ニュース

お酒を飲む人はウォーキングをしよう 飲酒のリスクを運動で帳消しに

 過度のアルコール摂取はがんや心筋梗塞などの心臓病、脳卒中や脳出血の危険性を高めることが多くの研究で確かめられている。しかし、お酒を飲み過ぎている人でも、ウォーキングなどの適度な運動していれば、お酒の害を打ち消せるという研究が発表された。
飲酒による死亡リスク、ウォーキングで帳消しに
 過度の飲酒は、全死亡(あらゆる原因を含めた死亡)とがんの危険性を高めるが、ウォーキングなどの運動をしている人ではリスクが低下することが明らかになった。

 研究は英国のロンドン大学と、オーストラリアのシドニー大学の研究チームによるもので、医学誌「ブリティッシュ ジャーナル オブ スポーツ サイエンス」に発表された。

 お酒を飲むと血管を通ってアルコールは肝臓に集まり、アセトアルデヒドに分解・合成される。アセトアルデヒドは体にとって害があるので、肝臓の働きで解毒され、最終的には熱と水に分解される。

 しかし、肝臓がアルコールの分解に酷使されると、アセトアルデヒドの無毒化やエネルギー代謝がスムーズにいかなくなり、脂肪が活用されなくなる。その結果、肝臓に脂肪が蓄積されて脂肪肝になる。

 一方、ウォーキングなどの運動をすると、肝臓の脂肪が燃料として使われ、脂肪肝が改善する。このように、飲酒は体にダメージを与える一方で、運動は保護的に働く。運動不足の人は健康な人よりも、肝臓や筋肉などに脂肪がたまっている場合が多いのはそのためだ。

 「アルコールの飲み過ぎは心臓病や脳卒中、がんなどの命にかかわる病気のリスクを上昇させますが、運動を習慣として続けている人では死亡リスクが低下することが明らかになりました。もっとも危険なのは、お酒を飲み過ぎていて、運動を全くしない生活スタイルです」と、シドニー大学保健科学部のエマヌエル スタマタキス氏は言う。

節度のある飲酒は純アルコール換算で1日に20gまで
 研究チームは、英国とスコットランドで実施された8件の健康調査に参加した40歳以上の男女3万6,370人を対象に1994~1998年に、飲酒と運動の関連について追跡して調査した。期間中に5,735人が死亡した。

 オーストラリアでは飲酒の標準量は純アルコール換算で10gに設定されており、これが1ユニットとされる。「節度のある適度な飲酒量」は1日にアルコール20g(2ユニット)までとされている。これは、ビール(アルコール度数5%)なら500mL、ウイスキーやブランデー(同43%)なら60mL、ワイン(同12%)なら200mL、シャンパン(同12%)なら200mL、スピリッツ(同5%)なら500mLに相当する。

 調査の結果、純アルコール換算で1日に24gを飲んでいる男性と、16gを飲んでいる女性では、全死亡のリスクが13%、がん死亡のリスクが36%、それぞれ上昇することが判明した。

 純アルコール換算で1日に24~58gを飲んでいる男性、16~41gを飲んでいる女性は「危険な飲酒」と判定され、全死亡リスクが64%、がん死亡リスクが74%上昇した。

 一方で、活発なウォーキングを週に150分以上続けている人では、適度な飲酒量を超えている場合でも、がん発症リスクが36%低下し、がん死亡リスクが半分以下に減少することが明らかになった。運動をしている人では全死亡リスクも半分以下に減少した。

 つまり、ウォーキングなどの運動をすると、全く運動しない場合に比べ、死亡リスクはより低下することが示された。この傾向は、運動を週に300分以上続けている人でより顕著だった。
お酒をやめるのが難しい人も運動すれば健康を維持向上できる
 アルコールはがんの発症を増やす要因になる。過度のアルコール摂取によって発症が増えるがんは部位別に、中咽頭、喉頭、食道、肝臓、結腸、直腸、乳房であることが確認されている。アルコール起因性のがんで死亡する人は、がん死亡者の5.8%に上るという。

 「アルコールへの依存は重大な社会問題であり、健康の障害と社会的な負担をもたらしますが、個々の人にアルコールを飲むのを禁ずるのは不可能です。そうした場合でも、ウォーキングなどの運動を勧め、より体を動かすアクティブな生活をおくれば、アルコールの害を減らせます。保健指導に携わっている人は、このことを認知しておく必要があるでしょう」と、スタマタキス氏は言う。

 「ただし、運動をしていれば、お酒をいくら飲んでも大丈夫というわけではありません。節度のある適度な飲酒を心がけることが大切です」と、スタマタキス氏は付け加えている。

 なお、日本の厚生労働省は、健康の維持向上をはかるための基本方針である「健康日本21」で、「節度ある適度な飲酒」を、1日当たり純アルコール摂取量で20g程度、女性は男性よりも少ない量が適当としている。純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上になると「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」になり、この量を飲んでいる割合は男性の15.8%、女性の8.8%に上る。

