府県と市町村の連携上の課題なども明らかになった。中には保健師の人材育成が十分実施されていない市町村が存在すると考えられている。

 そこで今回、同協会は「保健師活動の指針の活用に係る事例の収集有識者会」を設置し、関係者にインタビューを実施。各自治体、保健所における保健師活動指針に基づく取り組みを阻害している要因やその排除方法、取り組みを推進するための具体的な方策、および今後の方向について分析し、ほかの自治体にも応用できる事例を収集して報告書をまとめた。

 調査した中で「保健師活動指針の活用について」分析した結果では、同指針は各自治体にとって「本来の保健師の仕事とは何かを考える機会」になっており、保健師の本来あるべき姿を明確にした点では意義のあることであった。活用方法としては、保健師の役割や組織について、保健師以外の職種に理解してもらうためのツールとして用いられていた。また、統括保健師の配置など新しい仕組みづくりや、地区担当制など保健師本来の役割を取り戻すための活動、それに伴う人員要求の後ろ盾として使われていたことも分かった。保健師活動指針が示されたことにより、保健活動の標準化に向けた取り組み、人材育成方針への反映や活動評価の支店を定めるうえで効果があったといえる。

 報告書ではほかにも「保健師の人材育成の推進について」や「都道府県、保健所、市町村の連携について」分析し、考察をしたうえで、課題の解決方策として、以下の6点を提言として示した。

 1.保健師の人材育成における人事部門との協力関係の構築
 2.小規模市町村のおける人材育成に対する外部協力
 3.各自治体における活動方針の策定
 4.保健所保健師機能の発揮
 5.組織横断的な体制づくり
 6.統括的役割を担う保健師の役割

 また、取り組みを阻害している要因や促進の手がかりについても、以下のようにまとめた。

<保健師の人材育成の推進にかかる取り組み>
●阻害している要因:小規模自治体における人材育成の困難さ、分散配置、環境、教育体制、人材育成ガイドライン、評価制度、予算及び施設、活動体制、市町村合併、都道府県・市町村・大学等との連携など

●促進する方法:人事部門との協力関係の構築および連携、評価基準の明確化、OJTの推進、保健師としての専門性を高めるOFF-JT、ジョブローテンションの仕組みづくりなど(特に小規模市町村における人材育成については、保健所の支援、市町村間連携、大学等との協力関係の構築など外部支援による推進を図る方策が有効)

<保健師活動指針の活用にかかる取り組み>
●阻害している要因:保健師活動指針の意義の理解、情報発信の不十分さ、活動体制、組織、業務、都道府県・市町村の連携など

●促進する方法:関係機関との連携促進、地域診断や施策化、住民との協働、保健師の保健活動の評価、エビデンスベースの活動、専門性の強化など

*組織としての活動の方向性を明らかにし、重点的かつ効率的に業務を遂行しながら、質の高いサービスを標準化するために、各自治体独自の活動方針の策定を推進する必要がある

<都道府県、保健所、市町村の連携にかかる取り組み>
●阻害している要因:保健所が市町村支援を積極的に行えていないこと、保健所の機能が市町村の組織に理解されていないことなど

●促進する方法:相互理解の促進、各組織の役割の明確化、事業の協働、地域診断の協力、保健所による医療・福祉の連携促進、人材育成、保健所のリーダーシップの発揮など

 報告書では具体的な方策をまとめた事例集も掲載されており、各自治体で活用が期待されている。

平成27年度地域保健総合推進事業「保健師活動指針の活用に係る事例の収集」報告書(日本公衆衛生協会)
[yoshioka]
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