中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる

ウォーキングなどの運動を行うことを習慣にして、生涯続けると、アルツハイマー病などの認知症を予防できる可能性が高まることが明らかになった。
「生涯を通じて、とくに50歳になる前に、運動を行う習慣を身につけることが、脳の健康を維持し、初期のアルツハイマー病の進展を遅らせるのに役立つことが示されました」と、研究者は述べている。
「脳の健康をサポートするために、あらゆる年齢層の人にとって、運動に取り組むことはとても重要です」としている。
運動を生涯続けると認知症を予防できる可能性が高まる
ウォーキングなどの運動を行うことを習慣にして、生涯続けると、アルツハイマー病などの認知症を予防できる可能性が高まることが明らかになった。
研究は、英国のユニヴァーシティ カレッジ ロンドンによるもの。研究グループは、英国出生コホート研究に参加した502人の成人を、36歳から69歳までおよそ30年間にわたり追跡して調査した。
参加者の余暇時間の身体活動パターンが、脳の健康(初期のアルツハイマー病や、70歳時の認知力など)にどのような影響を与えるかを調査した。
その結果、生涯を通じて運動を継続している人は、アミロイドの蓄積や脳の萎縮など、アルツハイマー型認知症の指標があっても、認知機能の低下を経験する可能性が低いことが分かった。
50歳になる前から運動を習慣に 脳の健康を維持するために運動は重要
研究グループによると、とくに50歳未満のときに身体的に活発であると、脳の主に記憶を司る領域である海馬の拡大につながるという。
すでに脳にアルツハイマー病の兆候があらわれている人でも、若いときに活動的な生活をしていた人は、活動的でなかった人に比べ、認知機能が優れている傾向が示された。
「生涯を通じて、とくに50歳になる前に、運動を行う習慣を身につけることが、脳の健康を維持し、初期のアルツハイマー病の進展を遅らせるのに役立つことが示されました」と、同大学認知症研究センターおよび生涯健康・高齢化MRCユニットのサラ ナオミ ジェームズ氏は言う。
「脳の健康をサポートするために、あらゆる年齢層の人にとって、運動に取り組むことはとても重要です」としている。
運動や身体活動は、脳内のアミロイド斑や全体的な脳萎縮など、アルツハイマー病マーカーとは直接関係がなかったものの、活動的であることは、とくに女性で、初期のアルツハイマー病の指標のある人々の認知機能を維持し緩和するのに役立つことが分かった。
アミロイド斑は、大脳皮質などの神経細胞の周囲に、βアミロイドと呼ばれるタンパク質が沈着してできるもので、アルツハイマー病の患者では比較的早期からみられる。
認知症リスクを軽減するためにできることは多い
運動により脳の健康を保つことは、認知機能の予備力と回復力を高めるのに役立ち、高齢になってから記憶力と思考力をより長く維持するのにも有用としている。このことは、年齢を重ねて脳が老化し、アルツハイマー病の兆候があらわれてからもあてはまる。
食事を見直したり、運動を習慣として続けるなど、認知症のリスクを軽減するためにできることは多いとしている。
「若いうちから生活習慣の改善や健康増進に取り組むことで、認知症の発症の半数を予防したり遅らせたりできることが研究で示されています」と、英国のアルツハイマー病研究の政策・広報部長であるデイビッド トーマス氏は言う。
「認知症を確実に予防する方法はありませんが、脳を活性化するために、活動的な生活をおくり、心臓の健康にも気を配り、周囲の人々とのつながりを保つなど、自分でコントロールできる認知症のリスクを軽減する方法はあります」。
運動が脳に物理的にどのような変化をもたらし、認知症から守るのかを解明することで、将来的に認知症の発症を予防する新たな介入策を開発できる可能性もある。
「生涯を通じて運動や余暇活動に参加することが、できるだけ長く人々を認知症から守る強力な手段となることを十分に理解するために、さらに研究が必要です」と、ジェームズ氏は指摘している。
認知症リスクを減らすために運動を習慣化
英国のアルツハイマー病研究に協力しているグラハム ケントさん(74歳)は、健康管理に対し強い動機をもっている。妻のマリーさんが2019年に、アルツハイマー病と診断されたのをきっかけに、グラハムさんは認知症のリスクを減らすために、運動を習慣化しようと決意した。
「アルツハイマー病を発症したマリーのために、できるだけ長く面倒をみてあげたいと思っています。そのためには、自分も体力と活動性を維持し、できるだけ脳の健康を保つことが大切です」と、グラハムさんは言う。
グラハムさんが朝一番に行うことは、飼い犬といっしょにランニングに出かけることだ。そして、週に1回以上は友人と運動トレーニングを行う。人といっしょに走るのは、互いに責任をもちながら、同時につながりを保つこともできる、すばらしい取り組みだとしている。
「ランニングには慣れていて、体を動かすのは楽しいし、運動をするたびに心臓と脳に良いことをしていると実感しています。年齢を重ねることは避けられませんし、加齢とともに認知症のリスクが高まることは分かっていますが、運動を習慣として行うことで、脳の健康をできるだけ長く保てることを理解しています」と、グラハムさんは述べている。
Exercising throughout life could prevent dementia (ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン 2025年1月31日)
The relationship between leisure time physical activity patterns, Alzheimer's disease markers and cognition (Brain Communications 2025年1月30日)


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