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高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策

 働いている50歳を超える人の3分の2以上は、高齢になっても働き続けることは、身体や精神の健康、さらには全体的な幸福の向上につながると考えていることが明らかになった。

 「多くの高齢者にとって、仕事をする理由は収入を得ることだけではありません。心身の健康、社会的なつながりの維持、老化を防ぐこと、自分の知識や能力を生かすことなど、多様な理由があります」と、研究者は述べている。

 日本の高齢者を対象とした調査でも、「生涯学習(多くの学習を行うこと)」は獲得の意識を高め、「身体活動(買い物、料理、公共交通機関の利用など、日常的な活動や運動を行うこと)」は喪失の意識を低くすることが示された。

高齢者のほとんどは働くことで健康を高められると感じている

 働いている50歳を超える人の3分の2以上は、高齢になっても働き続けることは、身体や精神の健康、さらには全体的な幸福の向上につながると考えていることが明らかになった。

 働いている人の半数は、目的意識をもって働くことはとても重要と考え、さらには働くことで脳を活性化できると考えていることも分かった。

 調査は、米ミシガン大学の医療政策・イノベーション研究所が、米国の50~94歳の成人3,486人を対象に実施したもの。

 「65歳以上の高齢者の就労に対する認識は、時とともに変化しています。今回の調査では、従来の定年退職の年齢を過ぎても、まだ働くことのできる高齢者のほとんどは、働くことで健康関連のメリットを得られると感じていることが示されました」と、同ミシガン大学で公衆衛生学を研究しているジェフリー クルグレン氏は言う。

 「高齢者の孤立、社会的つながりの欠如、孤独などは心身の健康に大きく影響することが分かっており、高齢者の就業がもたらすメリットについて理解を深めることは重要です」としている。

働くうえで直面する障壁を感じている高齢者も

 調査では、65歳以上の働いている高齢者は、働き続けることで得られるものとして、「メンタルヘルスに対する良い影響」(41%)、「ウェルビーイングに対する良い影響」(39%)、「身体の健康に対する良い影響」(32%)を多く挙げた。

 さらには、働くことで得られる具体的なメリットとして、「脳の活性化」(57%)、「集中力の維持」(40%)、「社会的なつながりの維持」(37%)が多く挙げられた。

 一方で、調査では高齢者が就労で直面している障壁についても焦点が当てられ、高齢者の一部は働くうえでの好ましくない経験をしていることも明らかになった。

 50歳以上の就労者のうち、仕事が身体の健康に悪影響を及ぼしていると答えた人は33%に上り、仕事がメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていると答えた人は29%に上った。

 さらに、働いている高齢者の39%は、就労にあたり、1つ以上の障壁があると回答した。多く挙げられたのは、「障害・慢性疾患・健康状態の悪化」(29%)、「スキル・経験・育成の不足」(13%)、「交通手段の制限」(11%)、「家での介護」(8%)などだった。

 「米国人の寿命と労働時間はかつてないほど長くなっており、米国では現在、労働力となっている高齢者は3,800万人近くいて、40年前の2.5倍以上に増えています」と、米国退職者協会(AARP)のカーリー ロスコウスキー氏は言う。

 「多くの高齢者にとって、仕事をする理由は収入を得ることだけではありません。心身の健康、社会的なつながりの維持、老化を防ぐこと、自分の知識や能力を生かすことなど、多様な理由があります」としている。

高齢者のウェルビーイングを高める「生涯学習」と「身体活動」
岡山大学が日本の高齢者を調査
 近年の高齢者研究で、高齢者の加齢に関わる変化への意識(主観的老い)が注目されている。

 主観的老いを測定する指標として、「加齢に係る変化意識(AARC)」が提唱されている。この指標は、加齢にともない「獲得(Gain)」するものが増えるというポジティブな意識と、加齢にともない「喪失(Loss)」するものも増えるというネガティブな意識の2側面から構成される。

 これまでの研究で、「獲得」の高さは主観的ウェルビーイングと正の相関を示し、「喪失」の高さは抑うつと正の相関を示し、さらには主観的ウェルビーイングや身体的健康と負の相関を示すことが示されている。

 日本の高齢者を対象とした新しい調査で、「加齢に係る変化意識」に影響を与える要因として、「生涯学習(多くの学習を行うこと)」は獲得の意識を高め、「身体活動(買い物、料理、公共交通機関の利用など、日常的な活動や運動を行うこと)」は喪失の意識を低くすることが示された。

 調査は、岡山大学が70歳以上の日本人878人を対象に12ヵ月間にわたり実施したもの。

 「生涯学習と身体活動を通じて、前向きな主観的老いの体験を促進し、健康的な老後を支援できます。私たちの研究が、多くの高齢者の生活の質向上に寄与することを願っています」と、研究者は述べている。

 研究は、岡山大学大学院社会文化科学研究科の白石奈津栄氏と学術研究院社会文化科学学域の堀内孝教授、大阪大学の中川威准教授、兵庫教育大学大学院の山本康裕氏らによるもの。研究成果は、「心理学研究」に掲載された。

The Intersection of Work, Health, and Well-Being (ミシガン大学医療政策・イノベーション研究所)
Working later in life linked to positive health impacts (ミシガン大学 2025年2月11日)
岡山大学大学院社会文化科学研究科
加齢に係る変化意識尺度10項目短縮版の日本語版開発と信頼性・妥当性の検討 (心理学研究 2024年12月25日)

高齢社会白書 (内閣府)

[Terahata]
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