Physical activity may offset some of alcohol's lethal harms(シドニー大学 2016年9月8日)
Does physical activity moderate the association between alcohol drinking and all-cause, cancer and cardiovascular diseases mortality? A pooled analysis of eight British population cohorts(British Journal of Sports Medicine 2016年8月31日)
[Terahata]

「アルコール」に関するニュース

2018年06月20日
メタボや肥満の人が「睡眠不足」を感じたら放置してはいけない理由
2018年06月06日
「高齢者」に医薬品を処方するときには注意が必要 厚労省が指針を通知
2018年05月30日
「男性型脱毛症」(AGA)の原因は血流不足やストレス? 近畿大学などが解明
2018年05月16日
体重コントロールを成功させるシンプルな方法 必要なことは1つだけ
2018年05月01日
休日の寝過ぎが体調不良の原因に 「社会的時差ぼけ」を解消
2018年04月18日
糖尿病の原因は「酸化ストレス」 肝臓の脂肪蓄積を防ぐ治療
2018年04月11日
「2時間の飲み会」の危険 アルコールのイッキ飲み・アルハラを防止
2018年03月28日
収入や教育年数が「健康格差」に影響 年収低いほど肥満リスクは上昇
2018年03月20日
認知機能を高める健康法とは? 日本医師会が推奨「一・十・百・千・万」
2018年03月19日
東京の糖尿病療養指導を担う「東京CDE」と「東京CDS」 新年度の活動

最新ニュース

2018年06月22日
「葉酸」は妊娠"前"からの摂取が重要です!「妊活中から葉酸をとろう」(指導箋)
2018年06月22日
【健やか21】母子保健指導者養成研修会 受講申込 受付開始
2018年06月20日
「老年医学推進5ヵ年計画」を学会が発表 人生100年時代の高齢者医療
2018年06月20日
低脂肪の食事で女性の「乳がん」リスクが低下 死亡リスクも低下
2018年06月20日
アブラナ科野菜は「台所のドクター」 心疾患、脳卒中、がんのリスクを低下
2018年06月20日
メタボや肥満の人が「睡眠不足」を感じたら放置してはいけない理由
2018年06月20日
女性に多い「下肢静脈瘤」のリスク 認知度が低く受診放置が多い
2018年06月20日
梅雨に多い「梅雨だる」を6割が実感 症状を深刻化させないポイント
2018年06月20日
6月20日から「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」を全国各地で実施
2018年06月15日
女性の「やせ」をテーマにした教材が登場!「気にしてますか?やせすぎ注意」(指導箋)
2018年06月15日
【健やか21】イクメン企業・イクボスアワード2018募集中!
2018年06月13日
「早期乳がん」の70%は化学療法は不必要 乳がん治療に明るい選択肢
2018年06月13日
「女性特有の遺伝子」を発見 バストの大きさ、月経痛の重さに関連
2018年06月13日
日本の給食が「肥満」を減らす 給食実施率の増加で肥満が低下
2018年06月13日
水虫に対策するための8つの方法 高齢者の「白癬菌」は要介護のリスクに
2018年06月13日
糖尿病学会でウォークイベントを開催 特別な運動でなくとも効果的
2018年06月12日
厚労省が禁煙支援マニュアルを増補改訂―社会情勢の変化に合わせて内容をアップデート
2018年06月08日
食育指導で使えるイラスト提供します(健やか親子21食育プロジェクト)
2018年06月08日
【連載更新】成人期の健康運動の考え方~体と心を感じる習慣づくり~
2018年06月07日
対談「女性と生活習慣病予防」一無、二少、三多で健康長寿
2018年06月06日
「笑い」が糖尿病やメタボ、がんを改善 よく笑うと健康効果を得られる
2018年06月06日
「高齢者」に医薬品を処方するときには注意が必要 厚労省が指針を通知
2018年06月06日
「高血圧」の治療がインフルエンザ対策に ウイルスの感染を防ぐ効果が
2018年06月06日
「子どもの貧困」が発育異常にも影響 子どもへの社会的な支援が必要
2018年06月06日
「歯周病」に対策 3ヵ月のプロジェクトでタクシー乗務員を意識改革
2018年06月05日
【連載更新】「今日は〇〇の日」「○○週間」を活用していますか?
2018年06月04日
【応募受付中】「でかメモ」アンバサダー募集!
2018年06月04日
健康スコアリングの詳細設計に関する報告書を公表―日本健康会議
2018年06月01日
プルーン食べ合わせレシピコンテスト実施中!骨の健康(プルーン × カルシウム) 
2018年06月01日
「健康・医療・介護の新潮流」へるすあっぷ21 6月号
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,257 人(2018年06月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