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肥満に伴う大腸の炎症が糖尿病の原因 炎症を抑えて糖尿病を改善
2016年08月24日
肥満に伴う大腸の炎症が糖尿病の発症につながることを、慶應義塾大学の研究グループが明らかにした。肥満により引き起こされる内臓などの脂肪組織の炎症が、糖尿病の発症の原因になることが知られているが、今回の研究では新たな糖尿病発症のメカニズムが解明された。
脂肪分の多い食事がインスリン抵抗性を引き起こす
脂肪分の多い食物を過剰に摂取すると、血糖値の上昇を抑えるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなる。糖尿病の発症や、血糖コントロールを悪化させる原因のひとつだ。
肥満に伴うインスリン抵抗性の発症に「内臓脂肪の炎症」が深く関わっている。近年の研究では、高脂肪食を摂取して肥満がおこる前から、腸管内で腸内細菌叢のバランスが崩れることが分かってきた。
腸管は、吸収や排泄する働きだけでなく、免疫細胞の70%が集中しているという報告もあり、腸管は外界から身を守るための免疫器官としても重要だ。
高脂肪食により腸内細菌が変化すると、体内での免疫環境も大きく変化すると考えられている。
腸管で炎症を抑えれば糖尿病になりにくい
慶應義塾大学の研究チームは、マウスに脂肪分を60%含む高脂肪食を与えながら4週間飼育する実験を行った。
その結果、マウスは免疫細胞のマクロファージの集積を促すタンパク質「Ccl2」の産生が増加し、マクロファージが集積して大腸の慢性炎症を引き起こした。さらに炎症性の物質が血中を循環してインスリンの効きを悪くしていることも明らかになった。
研究グループはまた、大腸の腸管上皮だけで「Ccl2」が欠損するマウスを作製して調べたところ、大腸だけでなく脂肪組織の炎症も抑えられた。さらにインスリンの効きが良くなり、血糖値の上昇を30%抑えられた。
これらの結果から、ヒトにおいても脂肪含量の多い高脂肪食を摂食する場合、大腸のマクロファージにより炎症が引き起こされ糖尿病発症につながると考えられるという。
大腸での「Ccl2」の産生を抑制すれば、肥満による2型糖尿病の発症を抑えられる可能性がある。
研究グループは「肥満になっても腸管で炎症が起こらないと糖尿病になりにくいことが示された。将来的には腸の炎症を抑える新しい糖尿病治療薬の開発が期待される」と述べている。
研究は、慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)教室の川野義長助教、中江淳特任准教授、伊藤裕教授らの研究グループによるもの。成果は医学誌「Cell Metabolism」オンライン版に発表された。
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